第6話 告白 それは恣意の色
文化祭明けの学校。
夕方の教室で、ボクと瑞希は片付けをし終えたところだった。
「あぁ~、最後の文化祭終わっちゃったね。」と瑞希。
「そうだね…そういえば光は…?」
ボクは相槌を打ちながらも、
いつもボクら3人いることに拘る瑞希に疑問を投げ掛けた。
「あぁ…なんか弟の看病しなきゃってさっき帰っタヨ…」
「そう…なんだ…?」
瑞希の答えの最後の方に、何か違和感を感じたが
気にしないでおいた。
暫しの静寂の後、瑞希が口を開いた。
「ねぇ…亜紀…」
「えっ…何…?」
「今ってこの教室2人だけだよね…」
「そっ…そうだけど…?」
どうして当たり前のことをわざわざ聞いたんだ?
ボクの体に急に力が入る。
「大事な話があるの…」
「大事な…話…」
「つきあってくれる?」
「えっ!?あぁ…別に良いけど…」
ボクは一瞬驚いたけど、タイミング的に違う…だろう…
「良かった…」
そう瑞希が一言言ってから、瑞希は「ふぅ」っと息を吐いた。
そして瑞希が息を吸う…
ボクは息をのんだ。
そして次の瞬間…
「好きです!!」
「えっ…えぇ…っと…」
違わなかった…
戸惑うボク
「好きです!! 亜紀のことが大好きです!!」
瑞希はもう一度繰り返した。
「…その…つきあってってそういう?」
「えっ!?あっ、それはちょっと…違うっていうか…
そうっていうか?」
はぁ…はっきり言ってめんどくさい。
ボクはそう思いながら沈黙することにした。
ボクを好きと言う理由が気になる。
お互い無言の時間に不安を帯びた瑞希が、
必死に話を続けようとした。
「そっそっそのね…私達幼なじみじゃん?ずっと昔から一緒にいて…その中で色々あった。私、小中学生の頃よくイタズラされてたじゃん…いやいじめって言うのかなぁ?その時さ…亜紀が止めてくれたよね。覚えてる?亜紀こう言ったの…そんなダサいことするなよ!!言いたい事があるならはっきり言いなよ!!って。カッコ良かった…」
「カッコ良かった…?」
瑞希のカッコ良かったという言葉に怒りをおぼえたが、
まだ気持ちを抑えてボクは瑞希にそう尋ねた…
「うんカッコ良い。」
瑞希が自慢気に答える。
そして瑞希はお姫様が一目惚れした王子のことを話すように語り続ける。
「亜紀は正義感が強くて、いつもクールだけど、でも…胸の奥に熱いものを秘めてて…凄くカッコいい。」
そして暫く間をおいてから瑞希ははっきりと言った。
「だからこの人なら任せられる。私はこの人と共に生きていきたい。そう思ったの。」
瑞希の告白に対してボクは業腹な気持ちをぶつける。
「それってボクを男として…?」
「えっ?」
「瑞希はボクを男として見てるのかって聞いてんだよッ!!」
「ええっ…あぁ!!その…」
急に激昂した亜紀に戸惑う瑞希。
瑞希は自信なく答えた…
「分からない…」
「そうだよ。」
「えっ…」
「ボクも分からないって言ってんだよ!!」
「きゃぁ!!」
亜紀は激情しすぎたあまり、机を手で強く叩いた。
瑞希が悲鳴をあげ怯えている。
そんな瑞希の恐怖はお構い無しに、
亜紀が畳み掛けるように言う。
「知ってるよねぇ!?瑞希も…ボクが高校生にもなって性別が決まってないこと。覚えてる…?新学期早々ボクが先生に呼ばれた時!!」
「うぅ…うん…」
亜紀の勢いに怯む瑞希。
なんとか相槌を打つ。
亜紀の怒りは止まらない。
「あの日ボクは先生にこう言われたんだ!!普通高校生にもなって性別が決まっていないなんて異常だって!!」
「そっ…そんなこと…」
「そうだよボクは異常だよ!!カッコいい服も可愛い服も着て…男女どっちにもモテて…でもそれがボクには重荷だった!!みんな…幼なじみの瑞希は女らしくなっていって女性に…光は男らしくなっていって男に…でもボクは!?ボクは子供のままだ…鏡を見る度いつも思う。思い知らされる。自分の身体が…自分が気持ち悪いって!!先生どころか実の親にも虐げられ!!この世にボクの居場所なんてないんだ!!」
亜紀の言葉は怒りから悲痛な叫びに変わっていた。
この亜紀の訴えに、瑞希はただただ謝罪することしか出来ない。
「ごめん…私、幼なじみなのに亜紀のこと何にも分かってなかった…」
「そうだよ…」
「うぅ…」
亜紀のそうだよ…が、シンプルながらも瑞希の心に突き刺さる。
亜紀が瑞希の心に穴をあける。
「何もボクのこと分かってないくせに、無責任に勝手に好きとか言って恣意的になって…理想押し付けるなよ!!」
「ごっ…ごっごめん!!私帰るからぁ~…」
瑞希はその場から立ち去ってしまった。
独り教室に残された亜紀。
自分が瑞希に対して甚だ以て酷く
強く当たったことに申し訳なさと後悔を覚えてる…
「ごめん…ごめん瑞希…
ウワァァァァァァァッ!!」
告白なんて…告白なんて恣意の色だ…




