死なないで!
「シェリルーッ! 」
僕は大声でそう叫んだ。一人ぼっちの僕がここまで頑張れたのはシェリルがいてくれたからこそなのだ。その僕の目の前でシェリルが傷付けられるなんて! 僕の目から一気に涙が溢れ出た。
「この狸はお前のペットか? 俺が鍋にして食ってやるよ! ゲハハハ! 」
そう言って笑うその男を僕は睨みつけた。腸が煮え繰り返るとはこのことだ。この男を殺してやる! 僕の頭の中には猛烈な殺意が芽生えた。
「そう落ち込むなよ! お前も近いうちにこの狸の元へ行けるんだからよ! 」
その男の言う通り死んでシェリルに会えるのであればあの世も悪くはないかもしれない。だがその前に僕にはどうしてもやらなければいけないことがあった。目の前にいるシェリルを傷付けたこの男を殺すことだ。僕はその男が勝ち誇って油断している隙に地面に下ろしたリュックの中を弄った。すると冷たい鉄の塊が指先に触れる。あった! この形はミールの蔵で盗んだ銃身の長い回転式の大型拳銃だ!
「おいっ! このガキ、リュックサックの中から何か取り出そうとしているぞ! 」
「なんだと! 」
シェリルを傷付けた男のやや後方にいたもう一人の男に僕の行動は気付かれてしまった。だがもう遅いんだよ!
「死ねっ! このクズ野郎! 」
僕はそう叫ぶと両手で構えた銃をシェリルを切りつけた男に向けた。男の顔色が変わり今までのニタニタ顔が恐怖で引きつった顔に変わる。その男はシェリルを顔から引き剥がす時に盾を地面に放り出してしまったので僕の銃から身を守るものは何も持っていないのだ。爽快だぜ、そんな表情をしてくれるなんて!
「ズドーン! 」
「ぶへぇっ! 」
その男は銃弾を腹部に撃ち込まれ吹っ飛んだ。発砲の瞬間物凄く大きな火花が目の前で散る。腕への衝撃も物凄い。至近距離で撃たれたその男は地面に横たわり両手で撃たれた腹を押さえて転げ回っている。そうやって苦しんで死ぬがいい。そして僕はもう一人の男にも銃口を向けた。
「ちょ、ちょっとアンタ! 待ってくれ! 降伏する! 助けてくれ! 」
「何を今更言っている。死ね。」
命乞いをする最後の男もついさっきまでは形勢が有利と考えていたようで盾はもう手にしていなかった。持っているのはナイフだけだったがそれを地面に放り投げて両腕を胸の前に突き出し掌を広げて戦う意思のないことを僕に示した。だが今更そんなことされてもどうなの? って感じだ。僕は躊躇うことなく引き金を引いた。大きな銃声がして火花が散る。その男は地面に倒れてピクリとも動かなくなった。おそらく即死だろう。僕は視線を移し先に撃った男を見た。するとその男ももう今は動かなくなっている。どうやら決着はついたようだ。二人で仲良く地獄に落ちるがいい。
「シェリル! 」
僕は銃をリュックにしまうと倒れているシェリルのところに駆け寄った。シェリルは下腹部から尻尾の付け根にかけて切りつけられたらしく激しく出血している。可愛い尻尾が血に染まり今にもちぎれそうだ。その痛々しい姿を見ると僕の目からまた涙が溢れ出てきた。
「……シ、シェリル。」
僕は泣きながら震える声でそう言った。あの可愛いシェリルがこんな姿になってしまうなんて。
「ク、クゥ……ン。」
シェリルが僅かに目を開けて僕の方をちらっと見た。僕と目が合う。僕はもう涙が止まらなかった。
「……シ、シェリル。」
僕は震える手でシェリルの頭を撫でた。その瞬間シェリルが心なしか微笑んだような気がする。でも彼女はもう息をするのも辛そうだ。そして次の瞬間彼女は目を閉じると動かなくなった。僕は思わず彼女の身体を抱きかかえて叫んだ。
「シェリルーッ! 」
彼女の顔は静かで落ち着いているように見える。今にも目を開けて僕に甘えた調子で「クゥ〜ン。」と鳴いて頬をペロペロと舐めてくれそうだ。でも彼女は動かない。さっきまで喘ぎながらもしていた呼吸も完全に止まってしまった。
「う、嘘だろ? 目を開けてくれよ、シェリル? 」
僕は彼女の頭を撫でながら優しくそう語りかけた。でも彼女は何の反応もしてくれない。僕は今度は大声で叫んだ。
「シェリルーッ! 起きろっーっ! 」
耳元で大声で叫んでも彼女は何の反応もしてくれなかった。




