7話 この世界について
「これ美味しいよ、スネタ!」
笑顔でカップラーメンを食べるハルカになんだか申し訳ない気持ちに俺はなっていた。
「インスタントだし、150円くらいのものだから……ごめんね」
18歳の女の子にカップラーメンなんかを食べさせるしかないとは……危機管理が無さ過ぎだ。
今後は何かあった時用として、せめてパスタやピザなどの冷凍食品も買って会社の冷凍庫に常備しておくべきだな。
これは反省し改善すべき点だ。
とはいえ、ハルカが無事だったので皆、安堵したようで食事は和やかな雰囲気だった。
「昨日の魔王軍との合戦が終わって怪我人がいないか探す為に森の中を探索していたんだけど、そこを逆に奇襲を受けてしまったの……もう魔王軍は撤退したと思っていたから、油断していたの。戦士として情けない話だよね」
ハルカは何故、森に居たのかを説明してくれたが話しながら落ち込んでしまったようで、ラーメンを食べる手が止まってしまう。
(自分に厳しい真面目な人なんだ。ハルカは俺と似ているようだ)
「本当にスネタがいなかったら私は殺されていたよ。あのガーゴイルは魔王麾下の刺客でこれまで100人以上の隊長の戦士が殺されてきたの。他の傭兵団でも倒す事ができなったガーゴイルを討ち取るなんて本当に凄いよ、スネタは」
「あれは俺だけの力ではないから……ドラゴンのお陰だよ」
心からそう思っているので恐縮してしまう。
「スネタちゃん!そんなスゲー奴倒したなんて、スゲーじゃないですか~!」
「俺は逃げ出したけど、実は草むらから様子を見ていたんっすよ。スネタ勇敢で格好良かった、見直したよ……」
肩を落としながら和彦が言う。
「剣道とか空手とかやってた事あるのか?」
虎之助さんが感心しながら聞いてくる。
「いえ、小中と野球やっていただけです。きっと日頃の腕立て伏せで体鍛えていたのでそれが役に立った感じです。でも倒せたのはプランBの方でした。プランAで倒せなかった事は悔いが残ります」
俺は冷静に戦いを振り返りながら話した。
(バックアッププランを用意するのは良い事だと思うが、やはり第一候補のプランAで成功させるようにしないといけないだろう)
「ハルカたちは……この世界の人でも魔物の言葉は理解できないのかな?」
「うん、魔物たちが言葉や文字を使いこなしているから『魔物語』存在しているのは、私たちもわかっていたけど、翻訳まではできていない状態だよ。だからスネタが魔物と話をしているのを見て正直驚いた……」
やはり魔物の言葉はこの世界の人間は理解できないらしい。
それを聞き取れてしまったのは、やはり日本から転移してきた時に得た特殊スキルと考えて間違いないようだ。
魔物とコミュニケーションが取れるというのは、大きな武器になる。
「ハルカ、俺たちはこの世界について知らない事が多すぎるんだ。良かったら色々教えてもらえないかな?」
「もちろん!なんでも聞いて」
俺たちが疑問に思っている事をハルカに質問した。
その答えを哲さんがホワイトボードにまとめる係をしてくれた。
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〇この世界についてのまとめ
・この世界には国が6つ存在するが、3つが魔王軍によって滅ぼされている。
今いるのは『ウーリュウ国』
王様が存在する。
スタジオから見える街は『王都オキュノハマーン』
・魔法を使えるのは魔物のみ、人間は魔法を使えない。
電車、車などは存在せず科学力は発展していない、中世ヨーロッパ時代世界に似ている。
・軍隊は存在するが、魔王軍との戦いが増えている為、傭兵団も雇い戦っている。
ハルカが所属するガドルフ傭兵団も色々な国に出向いて魔王軍と戦っている。
・魔王軍について
約100年前から魔王軍と戦っている。
ヒサミガーという魔物が魔王についてから人間の国に侵略を開始した。
組織的で統率のとれた軍隊、ただの野蛮な獣の集団ではない。
人間を滅ぼそうとしている。
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「もの凄く要約すると人間と魔物が戦っている世界って事か……凄い所に来てしまったな」
考え深げに腕を組みながら虎之助さんが話す。
「毎日が生きるか死ぬかの世界ですね」。
「元いた世界でも戦争があったんじゃないの?」
ぼそっと呟いた俺の言葉にハルカが不思議な事を聞いてきた
「え?日本は平和な国だよ」
不思議そうな顔でハルカが俺の顔を見つめる……どういう事だろうか?
