苦手意識は時に人を強くする
準備運動がてら、ゆったりとしたスピードで森に向かってジョギングを始める。
ギルドで確認したところ、今は晩春で、朝の空気はひんやりとして肌寒さを感じるけれど、それもすぐに気にならなくなるはずだ。
それよりも、昨日のようにスライムを見つけられるか気がかりで仕方ない。唯一の収入源を失うわけにはいかないのだ。
……もしかしたら、もっとい狩場があるのかもしれない。
ここにきて、ミスに気付いた。冒険者ギルドでもっと情報収集するべきだったのだ。この辺りにいる魔物の分布や種類も、安全性を高めるためには必要不可欠な知識なのに。どうやら、現金の乏しさに気が逸って冷静な判断ができていなかったようだ。
らしくないな、と反省する。ちょっと優しくされだけで気が緩んでしまうなんて。でも、今更だ。
徐々にスピードを上げて、昨日と同じように森の外縁に沿う様にスライムの姿を探すが、昨日のポイントにはチラホラとしかスライムの姿が見えない。森の外縁を東に向かうと町から距離が離れすぎてしまうので、東方面に足を延ばしてみる。
やがて、スライムの数が徐々に増えだしてきた。昨日よりも密集しているかもしれない。よし、記録更新するぞ!
▽▲▽▲▽▲▽
3時間は経過しただろうか。さすがに喉が渇いたので休憩をとることにした。運のいいことに、東側は森の外縁に沿って小川があるので、楽に水分補給ができる。休憩のついでにスライム核を数えれば、すでに124個も確保できていた。
バランスを考えて、背負い袋に半分ずつになるように分け入れる。動いていた時は感じなかったけれど、改めて背負いなおすとかなりの重さがある。もっと大きな袋が欲しいな。いや、収納魔法みたいなのが取れればもっといいのだけれど。
そこで、ステータスを確認してみる。
スキルポイント 1
スキル:知性 4 教養 2 言語エキストラ 6
俊敏 1 持久力 1 体力 1 打撃 1 根性 1
おおーっ!
スキルポイントゲットだー!スライム核を300個で1ポイントもらえるのかな?しかも、【持久力】と【体力】までゲットできてる!これで体力面の不安要素がかなりなくなった。今まで以上に長く、早く狩りができて効率が更にアップするはずだ。
スキルポイントもすぐに使えるのかな?スキルポイントの利用を意識しながら見つめると、獲得可能なスキルが浮かび上がってくる。レベルは1だけれど、1ポイントから取れるスキルは案外多い。それも、使えるものばかりだ。
これは、スキルポイントの獲得も意識的に行った方がいいかもしれない。
どのスキルを取るか考えながら、スライム狩りを再開した。
……のだけれど、あれから50個ほど狩ったところで、思わぬ事態に見舞われてしまった。
スライムに打撃を与えている最中に、太さ30cm、長さ2mほどの蛇が乱入してきたのだ!
奴のターゲットはスライムじゃなく、もちろん私。子供だからと侮ったのだろう。それはいい。いや、よくない。が、そんなことよりも気持ち悪いよ!蛇嫌いなの!大っ嫌いなの!
あのウネウネした体が巻き付いてくるんじゃないかと気が気でなく、とにかく必死に棒で叩いて反撃した。棒に絡まれたらアウトだから、そりゃもう必死だったよ!何度も頭をすくい上げるように叩き、奴の動きが鈍ったところで胴体にに足を乗せて動きを制限、そこから何度も頭部をぶちのめした。
その甲斐あって、見事勝利!スキルポイントも1増え、【打撃】と【根性】がレベルアップしたよ!
ふーっ。嬉しいけれど、精神的にめっちゃ疲れたよ。それに、この蛇どうしよっかな。もしかして、売れるかな?
とにかく、今日はもう、帰ろう、うん、そうしよう。
ステータス
名前:ヒカリ
人種:人族
年齢:10
性別:女性
スキルポイント 2
スキル:知性 4 教養 2 言語エキストラ 6
俊敏 1 持久力 1 体力 1 打撃 2 根性 2
ギフト:スキルポイント操作
称号:イレギュラーな存在
装備
廃材で作られた頑丈な木の棒
簡素で質素なワンピース
手作り感満載のサンダル
所持金 2680ルーク
持ち物
スライム核 175
蛇の死骸 1
ボロい背負い袋 2