凶次現る
喫茶ボロンゴでは、英雄とボロンゴ少年団が一緒になりヒーロー特番を見ていた。
「クッ! 負けるなゴッデス!」
アベル少年が椅子から立ち上がり液晶画面に向かい叫ぶ。
テレビの向こう側では、爆走戦士ゴッデスが敵魔神の阿修羅サイボーグにより窮地に陥っていた。
「ゴッデス! 今だ! ファイナルインパクトだっ!」
ゲンター少年の叫びが届いたのか、画面の先でゴッデスが必殺技を放つ。
「「いけーっ! 」」
そして、見事にファイナルインパクトが炸裂し阿修羅サイボーグは大爆発を起こした。
「ふふ、皆大はしゃぎだな」
英雄が少年達を見て笑う。
「マリーちゃんはつまらなそうじゃないかい、英雄君?」
おやっさんがマリーを見ながら聞いた。
「マリーは次の魔転少女ミラクルリリィが楽しみなんだぜ、おっちゃん!」
ゲンター少年がクリームソーダで叫び疲れた喉を潤しながら言った。
「そうなの! 私もリリィちゃんみたいに可愛い洋服を着て悪魔達と戦うんだから!」
蹴りやパンチを繰り出しながら元気に答えたマリー少女。
「はは、マリーちゃんはヒーローよりヒロイン番組かい」
おっちゃんが楽しそうに笑う。
その時、来客を知らせるベルがカランカラン、と鳴った。
「お、いらっしゃい!」
おやっさんが入店した来客を迎えた、しかしその男性客はなかなか店に入らず店内を何度も見渡す。
「この世界にあわない店だな‥‥」
そう言って、英雄達と離れたカウンター席へと座る。
「注文が決まったら声を掛けてくれるかい」
おやっさんはそう言ってメニュー表を差し出した。
男性客は一頻りメニューを見ると、メニュー表を閉じた。
「コーヒーとフレンチトーストを頼む、コーヒーはブラックで」
男性客の注文におやっさんが返事をして調理に取り掛かる。
待つ間、時間を持て余した男性客がふとテレビに目を向けた。
そこには魔転少女リリィが映し出されていた。
「正義の味方‥‥か」
自虐的な笑みを浮かべ、テレビから英雄達の側へと目線を向ける。
そこには、一緒になってテレビにかじりつき応援をする四人がいる。
「‥‥」
凶次は黙って英雄を見詰めた。
まるで品定めをするかの様に。




