20.別れ
市門から出て少し歩いたところで、フチの歩みが遅くなった。三人は道の脇に逸れ、足を止めた。氏族の若い戦士は、静かな笑みを浮かべていた。一つ頭を下げる。
「名残惜しいが、私がついて行けるのはここまでだ。」
あたりには早朝のひんやりした空気が漂っていた。フチの背後の道には、近郊の農地で働く人々をはじめとして、大勢が歩いているところだった。人々は、足を止めている三人の旅人にちらと目を向けるが、それきりそっぽを向くと、ただ歩くことに気を向ける。これから仕事がはじまるのだ。余所者三人が何をしていようと、気にすることもないのだろう。
コダマは何かを言おうとして、口を開きかけた。だが言葉は出てこなかった。ただ一歩進むと、フチの肩を抱いた。フチも、コダマの肩を抱き返し、とんとんと背を叩いた。
その様子を見て、ハヤテはくっくと喉を鳴らして笑った。
「まったく、別に今生の別れってわけでもないだろうになあ。」
そう言って、フチの肩を軽く叩いた。
「おれはまた会いに来るよ。たぶんな。約束はしないけど。」
「それはきっと誠実さの表れだろう。」
フチはコダマから腕を離すと、ハヤテに微笑みかけた。
「確実ではない約束はしないということだ。私もそれに倣うべきだな。」
そう言って、フチはコダマに顔を向けた。
「私も再会を約束することはできない。だが、二人のことを忘れたりはしないだろう。」
「おれも忘れない。」
コダマは言った。秘術師はいまにも泣きそうな顔をしていた。ハヤテは、また喉を鳴らすように笑った。
「昨日、さんざん泣いたくせになあ。また泣くのか。」
「うるせえな。」
コダマは毒づいて、ハヤテに蹴りを喰らわせた。それから、手の甲で目を拭うと、コダマはフチの肩をまた抱いた。
「じゃあな。きっと――きっと、また会いに来る。」
コダマは言うと、身を離した。だが、歩き出そうとはしなかった。ハヤテは苦笑しつつ、コダマの肩を叩いて、先に歩き出した。コダマはハヤテについて歩いた。
町から去る間、コダマは何度も何度もフチを振り返った。そのたびに、フチは手を上げて別れの挨拶をした。幾度も振り返って、やがて道の起伏に隠れて、フチのすがたは見えなくなった。




