第1話 春、はじめましての隣で (清純派/入学初日/隣の席になった同級生)
……あ、えっと。
はじめまして。
……びっくりしましたよね。急に話しかけちゃって。
でも、その……入学式が終わってから、ずっとどうしようかなって思ってて。
隣の席なのに、何も言わないままなのも変かなって。
私、こういうとき、あんまり自分から話しかけるの得意じゃなくて。
だから今もちょっと、というか、かなり緊張してます。
ふふ。
でも、あなたも少し緊張してるみたいで……なんだか少し安心しました。
私だけじゃなかったんですね。
今日、朝からずっと、知らない顔ばかりで。
校門をくぐったときは、春ってもっと明るいものだと思ってたのに、実際はどきどきしすぎて、それどころじゃなくて。
桜もきれいだったのに、ちゃんと見る余裕、あんまりなかったです。
でも、教室に入って、席に座って。
隣にあなたが来たとき、少しだけほっとしたんです。
……なんででしょうね。まだ何も知らないのに。
なんとなく、優しそうな人だなって思ったから、かな。
あっ、ごめんなさい。
いきなりそんなこと言われても困りますよね。
でも、本当にそう思ったんです。
たぶん今、みんな同じなんですよね。
新しい制服に、新しい教室に、新しいクラスメイト。
ちゃんとやっていけるかな、とか。
うまく馴染めるかな、とか。
そういうこと、きっと少しずつ考えてて。
私もです。
ちゃんと友達ができるかな、とか。
ここで楽しく過ごせるかな、とか。
昨日の夜、少しだけ不安で眠れなくて……なんて、こういうことまで言うと、重たいですか?
……よかった。
少し笑ってくれて。
ねえ。
もしよかったら、最初の友達……とまでは言わなくても、最初にちゃんと話せた人、になってくれませんか。
休み時間に少し話したりとか、わからないことがあったら聞いたりとか。
そういうの、できたら嬉しいです。
私も、できることがあったら頑張るので。
あの……これから、授業のこととか、行事のこととか、知らないことがたくさんあると思うんです。
でも、一人で不安になるより、隣に話せる人がいるだけで、たぶん全然違う気がして。
だから。
これ、よかったら受け取ってください。
……連絡先。
勇気、出して書いてきました。
もちろん、無理にとは言いません。
でも、もしあなたも少しだけ同じ気持ちなら……嬉しいです。
……あ。
先生、来ちゃいますね。
なんだか、さっきより少しだけ落ち着きました。
あなたに話しかけてよかったです。
改めて――
これから、よろしくお願いします。
……春のはじまりが、あなたの隣でよかったです。




