8月本編 第14話 髪、まだ濡れてる。……触ってもいい? (クーデレ/プール帰り/隣の席)
朗読使用者への簡単な設定説明
プール帰り、相手の濡れた髪を見つけたクーデレの同級生が、タオルで拭こうとします。淡々とした口調の中に、近づく照れと相手を心配する気持ちをにじませてください。
------------------------------------------------------------------------------------------------------
……待って。
そのまま帰るつもり?
髪、まだ濡れてる。
……平気?
平気かどうかを決めるのは、風邪をひいてからでは遅いと思う。
少し、こっちに来て。
タオル、貸すから。
……自分で拭ける?
見ればわかる。
適当に二回触っただけで、全然拭けてない。
後ろのほう、まだ水が垂れてるよ。
……触ってもいい?
髪。
嫌ならやめる。
……いいの?
じゃあ、少しだけ。
……動かないで。
ん。
思っていたより濡れてる。
プールから上がったあと、ちゃんと乾かさなかったでしょう。
……時間がなかった?
それでも、せめてタオルくらい使えばいいのに。
君は、体調を崩したあとで後悔するタイプだから。
……私が細かすぎる?
そうかもしれない。
でも、隣の席で一日中せきをされたら困る。
……それだけかって?
今は、それだけということにして。
……ん。
髪、柔らかいね。
濡れてるからかな。
いつもより、少し冷たい。
……なに。
私が触りたいだけに見える?
……否定はしない。
少し気になっていた。
普段は近くで見る機会なんてないから。
隣の席でも、髪に触れる理由はないでしょう。
今日は濡れていたから。
理由ができた。
……変?
自分でも、少し変だと思う。
でも。
君がプールから戻ってきたとき、髪から水が落ちていて。
塩素の匂いがして。
いつもと少し違う顔をしていたから。
気になった。
……近い?
髪を拭いているんだから、これ以上離れるのは難しい。
君こそ、急に静かになったね。
……緊張してる?
私も、少し。
触っていいか聞いたのは私なのに。
実際に触れたら、思ったより近かった。
……でも、もう少し。
このままだと首のところが冷える。
……ん。
これで大丈夫。
たぶん。
……終わり。
そんな顔をしないで。
もう少し拭いてほしかったみたいに見える。
……違う?
そう。
なら、タオルを返して。
……。
やっぱり、あと少しだけ。
前髪も濡れてる。
目に入りそうだから。
……動かないで。
すぐ終わる。
……ねえ。
次にプールへ行ったときは、ちゃんと乾かして。
それでもまた濡れたまま戻ってきたら。
私が拭く。
……仕方なく。
隣の席の人が風邪をひくと困るから。
それから。
今日みたいに触れる理由が、またできるから。
……今のは忘れて。
忘れなくてもいいけど。
誰にも言わないで。




