エピローグ
本日は快晴。絶好の卒業式日和だ。
「うええええ……ミチルぅぅ……」
蓮ちゃんが大号泣なう。やめてくれ、私もつられ泣くから。
「大丈夫だよ、蓮ちゃん!学校で会えなくなっても、城で会えるから!」
「そうですわね!陛下をお支えできるよう、わたくしも全力で頑張りますわ!」
「蓮ちゃん、シー!!それはトップシークレットだから!!」
そう。あれは悪魔王コンタクトをぶちのめした後……。魔族初の選挙が行われた。色々文句を言う種族の長をぶちのめしまくり、ついに鈴木を魔王から解放できる日が来たのだ。
「ジーク眼鏡!」
「ジーク眼鏡!」
「ジーク眼鏡!」
新魔王選挙当日。
「…………あの人達は何をしてるわけ?」
選挙会場である魔王城前で眼鏡の集団が、ジーク眼鏡と叫びながらビラを配っていた。
「選挙活動ですね。ミチル様(ジーク眼鏡)を讃える会ですよ」
秘書眼鏡が意味不明なことをのたまった。嫌な予感がして
眼鏡集団の前に出たら、なんか土下座された。いや、拝まれている。
「ミチル様!応援してます!」
「ミチル様、お会いできて光栄です!」
「ミチル様、握手してください!!」
ビラを確認したかっただけなのだが、眼鏡に囲まれ歓迎されてしまった。
「あ、あばばばばば」
「こら、俺の『お嫁さん』が困っているだろう。俺の!お嫁さん!が!」
なんでそこ強調した。私と鈴木は約束通りとりあえず籍を入れたので、嫁には違いない。結婚生活は大学卒業後にしてほしいとお願いして、書類上の結婚となっている。それでも鈴木は満足らしく、事あるごとに嫁を強調してくる。
「はっ!申し訳ございません!」
「そもそも、私は選挙に立候補した覚えがないけど!?」
確か候補は立候補または推薦……。推薦!?ハッとして鈴木を見る。鈴木はニコニコしてる。
「ミチル様は複数の者から推薦がありました。真生様をはじめ、私を含む四天王や獣人族……かなりの推薦がありましたよ。ミチル様はこの選挙の最有力候補です」
「はああああああ!?」
嫌な予感が止まらない。さ、最有力!?そもそも私はこっちに住んでるわけでもなければ人間………鈴木と結婚してるから!?そ、そんなバカな!!
そして、圧倒的票数をゲットしてしまった私は新魔女王……今までのは毛玉による傀儡政権だったので、真魔女王に就任してしまったのである。ナンテコッタ。どうせ関わるつもりではいたので、最近では開き直っている。なるようにしかならないよ。
陽菜ちんと穂積は有名国立大学に無事合格。穂積は就職する予定だったけど、鈴木とお母さんの説得で進学を選んだ。卒業後は魔王城で働くそうな。ちなみに穂積は栄養士と調理師の資格を取得予定、陽菜ちんは通訳の資格取得を目指している。うちと同じで現在は籍だけ入れて大学卒業後の結婚を予定している。うちと一緒に挙式ってのもありかもしんない。
むっちゃんと蓮ちゃんは服飾系の大学へ。蓮ちゃんは今や魔族のファッションリーダーなんだそうだ。問題児の兄からも解放されて毎日楽しそう。むっちゃんとブランドを立ち上げるそうだ。今後の活躍に期待だね。
むっちゃんとの仲はまだ恋人未満であるものの、たまに見せるむっちゃんの男らしさにキュンとするそうで、陥落は近いと思われる。
アホ部………じゃなかった、兼田はセレブが通うと有名な私立大学の経済学部に進学。瀬羽巣さんと会えなくなるのは寂しいと思っていたら、瀬羽巣さんは兼田グループ代表としてちょくちょく城に来てくれるようになった。しかも、手土産持参で。鈴木を魔族と知っても対応を変えずにいてくれるので、彼は誰より適任だろう。
余談だが、瀬羽巣さんの後任になった兼田の世話係さんはとてもしんどいそうだ。瀬羽巣さんと比較されたらなぁと思う。普通はあんなどこにいても指パッチンで出現したりしないよ。
藤堂はすっかり丸くなり、保父の資格を取るために短大へ進学。穂積の妹から猛アプローチをされまくり、まんざらでもなさそうだが……これまでがこれまでなので穂積の許しが出る日は遠そうだ。
天堂先輩はすっかりヒーローになり、私の配下としては働いている。なんか、天堂先輩のお父さんから泣きながら感謝された。いや……うん。頑張ります。
そういえば、どうして鈴木はすぐに私と新婚生活をしたがらなかったんだと思う?それはね……。
「ミチル、おかえりー!」
「ママン!ただいま!!」
ついにママンと同居できるようになったからなのだ!!まあ、今は城ぐらしなのでひとつ屋根の下といえばそうなんだけど……。私自身が強くなったうえに、鈴木と陽菜ちんいう最強の庇護者を手に入れたのだ。そんな私を害せる者などそうはいない。だから、ママンは帰ってきてくれた。ママンは私のために離れなければならなかったのだ。
「ミチル、卒業おめでとう」
「ママン、ありがとう!!」
なので、鈴木も気を遣ってくれてママンと水入らずで過ごせるこじんまりした部屋まで作ってくれたというか、私が住んでいた部屋を再現してくれた。ママンと穏やかに過ごす時間は言いようも無く幸せだ。
「さて、仕事してくるねー」
「うふふ、ママンも頑張るわー」
ママンも世界中を飛び回って作ったコネを使って仕事を手伝ってくれている。交渉部門でものすごーく優秀であるらしく、秘書眼鏡が大絶賛していた。私としても鼻が高い。
「ミチルちゃん……いや、ミチル様。お迎えにあがりました」
「うう……それやめようよぉ……」
「ふふっ。ミチル様にお仕えできて幸せです。どうか末永くおそばに置いてくださいね」
そう言って笑う鈴木は、とても楽しそうで幸せそうで……ゲームの中の鈴木の何倍も魅力的だった
「望むところよ!一生はなしてやらないからね!!眼鏡があれば何でもできるんだから!」
きっとこれからもたくさん大変なことはあるだろう。でも、皆がいる。サポート眼鏡はこれからも、推しをサポートしていくのだ!!