22. お悩み相談
――10月下旬――
まあるい緑の山手線♪真ん中通るは中央線♪
ということで、中央線に乗ってやって参りました新宿駅。
意気揚々と電車を降り、
まずは新宿猫さんにご挨拶しようと東口を出たのだが……、
「猫いねーじゃん!」
「ん、まあ、登場するのは7時からのようだな」
スマホを見ながら素っ気なく答えるもなか。
現在の時刻は午前6時をまわったところ。
こんな朝早くからいったいどこに向かっているのかというと、
欲望の渦巻く眠らない街、新宿歌舞伎町だ。
2学期の中間テストも終え、
戻ってきた答案用紙は可もなく不可もなくといった状況。
そして来週からは11月に行われる文化祭の準備期間に入る。
模擬店などは出せる店舗数があらかじめ決まっているため、
僕たち1年生は展示物の作成などを担当するようになっていた。
なので、ぶっちゃけそう忙しくもないのだ。
そして僕はというと、
放課後にもなかをマックへと誘い、かねてからの悩み事を打ち明けることにした。
「なあなあ吉十」
「なんだよもなか」
「なんだよじゃねーよ。さっきから黙々とポテトばかり食いやがって!」
「あ、ごめん。足りないなら追加するけど?」
「そうじゃなくて、なにか話があるんじゃねーの? ってことだよ」
「うん。あることはあるんだけど…………」
「だ――――っ、だから何だよ、その煮え切らない態度は!」
「僕……」
「僕?」
「早漏かもしれない」
「早漏?」
「そう」
「ヨーソロー!」
「いやいや、宜しくないよね?」
「ん、冗談冗談。ちゃんと真面目に聞くから」
「う~ん、1分か……。それはちょっと早いんじゃね?」
「だろ? だから何かいい方法ってないかな?」
「う~ん、これは俺がテレビ局のおっちゃんから教わったことなんだが、むいたままにしておくことかな? 初めはすっげー痛いけど、そのうち慣れるから」
「え、マジで? めっちゃ痛いよね?」
「これは俺もやってたし、将来のためだ、やるっきゃないだろ! それに吉十は今も身長が伸びてるだろう? この時期を逃すと後で後悔するぞ」
「でも、どうしてそれで早漏が……。あ、そうか! 刺激に対する耐性をつくるんだね!」
「そのとおり。それともう一つが女に慣れることだな」
「女性に慣れる? どういうこと?」
「こっちは心理的な耐性だな。まあ、童貞の吉十くんには関係ない話だけど」
「なんだよ、自分は違うと言いたいのか?」
フフフッと不敵な笑みを浮かべているもなか。
めっちゃ悔しい! 僕のポテトを食べるな!
「まあまあまあ。お試しという手もあるぞ」
「それは何?」
「ズバリ箱ヘルだな!」
「箱ヘルというとファッションヘルスのこと?」
「そうだ」
「そうだといっても僕ら未成年じゃん」
「俺が行ってるところなら大丈夫だ。わりと昔からあるところで、受付はいつもじいさんが一人だ」
「でも……」
「大丈夫だって。しかも朝割りで7時までに入店すると1000円引きになるから、30分6000円ぽっきりだ!」
6000円ぽっきりって、もなかも何だか必死だな。
そこに目当ての子でもいたりするのかな?
相談にも乗ってもらったし、ここはもなかの顔を立てておくとしようか。
ここが新宿歌舞伎町かぁ。
歌舞伎町一番街のアーチが少し寂しく見えるのは今が早朝だからかな。
え、お菊?
お菊は今、里帰り中だよ。
これから文化祭の準備とかがあって早く帰れなくなるからね。
とは言え、五郎おじさんの家にもダンジョンゲートがあるから、
鏡をくぐるだけなんだけど。
よし、ここを通り抜けてまずはゴジラに挨拶からだな。
「おい吉十、なにやってんだ。こっちだぞ!」
「え、そっち? 僕のゴジラはどうなるのさ?」
「あきらめろ。そっちから行ったら交番の前を通ることになるんだ」
「…………」
「ここだ。ここから歌舞伎町の中に入るからな。今は朝だから少ないと思うが、男と女とオカマには要注意だ。話しかけられても無視して突っ切るからな。お巡りさんに止められたらジョギングしてましたって言うんだぞ。友達が区役所前に集合するように言ってたのですが……とか言って濁しとけ」
「うん、それでジャージ姿なんだね。でも、オカマのポン引きなんているの?」
「いや、奴らは仕事帰りだな。ここで好みの男を見つけて朝食を食べようって誘ってくるんだ。直接害はないけど、たっぷり2時間はつき合わされるぞ」
「うへっ」
「時間があれば誘いに乗ってみるのもいいかもな。飯はおごってくれるし、話も普通におもしろいからな」
「それって!?」
「ああ、この前なんか牛丼屋に行って朝定食を3回もおかわりしたら、『男の子ならそれぐらいでなくっちゃ!』て、手をたたいて喜んでたぞ」
「流石はもなか。オカマ相手に凄すぎるよ」
「さあ着いたぞ、このビルの5階だ。吉十は帽子を深く被っとけ。スマホは電源落として鞄の中だ」
「ラジャ!」
エレベーターの中は石鹸と香水が入り混じった独特な匂いが鼻を衝く。
そして5階でエレベーターを降りると、すぐに受付の窓口があり、
中に座っているじいさんが低い声で「いらっしゃいませ」と挨拶をしてきた。
窓口の周りには指名用だろうか、女の子の写真がたくさん貼ってあって、
それを眺めているだけで気分が徐々に盛りあがってくる。
年齢確認をされる事もなく、無事に料金を払い終えた僕ともなかは、
すぐ隣の待機室へと足を運んだ。
待機室には先客が1名いたが、すぐに女の子が迎えに来て連れていかれてしまった。
いよいよか。ドキドキドキドキ!
待っている間、もなかが何かアドバイスをしてくれていたようだけど、
極度の緊張で、僕の耳にはまったく入ってこなかった。
そして、
「次の方、ご案内いたしまーす!」
かわいい声が廊下の方から聞こえてくる。
「おい吉十、呼びにきたぞ。あとでゆっくり感想聞かせろよな」
「うん、がんばってくるよ!」
待機室を出ると、女の子は廊下で片膝を突いて僕をやさしく迎えてくれた。
「当館をご利用いただきありがとうございます。本日は私レナがお客さまのお相手をさせていただきます」
彼女はそう言って立ち上がると、僕の手を引き廊下の奥へと歩き出した。
お、女の子と手をつないでるー。ぽっぽっぽ――――っ!!
こじんまりとした室内はわずか3畳ほど。ベッドの他には三段ボックスが一つ置いてあるだけだった。
「まずはシャワーを浴びますので、衣類はこちらのカゴに入れてくださいね」
僕は言われたとおり、まずはジャージを脱いでカゴに入れた。
その横で、女の子も上に着ていたネグリジェを脱いでいくのだが……。
!!!
ブラはしていない。
つまり、ぽよよ~んなわけだ。
ピピ――――――――――――――――ッ!
これより先は視聴制限が掛かっております。
いやー、良かった。
何が良かったのかは詳しく説明できないけれど、
なんだか今でもふわふわ気分。
箱ヘル最高! レナさん最高!
もう悩みなんて、すべて吹っ飛んでしまった。
30分で3回いけるので、お得感まである。
あくびをしている新宿猫に別れを告げたら、中央線快速電車にもなかと共に乗り込んだ。
そして僕らの学園生活が、今日も始まる。
お読み頂きましてありがとうございます。
次回をお楽しみに!




