お味はいかが?
サイドストーリーは連載という形にしておりましたが
「○ヶ月更新されてません」が出るのがちょっとイヤなので
都度、完結扱いに今回から変更させていただきます。
サイドストーリー自体はまだ続きますので
どうぞよろしくお願いします。
「…お邪魔します」
預かっていた鍵で部屋をあけ、スリッパを履くとドアを開けてキッチンへ。
荷物をおろして、持ってきたエプロンをつけて、まずは手順確認。
オーブンを予熱して、チョコを割って…
本日2月14日、バレンタインデー当日です。
昨日家で何回も作ったので作り方は頭に叩き込まれてる…はず。
それでも不安なので携帯からレシピサイトを開いて。
さっき仁さんから帰宅LINEが入った。
帰ってくるまでもう少し。
慣れたとはいえ、家主のいない家にお邪魔するのは気が引けたものの
やっぱりできたてを美味しく食べて欲しいわけで
今回は仁さんのおうちでチョコを作ってみようかと思ったわけです。
一応ね?保険として昨日作った分もトートバックに忍ばせてある。
万が一失敗したときはできたてではないけれど
レンジで温めれば美味しく食べられるし。
本当に仁さんのおうちはなんでもある。
前にお邪魔した遠江さんのおうちとは比べ物にならないくらい。
「あれでも物が少し増えたのよ?」と苦笑していた姉ともいえる人の顔。
今夜はどうしてるのか
聞きたいような聞きたくないような。
考えながらも手は動かしてます!
ここからが一番むずかしい薄力粉をゴムベラで混ぜていく作業。
耐熱のマグカップ。
混ぜた生地を流し込んで、チョコのカケラを押し込んで
後はオーブンで15分程度焼けば出来上がり。
揺らさないようにそーっとオーブンをあけてささっと閉じる。
ドキドキしながら待つこと少し。
出来上がりの音と同時に玄関のチャイムが鳴った。
*
最寄り駅から家へと急ぐ。
今日は彼女が家にいるから。
昨夜電話した時に「お邪魔してていいですか?」の問いに
即座にOKしたのは期待とほんの少しの下心。
事務所に届いていたチョコはカードだけを抜いてもらって
必要なところに配らせてもらっている。
甘いものは苦手だった…
でもそれが美味しいと感じだしたのは何時からだろう。
少なくても「手作り」を自分の口に入れようとは思ってもいなかった。
このご時世、何があるかわからない。
唯一受け取っていたのは同僚と駿河さんのくらいか?
それでも食べきるのに半年超えなんてザラで。
エレベーターを降り、自分の家の前へ。
ドア越しでも感じる人の気配と甘い香り。
それがなんだか嬉しくて、鍵は持っているのにドアチャイムを押してみた。
*
チェーンはかけたまま、そっとドアを開けてみる。
「ただいま」
仁さん!
「おかえりなさい!あ、ちょっと待ってください」
そう言ってドアを一旦閉めてチェーンを外す。
それからドアをもう一度開けて…
「ただいま。いい匂いだね」
「あ、ちょうどできたトコなんですけど仁さん晩ごはんは…?」
「そういう真澄ちゃんは?」
「え、えーっと…」
途端にくぅと鳴るお腹。
ヤダ!私のお腹!空気読んで!?
仁さんはキョトンとした顔になるとクスクス笑う。
「まずは真澄ちゃん力作を頂いて、それから考えようか」
「は、はい」
仁さんの後についてキッチンへ戻る。
よかった作りながら片付けておいて。
「カフェオレいれますね?」
「お願いします」
上着を部屋に置きにいった仁さん。
小鍋で牛乳を温めながらコーヒーメーカーのスイッチを入れる。
オーブンの方はどうかな…
そっとつついてみる。
うん、大丈夫そう!!
美味しくできてるかな?できてるといいな。
「仁さん、お待たせしました」
「今そっちに行くよ」
隣の部屋から聞こえてきた声。
ミトンをはめて、オーブンから耐熱カップを出して粉糖を少しふる。
テーブルも少しバレンタインっぽく
チェックのランチョンマットでコーディネイト。
ソファーに腰掛けた仁さんの前に
できたてのフォンダンショコラとお砂糖抜きのカフェオレ。
反応が見たくて、仁さん正面に腰を下ろす。
「ん?このカップ?」
「あ、これですか?これもプレゼント…です」
「へぇ…こんなカップも出てるんだ?」
今回フォンダンショコラを作るために買った耐熱カップ。
仁さんの乗ってるバイクのメーカーのロゴが入ってる物。
ネット通販で見かけて、これは!と思い注文してみたのです。
「じゃあいただきます」
チョコ生地と溶けたチョコがスプーンの上でつやつやと。
大丈夫そう…そしてそのまま躊躇なく仁さんが口にする。
どうかな?どうかな?
「うん、美味しい!」
その言葉に身体の力が抜ける。
「真澄ちゃん?」
「いえ、よかったって思って」
「ん?」
「練習したんですけどやっぱり本番は緊張します」
「じゃあ味見してみる?」
チョイチョイと呼ばれるまま仁さんの隣へ。
仁さんはフォンダンショコラをスプーンですくうと
スイっと私の口に。
あ、美味しい。
よかった。
「真澄ちゃん、口にチョコレートついてるよ」
え?あ、やだ
慌ててティッシュをとろうとした瞬間すっと手がのびてきたかと思うと
抱き寄せられって…えええ!?
舌で唇舐められました!
びっくりして口の中のチョコがそのまま喉の奥へ。
そしてそのまま合わさる唇、トントンと舌で唇をノックされる。
おずおずと少し開くと甘い香り。
深い口付け。
チョコの香りに酔いそう。
「ね?美味しかったでしょ?」
合わさった唇が離れたかと思った瞬間言われた言葉。
「こ、こんな味見は聞いてません!」
「ごちそうさまでした、美味しかったよ」
負けた…
ペロッと舌で唇を舐める仁さんがなんだかとっても艶っぽかった…デス。
ちょっとは仁のエロさ出てたでしょうか?
書きながら砂糖吐くかと思いながら書いてました。
相方の推敲も大筋では変わっておりません。
ちょっとしたニュアンスの変更などです。
いやぁそれにしても書きなぐった際の仁はひどかった(笑)
これでもマシになったんですよー。
あ、感想くださいませ♪
本編への糧になりますのでどうぞよしなに~~ m(__)m