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誰かの為のエスペランサ  作者: ヒラのりんご飴
プロローグ 孤児院編
1/33

孤児院の日々

「剣を初めて持ったのはいつ?」


覚えてないから分かんないな。でもきっと最初は単純な理由な気がする、かっこよかったからみたいな。


「じゃあ何で今剣を握っているの?」


それは大切な人を守る為…いや、助ける為かな。


「助ける?守るじゃなくて?」


うん、どうしても助けなくちゃいけない人達がいるんだ。だから俺は剣を振るし振らなくちゃいけないんだ。


そう…俺が守れなかったから、必ず助けなくちゃいけない。


家族を…レイラを…


思い出すだけで心が灼ける、怒りが再燃する。


あの四年前のあの日…全部が狂ったんだ…





山の向こうにある街から遠く離れた場所に、小さな孤児院があった。周囲には広大な野原が広がり、夏の終わりを告げる風が吹き抜けていく。その片隅にある畑で、一人の少年が黙々と作業を続けていた。


銀色の髪が夕陽に揺られ、まるで光を纏っているかのように輝いている。フィルは作業の手を止め、収穫物を見渡した。


(今年は上出来だな…干し肉の在庫もあるし、冬は大丈夫そうだ)


しかし、すぐに別の心配事が頭をよぎる。フィルは空を見上げた。オレンジ色に染まった雲が流れていく。その色は、ある大切な人の髪を思い出させた。


(レイラへのプレゼント、まだ決められてないんだよな…)


四日後に控えた大切な人の誕生日。今年は珍しく収入も良かったから、いつもより良いものを、と考えているうちに時間だけが過ぎていった。


レイラは孤児院の最年長にして彼の命の恩人だ。彼女がいなければ、今の彼はいない。そんな人へのプレゼントがまだ決められずにいた。


「フィル兄?何ぼうっとしてんだ?」


そんな風に頭を抱えてると後ろから声が聞こえた。ふと後ろを振り向くとダークブロンドの髪をバンダナで纏めた、弟分のライがいた。


「ん?ちょっと考えことをしていただけだよ」


「どうせレイラ姉の誕生日のことだろ?俺は別に買ってないけど」


「なんでだよ〜レイラのこと嫌いか?」


そんなわけないと知りながらも冗談混じりにフィルは言った。


「んな訳ないだろ、レイラ姉が素直に年下からのプレゼントを受け取ってくれるわけないからな」


「そりゃあ、お前らに支えられてるからな。それだけで十分なんだよ」


(本当に十分なんだよなぁ、レイラもそうだし俺もそうだけど)


「それは俺もだろ…大人になって自分一人で稼げる様になったらちゃんと親孝行するからな」


「親って言われるほど何かした憶えは無いしそんな年齢離れてないじゃん」


「はぁ〜まぁ良いから早く戻ろうぜ?レイラ姉が作ってくれた夜ご飯が冷めちまう」


「おう」


まぁ正直こんなに慕われて悪い気はしないけど、もし本当に親孝行をしてくれるのなら…みんなでずっと暮らしていたいな。





▲▽▲▽▲▽▲




食堂に着くと年少組はすでに席についていた。


「待たせて悪かったな、レトス、ルーチェ」


「別に大して待ってませんよ」「お腹減ったー!」


「ルーチェは本当に可愛いなぁ」


フィル達を待っていたのは薄水色の髪をした兄弟の兄のレトスと妹のルーチェ。レトスが10歳、ルーチェが8歳でまだまだ二人共子供だけど魔法まで使えて将来有望!


「フィルに撫でられて幸せ〜」


「本当可愛いなぁ〜ルーチェ」


フィルとルーチェを置いといライはもう1人の家族を探す。


「レトス、レイラ姉は何処だ?」


「ん〜料理作ってるけどそろそろ…」


”ドンっ“と扉が勢いよく開けられる。現れたのは金木犀の様なオレンジ色の髪をした少女…レイラだった。


「仲良しなのはいいけどみんな席について!」


「「はーい」」


「返事よし!」


そそくさみんなが座る中、フィルはレイラに手を貸す。


「俺も運ぶの手伝うよ」


「ありがとうフィル」


「ぶーフィルとレイラがいい感じな雰囲気出してて許せない…」


横目で何故か嫉妬してるルーチェ、それを見てライは呆れる。


「いい感じな雰囲気ってお前…レトスよぉどんな本読ませてるんだよ」


「よくある恋愛物なはずだけどね、まぁ女の子は成長が早いからね」


「だからこそ、そこら辺しっかりしないとダメだぜ?」


「二人共うるさい」


「「はーい」」


小さい妹を軽くあしらうレトスとライを横目にフィルとレイラは…


「仲良いわね〜あの子達」


「いいことでしょ」


「そうね…あの子達がずっと笑える様に頑張んなくちゃね」


レイラの顔が妙に曇った気がした…きっと昔のことを思い出したのだろう。


「レイラ」


「ごめん、ご飯前に変なこと言って」


「いや…必ずみんなは俺が守るからさ…そんな顔しないでくれよ。俺はレイラにも笑っていて欲しいよ」


その言葉を口にした時、フィルの声には普段には無い強い決意が滲んでいた。レイラの曇った表情が、少しずつ晴れていくのを見て、そっとフィルは胸を撫で下ろす。


「フィル…」


「俺にだけでもいいから相談してくれよ、家族だろ…」


「ありがと」


夕暮れ時の食堂に、家族の温もりが満ちていた。窓の外では、オレンジ色の夕陽が静かに沈んでいく。明日もまた、この場所で、大切な人たちと過ごせることを願いながら。








最悪の日まで後四日

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