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『楽しかったわ、ハーンまたやりましょう、絶対よ』上機嫌のリーチェ。
ベアとヴァル少年も上機嫌だ。
『じゃあ、邪魔者は消えるわ、サチ起きてるんでしょ、ハーンは貸してあげるわ』
といって、ベアとヴァル少年をつかみ消えていった。
『私歩くわ』とサチが申し訳なさそうに声をかけてくる。
『いいよ、軽いし気にしないで』と返すと。背中で小さくうなづいたようであった。
会話もないままサチを背負い歩く。なにか話さなきゃなと思うけど言葉が出てこない…
『『あの』』同時に声が出る。
お互いにどうぞどうぞってすすめあいになってしまう、そしてどちらからとなく笑いが生まれた。
『ふふふ、なんか変ね』サチが言う。『そうだね』と僕が返す。
みんな最初はハーンが暗かったから気にしてたのよ、でもラスクさんが連れてきてくれたから調子に乗っちゃったのね私達…
サチはみんなが僕の心配をしてくれていたことを教えてくれた…
ありがたい、心からそう思って胸が苦しくなる…
『リーチェ達もいい人ね、人かどうかはわからないけど』
うなづいて同意する。
『それにしてもラスクさんって何者かしら、最近この街にきたみたいだけど、他の傭兵の人とは感じが違うのよね』
たしかに、何者なんだろう、僕が考えに浸っているとサチが『もう』となぜか拗ねている。
『あの人、ハーンには気をつけなさいって言ったの、なぜかしら』
なんでだろうね、と返事をしながら孤児院の前に着いた。
シスターが今日は遅いから泊っていったらと進めてくれる。サチもそれがいいわといってくれるのでそうさせてもらうことにした、寝ている子供達を起こさないようにそっと空いているベッドに横になる。
サチに小声でおやすみといって僕は眠りについた…
孤児院の朝は早い、そしてそこは戦場であった…
トイレ、洗面台の争奪戦、朝ごはんのおかずの奪い合い、奪われたものは泣き、奪ったものはサチに頭をはたかれて泣き、僕はあっけに取られている間に朝食を失った…
シスターはあらあらと微笑み、サチは見事な身のこなしで騒ぎを鎮めていく。
サチは僕の朝食が無いことに気づき、僕の分だけ再度用意してくれた、それを見た男の子軍団がサチを冷やかす、逃げる子供をサチが赤い顔をしながら追いかける、嵐のような時間は終わりを告げる。
残されたシスターと僕。
『これが毎日なのよ、楽しいでしょ。サチの給金と比較的大きい子供達が街でお手伝いをして貰ったお金で何とかやっているのよ』
生活は楽じゃないけど、みんなが笑っていられるのが嬉しいのよ。とシスターは微笑んだ。
最近は国からの援助もだいぶ減らされてね、寄付も少なくて、サチばかりに負担をかけてしまって、ここから出て1人で生活することも出来るのに、優しい子なのよ。
たまにはみんなに寒さがしのげる服でも用意してあげたいのよ…
少し寂しそうな表情のシスターに僕は今日のお礼を言うことしかできなかった。
そういえば、僕お金持ったことないな…




