おいでませ、魔王城です。
猫獣人さん達と話がついたので結界を消してもらおうとした瞬間、結界が壊れた。
「一刀両断!!」
あ、これゲームで聞いたことあるわ。姫宮陽菜の剣スキルの技だわ。どうやら陽菜ちんが結界に気がついて破壊してくれたらしい。流石はチートスキル『全智全能』もちの陽菜ちん。
「ミチル、無事か!?すまない、私はミチルの護衛でもあるというのに…この猫達に手間取ってしまった」
「……………」
猫獣人を『どういうことだ、ゴラァ』と言わんばかりににらみつける。目をそらしつつもリーダー格にゃんこは返事をした。
「その…断られたら人質にしようかと思いましたにゃ。わ、私の独断なんですにゃ!私の命でどうかお許しくださいにゃああああ!!」
「はっ!」
リーダー格のにゃんこが刺そうとしたナイフを、陽菜ちんが木刀で叩き落とした。
「にゃ、にゃにを…」
「ミチルは命での償いなど求めない。先走らずに話を聞け」
「てい」
「にゃっ!?」
リーダー格にゃんこにチョップをした。私は怒ってる。怒ってるけど、それだけ必死だったんだろうなとも思う。そしたら、怒るに怒れなくなった。
「ええと…貴方達は私の子分…つまり『うちの子』です。だから、貴方達をいじめる奴は許しません。自分で自分を傷つけるのもダメです。それだけ守れば、特に制限はしません。わかりましたね」
「は、はいですにゃん…」
「幸い私の友人達に怪我はないようですし、きちんと謝罪するなら今回の件は不問にします」
「申し訳ありませんでしたにゃ…」
「私はかまわん。気にするな」
「なんか事情がありそうだし…陽菜も怪我してないからまぁ…俺も別にいいわ」
二人にも許してもらい、猫獣人達は村へと戻っていった。私に頼るのは最終手段にするとのこと。念のため桔梗にも行ってもらったので、先輩による二次被害も多分大丈夫だろう。
陽菜ちん達に猫獣人を従えた経緯を話しつつ、鈴木の転移魔法で移動した。転移した先は無人の客室かな?今日は直接魔王城内部に転移したらしい。
キョロキョロしていたら、陽菜ちんが楽しげに話しかけてきた。
「流石はミチルだな!」
「完全になりゆきだから。狙ってないから」
「お前、どこに行くつもりなわけ?」
「……将来の夢はまだ模索中だけど、冒険者になるかも。定住すると狙われそうだし、世界中を見て回りたいな」
ママンについて行ったから、どんな国でも生きていける自信があるよ。ぼっち旅の予定だったけど、今なら小文吾と桔梗も来てくれるだろう。きっと楽しい旅になる。
「俺も行きたいな。ミチルちゃんと一緒なら、きっとどこでも楽しいから」
「うん。じゃあ一緒に行こう」
「つまり、婚前旅行か。いいなぁ…晃太、私達も婚前旅行しよう!稼げるようになったら行こう!!」
こんぜん!??
「いやいやいや!ちが、違うから!!鈴木に失礼だから!!そもそも結婚しないから!!」
「な、なんで俺とお前が結婚する前提なんだよ!?」
「………しないのか?」
「しない!」
「ぐうっ!?……ま、まあ先のことはまだわかんねぇけども……」
まんざらでもなさそうな穂積。あれだ。リア充爆発しろ。あれ?鈴木が部屋の隅で拗ねている。そういや、陽菜ちん達には腕輪を渡さないのかな?鈴木に確認したら、そうだったねと二つ腕輪を取り出した。
「急ごしらえだからミチルちゃんのには劣るけど、何かあったら使ってね」
鈴木が陽菜ちんと穂積にお揃いの腕輪を渡した。私のと違い転移なんかの機能はないみたいだけど、急だったし仕方ないよね。
「うおっ、ピッタリになった」
「この腕輪は?」
「ここでの身分証みたいなものかな?人間だからと見下してくる馬鹿にでも使ってね」
魔族とのハーフである鈴木は、何か苦労があるのだろう。黒い笑顔だった。
「お、おう」
「承知した。まあ、ミチルと晃太に仇なす馬鹿は全て私が蹴散らすから問題ない」
陽菜ちんが持っていた木刀が一瞬真剣に見えた。私達につっかかった馬鹿が危ない。意識が強制終了するに違いない。
「姫に仇なす愚か者に遠慮など不要」
小文吾もヤる気だ。もはや私達につっかかった馬鹿の方が危ない。人生まで強制終了しかねない。
「頼もしいね。よろしく頼むよ」
どうやって陽菜ちん達を止めようか悩む私とは逆に、鈴木は陽菜ちん達によろしくしてしまった。す、鈴木ぃぃぃぃぃぃ!??
「うむ!頼まれた!ところで、ミチルの護衛は可愛いな」
「小文吾と申します。よろしくお願いいたします」
「ああ、よろしくな!」
「見た目に反して渋いな」
「ありがとうございます」
「いや、ほめてない…まぁいいか。よろしくな」
小文吾をよしよしする穂積。くるる、とご機嫌な小文吾。なかなか相性がいいらしい。場合によっては小文吾に穂積をフォローしてもらう可能性もある。仲がいい方がいいに決まっている。
「じゃあ、行こうか」
鈴木の案内で魔王城を歩き出したのだった。




