ミリオン
シャイニングレイと言う名前が決まり、その後は喫茶ボロンゴでヒーロー番組の視聴会をした後、チビッ子達は帰宅した。
チビッ子達の食い散らかした食器の皿洗いの手伝いを終わらせた英雄は、その足で喫茶ボロンゴの裏にある倉庫に来ていた。
「いつ見ても素晴らしい‥」
目の前には、ヒーロー三種の神器の一つ[バイク]があった。
バイクの外装だが、ブラックメタリックの鈍い光沢の滑らかな曲線の中に所々に鋭く光るエッジの立つ部分が存在感を一層引き立てる。
空気抵抗を抑える為のフォルムで、カウルサイド部分のウィングは空気抵抗の力を生かし、更なるスピードを与えてくれるであろう。
エンジンは、従来のスーパーチャージャーを遥かに上回るものが積んである、恐らく神様の配慮であろう。
因みに、ヒーローあるあるのご都合主義だろうが、バイクのエネルギー源は魔力で、MP1で十キロメートル走るらしい。
「ガス欠は起きなそうだなぁ‥」
MPが999.999ある英雄にとって、この世界で最高の乗り物である。
勿論、オーパーツ扱いである。
「早くミリオンに乗ってヒーローとして活躍したいぜ!」
英雄によりミリオンと名付けられたバイクは、その言葉に喜びを表しているかの様な雰囲気を醸し出していた。
「よし、洗車してワックスかけなきゃなっ!」
鼻唄交じりでミリオンを押して外の洗車スペースへと向かう。
英雄はまだ知らない。
このミリオン、只のバイクでは無く成長するバイクだと言うことを。
そして、ミリオンは英雄の変身の[第一形態]と同じく、まだ[第一形態]だと言う事を。
ミリオンがその真の姿を見せるのはまだ先の話である。




