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女性VTuber向け 朗読しやすい3分シチュエーションボイス台本集 〜季節イベント対応〜(無料・使用許諾不要)  作者: 常陸之介寛浩 本能寺から始める信長との天下統一
5月に合わせた台本集

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30/30

五月の空が高い日は、秘密が似合う (ミステリアス系/夕方の屋上/少し不思議な相手)

朗読使用者への簡単な設定説明


この台本は、女性VTuberが「どこか掴みどころのない、少しミステリアスな同級生」として読むシチュエーションボイスです。

舞台は五月の夕方、学校の屋上。相手は偶然屋上に来たようにも見えますが、彼女は最初から来ることを予想していたような口ぶりをします。

恋愛感情ははっきり言い切らず、風、空、沈黙、視線で距離を近づける雰囲気です。

声は静かに、少し含みを持たせて。言葉と言葉の間に余白を作ると、ミステリアスさが出ます。


……来たんだ。


ふふ。

そんなに驚かなくてもいいのに。


鍵、開いてたでしょう?

ここ、放課後になると、たまに開いてるの。

先生たちも全部は見ていないし、風が強い日は、誰かが換気のつもりで開けたまま忘れていくこともある。


……うん。

私は、よく知ってる。


屋上、好きだから。


……こっちに来る?


端までは行かなくていいよ。

怖いなら、そこでもいい。

でも、今日の空は、少しだけ近くで見たほうがいいと思う。


ほら。

五月の空って、高いでしょう。


春の空より青がはっきりしていて、でも夏ほど強くない。

雲の輪郭もやわらかいし、夕方になると、光が少し薄くなる。

……こういう空の日は、秘密が似合う気がする。


……なに、その顔。


変なことを言うな、って思った?


でも、本当だよ。

昼間の明るい教室で話すには少し重たいことも、夕方の屋上だと、なぜか言えてしまうことがある。

風が言葉を薄めてくれるからかな。

それとも、高い場所にいると、下に置いてきたものが少し遠く見えるからかな。


……君は、何を置いてきたの?


……ふふ。

答えなくていいよ。

今すぐ聞き出したいわけじゃないから。


ただ、少し疲れた顔をしてた。

廊下で見かけたとき。

誰かに話しかけられたら普通に返せるけど、ひとりになった瞬間、ふっと黙りそうな顔。


……当たってる?


うん。

そういう顔、わりとわかるんだ。


人は、自分で思っているより、沈黙の直前に本音が出るから。


……こっち、座る?


床、少し冷たいけど。

五月だから、そんなに嫌な冷たさじゃない。

むしろ、歩いて火照った足にはちょうどいいかも。


……うん。

そこ。


屋上の床って、不思議だよね。

教室の床より少しざらついてて、座ると制服の布越しにも、ちゃんと外の場所なんだってわかる。

風も近いし。

髪もすぐ乱れるし。


……あ。

君の髪、また風で跳ねた。


少し、直していい?


……ありがとう。


……ん。


直った。

たぶん。


……たぶん、ね。

私、こういうのあまり上手じゃないから。


でも、少し触れただけで、さっきより近くなった気がする。

人の距離って、変だね。

何時間話しても遠いままのこともあるのに、指先がほんの少し髪に触れただけで、急に近くなることもある。


……今の、困った?


ごめん。

でも、君は逃げなかった。


……そういうところ、少し危ないよ。


誰かが近づいたとき、ちゃんと逃げられる人のほうが安全なのに。

君はたぶん、相手が本気で踏み込んでこない限り、少し待ってしまうタイプでしょう。


……違う?


……ううん。

たぶん、そんなに外れてないと思う。


まあ、私も似たようなものかもしれないけど。


自分から屋上に来ておいて、誰かに見つかるのを少しだけ待っている。

ひとりになりたいのに、完全にひとりだと少し寂しい。

だから、誰かが来てもいい場所に隠れる。


……ふふ。

面倒くさいね、人って。


でも、嫌いじゃない。


……君も、嫌いじゃない?


……そっか。


それなら、少し安心した。


ねえ。

屋上って、秘密基地みたいだと思わない?


みんなが下の教室で、部活で、廊下で、それぞれの日常を続けている間に。

ここだけ、少し違う時間が流れてる。


下からは見えない。

でも空には近い。

声を出せば風にほどけるし、黙っていれば、夕方の色に混ざれる。


……私は、そういう場所が好き。


何かをはっきりさせなくていい場所。

名前をつける前の気持ちを、そのまま置いておける場所。


……たとえば。


君が今日、どうしてここに来たのか。

それを“疲れていたから”って言ってもいいし、“たまたま”って言ってもいい。

でも、本当はそのどちらでも足りないかもしれない。


私と会いたかったから……なんて言ったら、さすがに言いすぎ?


……ふふ。

黙った。


そういう反応、嫌いじゃないよ。


答えないことで、逆に何か伝わることもあるから。


……ねえ。

君は、秘密って好き?


私は好き。

でも、全部の秘密が好きなわけじゃない。


誰かを傷つけるための秘密とか。

嘘を隠すための秘密は、あまり好きじゃない。


でも、まだ言葉にできない気持ちを、少しだけ胸にしまっておくような秘密は好き。

言ったら壊れそうだから、今はまだ言わない。

でも、なかったことにはしない。

そういう秘密。


……今、君の中にもある?


……うん。

答えなくていい。


あるかもしれない、くらいで十分。


私にもあるから。


……聞きたい?


……ふふ。

すぐに聞かないんだね。

そういうところ、やっぱり君らしい。


じゃあ、私も今は言わない。

でも、少しだけ見せる。


……今日、君が来てくれて、うれしかった。


それだけ。


秘密ってほどじゃない?

そうかもしれない。

でも、教室では言えなかったから。

廊下でも、たぶん言えなかった。

屋上だから言えた。


だから、これは屋上の秘密。


……ねえ。

誰にも言わないでね。


私が、君が来てくれてうれしかったこと。


……ふふ。

そんな真面目に頷かれると、本当に秘密みたいになる。


あ。

空、少し色が変わってきた。


夕方って、ほんの数分で変わるよね。

さっきまで青かったところが、少しずつ薄くなって。

校舎の影が伸びて。

風の温度も、少しだけ変わる。


もう少ししたら、ここも肌寒くなるかな。


……でも、まだ帰りたくないね。


あ。

今のは私の本音。


君は?


……うん。

そう。


じゃあ、もう少しだけいようか。


言いたいことがあるなら言ってもいいし。

何も言いたくないなら、このまま空を見ててもいい。

こういう場所では、沈黙もちゃんと会話になるから。


……ただ、ひとつだけ。


次にここへ来るときは、偶然じゃなくていいよ。


私がいるかもしれないって思って来てもいいし。

私に会えるかもしれないって、少しだけ期待してもいい。


……その代わり、私もたぶん、少しだけ待ってる。


屋上で。

五月の空が高い日に。

秘密が似合いそうな夕方に。


……ねえ。


今日のことも、秘密にする?


それとも、心の中でだけ覚えておく?


……うん。

私もそうする。


誰にも言わないけど、忘れない。

五月の屋上で、君と並んで座ったこと。

風で乱れた髪を、少しだけ直したこと。

言わないままの気持ちが、言葉より近くにあったこと。


……ふふ。


やっぱり、今日の空には秘密が似合うね。

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