偶然と必然
お昼頃、猿田が迎えに来て早々、天明が居ないことを気にしていたので、お姉さんが日本に来たからお迎えに行ってるよと伝えると、猿田はやけに食いついてきた
「まじで?!お姉さんが来てんの?」
「そ!だから今日から師匠は暫く泊まりじゃないんだって〜」
「へぇ〜天明さんのお姉さんねぇ?会ってみたいわ」
「師匠のお姉さんってどんな人なんだろうね?…てか強ちゃんは会ったことないの?」
「ないなぁ、お姉さんがいる事は知ってたけど中国の会社経営してるらしくて、中々日本には来れないって言ってたからさ」
「へぇー?!そうなんだ?じゃあ、会えたらいいね!」
そうだなと2人で話しながら、ネストへ車を走らせれば、信号待ちをしている間に大きな看板が目に入った
美味しそうな色とりどりのアイスがデカデカと載っており、マジックアイスと書いてあるそれは今の季節にぴったりだ。
運転する猿田にあれ美味しそうと言えば、近くだから寄っていくか?と返事が来たので喜んで頷いた。
猿田が奢ってくれるらしく、ありがたく猿田のお言葉に甘える事にした。
駐車場に車を停めて、ショッピングモールの中に入れば、夏休みだからというのもあってそれはもう、人が多い。
見渡す限り、人人人…あまり人混みは好きじゃないので、ここまで多いと少しだけテンションが下がってしまう
「人多いなぁ…」
「確かにすごいな?あ、とりあえずマジックアイスは2階だぞ」
入ってすぐ、猿田はフロアガイドを確認しマジックアイスと書かれたアイス屋さんを探す猿田
無駄のない猿田の動きに感心していれば、猿田はアイス屋さんを見つけた様で、こっちと私を手招きした
逸れない様に猿田の後ろにピタリと着いて行くと、エスカレーターに乗って2階へと登った。
そのまま、2階へ行くとマジックアイスと書かれたアイス屋さんへと向かうと、お店の前は人だかりができていた。
「うわぁ、すんごい並んでるぅ〜」
「なんか、最近ここ流行ってるらしいぞ?」
「へぇ??なんで知ってんの?」
「SNSぅ〜!」
SNSで検索したら人気らしいよと、猿田はスマホ画面を見せてきた
どれどれ、とスマホを覗けばカラフルな文字が目に入った
【この夏、マジックアイスはどうですか?】
好きな種類を選んで、最後にぱちぱちハジけるキャンディーを乗せて召し上がれ、と書かれた広告は確かにどれも美味しそうだ
口コミも結構評判が良く、星マークも4つ
「へぇ?凄い人気じゃん?!」
「だろー?お前どれ選ぶ?」
1番後ろの列に並べば、近くに置かれたメニュー表をまじまじと見つめている猿田
同じ様に私もメニューを覗けば、青と白が混ざったソーダーアイスが目に入った。
色味も可愛く、味もソーダーとバニラで夏らしくてさっぱりして甘い、迷う事なくこれがいいと選んだ
「ん〜、じゃあ俺はベリーベリーチョコにするか」
猿田が選んだのは、ストロベリーとブルーベリー、そしてチョコの3色アイス
これにポッピングキャンディを添えたら、更に美味しくなりそうだ
「それにしても、こりゃ結構並ぶなぁ?」
猿田の言葉にチラリと周りを見れば、お店の入り口から、隣のクレープ屋さんまで長者の列
人気店なのだから、仕方がないのだけれど順番が来るまで、ここでずっと待っているのも正直退屈だ
「ねぇ強ちゃん。私ちょっとトイレに行って来てもいい?」
「え?あ〜いいよいいよ。まだ結構時間かかりそうだし、今の内に行って来な」
「ありがと〜!ちょっと待っててね!」
「迷子になるなよぉ?」
「ならなーい!」
猿田の言うように、まだまだお店の入り口まで入るには、未だに時間がかかるだろう
先ほどからちょっとだけ、お手洗いに行きたかったのもあり、今の内に済ませておこうと伝えれば猿田は待ってるから言って来いと。
とりあえず、順番は猿田に任せて私はお手洗いを目指した。
後ろから迷子になるなよと言われたけれど、流石にここで迷子になる事はない
このショッピングモールは結構大きいけれど、ちゃんと所々にタッチパネルの案内図もあるのだから、もしもの時はあれを頼れば何とかなるのだ
キョロキョロと上を見渡し、トイレのマークを探せば、赤と青の男女のマークが目に入った
小走りで目的地へと向かえば、なんとトイレでも並んでおり、またここでも並ぶのかとうんざり。
しかし、文句を言っても仕方がないので、大人しく順番が来るまで待つ事にした。
トイレから出て、洗った手をハンカチで拭いなが歩けば、うっかり手元ばかりを見ていたせいで前から来た人と正面からぶつかってしまい少しだけよろけた。
その衝撃で持っていたハンカチを離してしまい、床に落ちていく様を目で追いながら声を上げた
「あぁー!」
「あ!ごめんなさい」
床に落ちたハンカチを拾おうと手を伸ばせば可愛らしい声と共に、少年がハンカチを拾ってくれた。
私が前を見ていないせいで、ぶつかったのにも関わらず、相手の少年は怒りもせずハンカチに着いた埃を払うと、どうぞと手渡してくれた
小学生くらいのまだ幼い少年は、白髪の髪に赤い瞳をしており、どこか天明と色味が似ていた
顔もあどけなく、やけに可愛らしい少年についつい頬が緩んでしまうのはしょうがない
「ありがとう〜!私こそごめんね?よそ見してて…怪我してない?」
明らかに、私よりもまだ背の低い少年の方が、ぶつかった衝撃が大きかったはずだ。
どこか怪我をしていないかと少年の心配をしていれば、少年はどこも怪我していないよと両手を広げ、可愛らしい笑みを浮かべた
「僕は大丈夫だよ、でもお姉さんのハンカチ…汚しちゃった」
「あー!いいのいいの、私が落としたのが悪いんだから、こんなの気にしないでね」
「お姉さん優しいね!…あ、じゃあ僕行かないと」
「あ、うん。ありがとうね〜」
そう言って少年は、またねと手を振ると人混みの中へと走っていった
パタパタと駆けていく少年がなんだか可愛くて私も、またねと手を振り返した。
けれど、考えてみればまたねとはおかしな話だ
バイバイなら分かるけれど、なぜまたねなのだろうか?
首を傾げて不思議に思っていれば、ポケットの中のスマホが鳴り、見れば猿田から
「ごめん強ちゃん!今からそっち行くー!」




