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女性VTuber向け 朗読しやすい3分シチュエーションボイス台本集 〜季節イベント対応〜(無料・使用許諾不要)  作者: 常陸之介寛浩 本能寺から始める信長との天下統一
5月に合わせた台本集

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五月の光は、読む声までやさしくする (清楚先輩/新緑の図書室/図書室で会う先輩)

……あ。

こんにちは。


今日も来ていたんですね。

ふふ。

いえ、責めているわけではありませんよ。

むしろ、少し嬉しいです。


この時間の図書室、静かでいいでしょう?

授業が終わったばかりの廊下はまだ少し賑やかですけど、ここだけは空気が違うんです。

本棚の間に入ると、外の音が少し遠くなって。

紙の匂いと、窓から入る光だけが残るみたいで。


……はい。

私も好きです。


あ、今日はそこに座るんですか?

では、私は隣に……。

……いえ、向かいではなく、隣でいいですか?


ふふ。

驚かせてしまいましたか。


でも、今日は窓の外を一緒に見たい気分なんです。

ほら。

新緑が、とてもきれいだから。


四月は桜ばかり見ていましたけど、五月になると急に緑が濃くなりますね。

同じ木なのに、まるで別の表情になったみたいです。

やわらかい若葉が光を受けて、少し透けている感じ。

見ているだけで、目の奥まで涼しくなる気がします。


……ええ。

この席から見るのが、一番きれいなんです。


本当は、私だけのお気に入りの席だったんですけど。

最近は、あなたにも教えてしまったので。

……少しだけ、特別な席が増えたような気がします。


……あ。

今のは、少し変な言い方でしたね。

でも、本当にそう思ったんです。


同じ場所でも、一人で座るのと、誰かと座るのでは、記憶の残り方が少し違うでしょう?

この席も、前はただ静かで好きな場所でした。

でも今は、あなたと本の話をした場所でもある。

そう思うと、少しだけ違って見えるんです。


……ふふ。

そんなに真面目に聞かれると、こちらまで少し恥ずかしくなります。


今日は、何を読んでいるんですか?


……ああ。

この前すすめた本。

まだ読んでくれていたんですね。


どうですか?

難しくはありませんか?


……よかった。

ゆっくり読める感じがする、ですか。

それは、とてもいい感想だと思います。


本って、早く読み終えるだけがいいわけではありませんから。

むしろ、時々立ち止まって、窓の外を見たり、言葉を少しだけ反芻したり。

そういう読み方が似合う本もあります。

五月の午後には、特に。


……あの。

もしよかったら、少しだけ読んでもいいですか?

あなたが今読んでいるところ。


……ありがとうございます。

では、少しだけ。


……。


ふふ。

やっぱり、声に出すと違いますね。

黙って読むと胸の奥に沈む言葉が、声にすると空気に溶けていくみたいで。

こうして図書室で小さく読むと、言葉までやわらかくなる気がします。


……え?

私の声が、ですか?


……そう言われると、困ってしまいます。

そんなふうに褒められること、あまりないので。


でも……嬉しいです。

ありがとうございます。


図書室では、大きな声は出せませんけど。

そのぶん、少し近くで話すことになりますよね。

声も自然と落ちて、言葉が遠くまで飛ばずに、隣の人にだけ届くようになる。

私は、それが少し好きなんです。


教室で話す声とは違う。

廊下ですれ違うときの声とも違う。

図書室の声は、少しだけ秘密に近い気がします。


……今の、少し詩的すぎましたか?


ふふ。

でも、あなたは笑わないんですね。

そういうところ、安心します。


四月に初めて本の話をしたときも、そうでした。

私が少し回りくどい言い方をしても、急かさずに聞いてくれた。

だからでしょうか。

あなたとは、言葉を選ぶのが少し楽しいです。


……あ。

窓、少し開いていますね。


風が入ってきました。

ページがめくれそう。


……押さえてくれたんですか。

ありがとうございます。


指、近いですね。


……すみません。

変なことを言いました。

でも、今、本の端を押さえた指が、ほんの少しだけ私の指に触れそうで。

そういう小さな距離って、図書室だと余計にわかってしまうんです。


普段なら気にしないようなことも、静かな場所だと大きく感じる。

紙の擦れる音も、椅子を引く音も、呼吸の間も。

そして、隣にいる人の気配も。


……少しだけ、近すぎますか?


……大丈夫、ですか。


よかった。


では、このままで。


五月の光って、不思議ですね。

まぶしすぎないのに、ちゃんと明るくて。

あたたかいのに、どこか涼しい。

そのせいか、心まで少し素直になります。


四月の私は、少し緊張していました。

あなたと話すときも、ちゃんと先輩らしくしなければ、と思っていたんです。

でも今は……。

少しだけ、そういうのを忘れてしまいます。


先輩としてではなくて。

同じ本を読んでいる人として。

同じ窓の外を見ている人として。

あなたの隣にいる感じがして。


……あ。

今のは、少し言いすぎましたね。


でも、取り消すほどではありません。

だって、本当のことですから。


ねえ。

もしこの本を読み終えたら、また感想を聞かせてください。

どこが好きだったか。

どこで少し立ち止まったか。

どの言葉が、心に残ったか。


その話を、またこの席で聞けたら嬉しいです。


……はい。

約束です。


ふふ。

最近、あなたと約束が増えていきますね。

図書室で会うこと。

本の感想を話すこと。

おすすめを教え合うこと。


どれも小さな約束なのに、積み重なると、少しだけ特別になります。


……あ。

チャイムが鳴る前に、そろそろ戻らないといけませんね。


本当は、もう少しだけここにいたいです。

五月の光も、あなたの読む声も、今日はとてもやさしいから。


……え?

私の読む声も?


……もう。

そういうことを、そんなに静かに言わないでください。

図書室だと、余計に近く聞こえてしまいます。


では、また。

次もこの席で。


五月の光がきれいなうちに、もう少しだけ。

あなたと同じ本の続きを、読めたら嬉しいです。

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