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今日から「仲間」と呼ばせてもらってもいいですか?

 その物件は1階の半分が店舗になっていて、そのスペースだけでもなかなか広い。さすがは領主が所有・管理しているだけはある。むさい衛兵6人と子供ら15人に私がぞろぞろと入っても全く窮屈さを感じない。


「結構広いんだなぁ」

「今度嫁さんとケンカしたら泊めてもらおうかな」

「飲んだ帰りでもいいよな。どうせ独身の俺らが帰るのは宿舎だし」

「おう、そりゃいいな」


 呑兵衛たちが好き勝手なことを言ってるが絶対に泊めないからね!


「ここなぁに?」

「わかんなぁいけど広くてきれいだねー」

「みんな一緒で楽しいね!」


 子供らはよくわからないなりに、この状況を楽しんでいるようだ。


「ヒカリ、私達がいても邪魔じゃないかな?もう帰った方がいいよね?」

「ロミーたちには、まだ用事があるから、もう少しいて欲しいな。疲れた?」

「ううん、ヒカリの魔法でみんな元気だよ」

 

 店舗部分の奥には、階段と裏庭へと続く通路があって、右手にはキッチンとトイレ、その奥に広い部屋、左手は倉庫になっている。そのまま裏庭に出て見れば、奥の壁沿いに倉庫と馬小屋。庭も広く、敷地内にもう一軒建てることも可能だ。


「ヒカリ、2階も見てごらんよ」


 他のメンバーは2階までは行かないようで、テオと二人で上がる。

 ここには小部屋が6つ。小部屋とは言っても、6畳から8畳はありそうだ。事前にテオに聞いていたよりも随分と広い。これは、最高の物件ではないか!


「テオ!最高!ここなら計画通りにやれそう!」


 テオの手をぶんぶん上下にしながら喜びを表すと、とたんに彼の顔がにへらとする。髭面でそれは怖いって!


「テオはロリコン?」

「え?ええ?違うよ!純粋に子供が好きなだけだよ!」


聞きようによってはロリコンだと宣言しているようにも聞こえるけど、まぁそういう意味ではないんだろう。


 1階に降りて、宴会の支度を男達にお願いする。材料として、ヒールの費用代わりにもらった野菜などを半分程提供。子供達のことをティナやルカにお願いして、私はロミーを連れて冒険者ギルドに向かった。



▽▲▽▲▽▲▽



「スライム核が153個で3060ルーク、フォレストスネークは皮3匹分で7370ルーク、肉は2匹だけ売って9602ルーク、内臓は薬師ギルドの奴らに全部渡したぞ。サインしてもらっているから確認してくれ。で、解体手数料に1500ルーク差し引いて、計18532ルークだ」


「うん、確かに。間違いない」

「……」


 ロミーからしたら、見たことのない大金なのかもしれない。目を大きく見開きながら、勘定をしているのをじっと見ているのを横目にバッグに仕舞う。昨日までの稼ぎと、回復魔法で得た金額を合わせると、全部で35,282ルークになった。

 

 今はアニカに会うと面倒なので、カウンターを避けて来た道を戻る。


「ねぇ、ロミーは冒険者よりも安全で稼げる仕事に就きたいと思わない?」

「そんな仕事があるならその方が嬉しいけど、無理だよ。何もできないし」

「さっきのお金見たでしょ?私は子供の割にはたくさん稼げるの。でも、1人じゃできないことがいっぱいあるの。今日もたくさんの衛兵さんに手伝ってもらったでしょ?今度はロミーが私の仕事を手伝ってくれないかな」


 ロミーは足を止めて、じっと私を見つめる。


「ヒカリはお金持ちなの?ううん、それじゃ、自分で働かなくてもいいのかな。なら、なんでそんなに稼げるの?魔法も凄かったし」

「説明するのは難しいかな。でも、一緒に働いてくれれば、そのうちわかると思う、よ?私もロミー達と同じで一人っきり。たまたま衛兵さんたちに出会えたけど、みんなのことが自分のことのように気になるの。ロミーは血のつながらなくても、みんなを家族として面倒みているでしょ。私も同じように、みんなを守りたい」


 転生者だとか、スキルのことだとかをロミーに今理解してもらうのはどうやっても難しい。だから誤魔化すような説明になったが、受け入れてくれたようだ。

 黙ったまま頷いて、そっと手を握ってくれた。

 


 みんなのところに戻ると、クルトが戻ってきていた。


「ヒカリ!姉ちゃん連れてきたぜ!母乳が出過ぎて困るって言ってたから、奥の部屋でミルクをあげてるぞ」


 その言葉にロミーと共に奥の部屋へと急ぐと、クルトによく似た大きなグレーの耳を持つ女性がハンスに母乳をあげていた。

 そう、今更だが、クルトは犬の獣人で、耳だけが種族の特性を強調している。

 ちなみに、体に現れる獣人らしさは様々で、一般的には特徴が多く表れている人ほど、能力も強く多く受け継いでいるそうだ。



 「もしかして、ヒカリちゃん?馬鹿クルトがあなたにいえば報酬をくれるっていってたけど、こんな小さい女の子からはもらわないから安心して!困った時はお互い様よ!」


と、ウインクをしながら言う。美人ていうわけじゃないけど、チャーミングで素敵な女性だ。


「その、エラさんは働いていますか?仕事をしていないなら、お子さん連れでいいので、乳母として働いてもらえませんか?食材を用意するので、食事なんかも作ってくれたらもっと助かるんですけど。私、こう見えてもここの店主なんです」

「じゃあ、クルトの話は本当なのね。あいつ馬鹿だから話半分で聞いていたのよね」


 実の姉から馬鹿を連呼されているクルトが不憫でならない。


「あら、もうお腹いっぱいでちゅか?じゃあ、ねんねしましょうねー。詳しい話はあとにしましょ。この子を寝かせちゃうから」


 どこで用意したのか、部屋には木箱があった。ベビーベッド代わりにそこで寝かせるらしい。


ハルトのことはエラに任せて、先ほどゴードンに押し付けたフォレストスネークが全部使われていないか確認しに行く。エラにも少し持たせてあげたいからだ。

 さすがに全部使うのは多すぎるようで、半分近くが別に保管してあるのをみて胸をなでおろす。奴らの食い気は底なしだからね!



「ガキはもう少しの我慢だからな。完成したら腹いっぱい食べさせてやるぞー!」

「おじちゃん、ほんと?」

「いいにおいするー」

「早く食べたいよー」


 おじちゃんと言われてへこむゴードンに気づかずに、子供たちがはしゃぐ。

ティナとルカが不安気にロミーをみるが、ロミーが頷くと、あからさまにホッとした顔をする。琴線を要求されたらと気になっていたのかもしれない。

 そもそも、何故ここにいるかもわかっていないのだから、2人に悪いことをしてしまったかな。


「野郎ども、今日は鮭は控えろよ!子供の前で醜態は見せるな!」

「おう、仕方ねぇ。今日は舐めるだけにしとくわ」


 ガハハと笑い合うが、お前らちょっと待て!昨夜は穢れなき少女ヒカリの前で散々に飲んで醜態をさらしたじゃないか!

 どういう意味だとばかりにゴードンをにらめば、プイッとそっぽを向いてしまう。その隣でテオが苦笑していた。


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