形勢逆転
「ミックが殺られたぞ! 」
「相手は銃を持ってる! そんなこと聞いてねぇぞ! 」
追っ手は騒然となった。慌てふためいている様子が手に取るように分かる。このまま一気に勝負をつけなければならない。情けは無用なのだ、戦いは始まってしまったのだから。僕はさっき撃った男の隣にいる別の男に狙いを定めて引き金を引いた。
「ドォーン! 」
「ぎゃぁー! 」
また一人の男が馬上から崩れ落ちた。こんな暗闇の中で松明を持ったまま銃の撃ち合いをやるなんてこいつらは大馬鹿もいいところだ。自分を明るく照らし出して「狙ってください」と言わんばかりの状態でシンシア杯射撃競技チャンピオンの僕に戦いを挑むなんて無謀すぎる。おそらく彼らは今まで抵抗出来ない人間を散々痛めつけてきたから反撃されることまで考えたことがないのだろう。そう考えると僕は腹が立ってきた。今までお前達に無抵抗のまま殺された人々の無念を僕が晴らしてやる!僕は更にもう一発を放ち三人目の男を屠った。
「松明を捨てて馬から降りろ! 盾だ! 盾を使え! 」
残った二人のうち一人がそう叫んだ。さすがに自分達の不利な状況を理解したらしい。するとその男は松明をあろうことか僕の潜む木陰の草むら付近に投げ込んできた。なんてことをしやがる! これでは山火事になってしまう! 早く火を消さなければ! 僕は残った二人の男との決着を早急につける為次の弾を装填し狙いを定めようとした。
「ん!? 」
残った二人の男は馬から降り全身がすっぽり隠れるような大きな盾を構えて僕の方に近付いてくる。結構分厚そうな盾だ。このライフル銃で撃ち抜けるだろうか? 僕はその盾に狙いを定め引金を引いた。
「ドォーン! 」
「ガギーン! 」
僕の放った銃弾は相手の盾に命中はしたがいとも簡単に弾かれてしまった。くそっ! 次弾装填、もう一発だ!
「ダーン! 」
「ゴギーン! 」
駄目だ! 射貫けない! 僕はその後更にもう一発の弾丸を発射したがそれも弾かれてしまった。くそっ、まずい! このまま二対一で接近戦に持ち込まれるとヤバいのだ。僅かに見えている足を狙うか? そう自問しながら僕は次の銃弾を装填しようとした。だがその時だった。
「あれっ!? 」
装填用のボルトを動かしたがいつもの手応えがない! 弾が切れたのだ! しかも僕の狼狽えた声が相手に聴こえてしまったらしい。弾切れを相手に悟られてしまった!
「どうやらもう撃てねぇみたいだな! テメェ、よくも今まで好き放題やりやがって! 半殺しにしてやる! 」
その男二人は盾を構えたまま僕の方に一直線に走ってきた。僕はその迫力と形相に押されてその場から背を向けて逃げ出そうとする。さっきまでの有利な立場が逆転してしまったのだ! だが相手が追いかけてくるスピードが早く僕はその二人の男の一人に背後から首根っこを掴まれてしまった。
「安心しろ! 今は殺しはしねぇ! だが楽しませてもらうぜ! 」
「ぐぇっ! 」
僕は背後から脇腹を思いっきり蹴られて吹っ飛んだ。一瞬呼吸が出来なくなる。僕は地面に仰向けに倒れこんだ。目を開けると僕の倍ぐらいの腕の太さをした刺青だらけの凶暴そうな男二人がいやらしそうな笑みを浮かべて目の前に立っている。ヤバい!このままだと殺される!
「お前をコイチの旦那のところに連れていけばたんまりと金が貰えるんだ。お前が仲間を殺してくれて助かったぜ! これで取り分が増えたからな、ハハッ! 」
こいつらは最低のクズだ。こんな奴らに好きにされてたまるか! 僕はリュックをさりげなく背中から地面に下ろした。パニックに陥って忘れていたがリュックの中には拳銃がある!それさえ手にすることが出来れば形勢を再び逆転出来るのだ。どうにかして拳銃を気付かれないように取り出さなければならない。だがその時だった。
「指の一本や二本は覚悟してもらうぜ! 」
二人の男は腰にぶら下げていた小さなナイフを手にしてそう言いながら笑った。こんな奴らに指を落とされるなんてたまったものではない、早く拳銃を取り出さなければ! そう思った時だった。
「クゥーン! 」
怒ったシェリルが一人の男の顔に飛びかかった。そして男の顔を覆うように抱きつくとその鋭い爪で男の頬の辺りを切り裂いた。
「ぎゃぁーっ! 」
男が悲鳴を上げる。だが傷が浅かったのかその男は倒れなかった。そしてあろうことかその男は左手で顔にへばりついているシェリルを引き剥がし右手に持ったナイフをシェリルに斬りつけたのだ!
「キュゥーン! 」
シェリルは下腹部の辺りから血を流し悲鳴を上げながら地面に落ちた。
「シェリル! 」
地面に落ちたシェリルはぐったりとして動かない。嘘だろ!?




