8月本編 第18話 写真だけじゃなくて、ちゃんと私を見て (片想い同級生/夏の観光地/友達以上未満)
朗読使用者への簡単な設定説明
夏のお出かけ先で、相手が景色や写真撮影に夢中になっている場面です。最初は軽くからかいながら、最後には「今日の思い出の中に、自分も入れてほしい」という本音を伝えます。
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ねえ。
また写真?
さっきから、ずっと撮ってない?
海も撮った。
空も撮った。
あの古い建物も撮った。
……次は何?
ソフトクリーム?
ふふ。
それ、溶ける前に食べたほうがいいよ。
でも、ほんとに写真好きだね。
あとで見返すの?
……そっか。
記憶だけだと忘れるから。
それは、ちょっとわかる。
夏って、終わったあとに思い出そうとすると、全部同じような青い空になっちゃうもんね。
あの日が暑かったとか。
風が強かったとか。
電車を一本逃したとか。
そういう細かいことは、意外と消えちゃう。
……でもさ。
一つだけ文句言っていい?
今日の写真。
私、ほとんど写ってない。
……いや。
別に、全部に入りたいわけじゃないよ。
そんなに自己主張強くないし。
でも。
一緒に来たのに、景色ばっかりだと。
あとで写真を見たとき、あんた一人で来たみたいじゃん。
……私のことは覚えてる?
今はね。
でも十年後とか。
「あれ、この日誰と行ったんだっけ」ってなったら、ちょっと嫌。
……だから。
一枚くらい撮って。
私も。
……急に照れるな?
だって。
撮ってほしいって自分から言うの、ちょっと恥ずかしいでしょ。
……ほら。
そこ。
海が後ろに入るところ。
髪、変じゃない?
……大丈夫?
ほんとに?
あんたの大丈夫、雑だからなあ。
……じゃあ撮って。
……待って。
今、カメラばっかり見てない?
こっち。
ちゃんと私見て。
……写真撮るんだからカメラを見る?
違う。
撮る前に。
一回くらい。
今日の私を、ちゃんと自分の目で見てよ。
写真越しじゃなくて。
……。
なに。
そんなに素直に見ると思わなかった。
……どう?
変じゃない?
……似合ってる?
……そっか。
ありがとう。
それなら、もう撮っていい。
今ならたぶん、ちゃんと笑える。
……撮れた?
見せて。
……あ。
いいかも。
思ってたより自然。
……これ、送って。
私も持っておきたい。
でも。
SNSには載せなくていいよ。
これは、みんなに見せる写真じゃなくていい。
今日ここに、あんたと私がいたって。
二人だけが覚えておくための写真にしよう。
……ね。
景色もいっぱい撮っていいけど。
たまには、その中に私も入れて。
私も。
あんたの夏の思い出の一部になりたいから。