「スネタたちは地獄の戦火を潜り抜けた顔つきをしていると思うんだけど……戦士である私にはわかる」
ハルカがまっすぐな目で俺たちを見ながら話す。
(地獄の戦火……あぁ、仕事という戦の経験ならあるからな)
俺はなんとなく察した。
「確かに、俺たちは3日連続徹夜、30日連続勤務も経験している戦士ではあるから、それかもしれないね」
俺は笑顔で答えた。
「昔はもっと酷かったからな……ねぇ義雄さん」
「ふむ……顔に出てしまっているとは」
思わず義雄さんと虎之助さんが笑う。
そういえば昔の話とかあまり聞いた事ないな、今度ゆっくり聞いてみたいな。
「でもどうしてスネタたちはこの世界に来たんだろう?」
「うん、俺たちが願ってきた訳ではないし……よくある設定だと、この世界の誰かに召喚されたみたいな事はあるね」
「スネタたちの力を借りたいって人が、この世界にいるって事?」
「うん……でも俺たちはアニメーション作る以外に何もできないから、召喚されても何の役にも立たないと思う。虎之助さんどう思います?」
俺は隣にいる虎之助さんに聞いてみた。
「そうだな、俺たちがこの世界で社会貢献できるとは思えないな。とにかく元の世界に戻りたい事は変わりはない。元の世界に戻る方法と、戻るまで安心して生活できる暮らしの確保が今は必要だな」
「僕たち、こんな中世ヨーロッパみたいな世界で生きれる訳ないじゃないですか~?肉体労働も傭兵もできる訳ないじゃないですか~?」
「一応、肉体労働は経験ないっす」
「ふむ……私もデスクワークしかできません。ただこの世界の文字を理解できないので、それも難しそうですね」
それぞれ皆さんが感想を言うが、やはりパソコンを使った仕事以外にはまともに稼げる雰囲気ではなさそうだ。
「俺らたちは、パソコンないとただニート集団みたいだな」
「あはははっ!面白いですね、虎之助さん」
俺は思わず虎之助さんの冗談に笑ってしまった。
また和彦が目を細め、眉間にシワを寄せながら俺を見ている。
本当にメガネを買えば良いのに、と思う。
「ハルカは街に住んでいるの?」
「ガドルフ傭兵団の移動車式の宿舎があるの、そこで今は寝泊まりしているわ」
「俺が宿舎まで送るから、街で何かできそうな仕事ないか一緒に探してもらうってできるかな?」
「もちろん!スネタの頼み断る訳ないわ」
ハルカは承諾してくれた。
良かった、どんな世界かもわからない状態で街中歩いても仕事なんて決められる訳がない。
「という訳で、これから俺はハルカと一緒に街に行って、俺たちでもできそうな仕事があるか探してきます!そして元の世界に戻る為のヒントがないかも探ってこようと思います」
「スネタ、すまない助かるよ」
虎之助さんが軽く頭を下げる。
「いえ、俺は絶対に元の世界に戻ってまたアニメを作りたいんです!それにこれから公開予定されている映画だって観たいです!アニメファンとして劇場で観たいです!だから俺は意地でも元の世界に戻りたいです!」
「確かにそうだな、今制作中と言われている監督の新作も観れないなんて耐えられないよな」
「僕はメイド喫茶に行きたいじゃないですか~」
「一応、俺も続きみたいアニメが山ほどあるっす」
「ふむ……私も娘と一緒に観に行きたい劇場アニメがある」
元の世界に戻りたい。
俺たちアニメ馬鹿の想いは一つになった。
「僕、行きます。本物のメイドさんに会いたいじゃないですかー!」
「却下」
哲さんはトラブル起こしそうだから、虎之助さんからすぐに却下されてしまった。
「意義あり!納得できません、いいじゃないですか~」
「お前以外は全員納得してる、おとなしくしてろ。プロマネは待つのも仕事だろ?」
「わかりましたよ~我慢します」
渋々、哲さんが納得する。
「よし、では早速行こう。私も傭兵団の皆が帰り遅いと心配している頃だと思うし」
「そうだね、すぐ準備をするよ」
俺はテブレットや他、何か必要になりそうな物をリュックサックに詰めた。
「私、ハルカはスネタが元の世界に戻るまで必ず命を守り通すと誓う」
ハルカが剣を少し抜き、素早く鞘に戻して「カチン!」と金属音を鳴らす。
「何?それ」
「金打、誓いの印だよ。必ずスネタを元の世界に戻すという戦士としての約束だよ」
戦士には見えないような可愛らしい笑顔でハルカが答えた。
(武士っぽいな……ハルカって名前もだけどどこか日本の文化を感じるのは気のせいだろうか……)
「じゃあ出発しよう」
「あっ、うん!行こうか」
俺とハルカは二人で街に向かった。
これからどんな事が待ち受けているかわからないが、俺は異世界の街を見て周れる事に少しワクワクしていた。
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