むっちゃんと蓮ちゃん
退屈な授業が終了して、楽しい放課後になった。今日もバイトだ、楽しいなっと。帰りは一緒になるであろう蓮ちゃんに話しかけた。
「蓮ちゃん、バイトまで時間があるから学校を案内しようか?」
「あ、ありがとうございます。ですがむっちゃんが案内してくださるそうですわ。ミチルは昨日からお仕事を始めたばかりですし、わたくしは大丈夫。幸せ過ぎて明日死ぬんじゃないかということ以外は大丈夫ですわ」
穏やかに微笑む蓮ちゃん。それ、大丈夫なの?天堂先輩のせいで不憫な境遇だった蓮ちゃん。まあ、むっちゃんなら大丈夫だろう。気遣いができるイケオネエだもんね。
「任せて、ミチル!アタシが完璧に蓮ちゃんを案内するわ!ああ…それにしても蓮ちゃんってフリルとレースが似合いそう…蓮ちゃん、ゴスロリに興味ない?着てみない?撮影しない??」
むっちゃんの悪癖がでてしまったようだ。陽菜ちんと私が遠い目になる。蓮ちゃんが哀れな着せ替え人形になる未来しか浮かんでこないよ。
「ごすろりとはなんですの?」
ハァハァしているむっちゃんにも引かず、普通に対応する蓮ちゃん。むっちゃんはフリルとレースと可愛いを愛する。ガーリー過ぎるのを好まない私達とは基本的に趣味があわない。私の好みはシンプルでちょっとガーリー。陽菜ちんはシンプルまたは実用重視なボーイッシュなのである。
「こーゆーやつよ」
むっちゃんがスマホに写ったゴスロリ衣装(トルソーに着せたやつ)を見せた。
「まあ!可愛らしいですわ!」
「こんなのとか」
「素敵ですわ!でも、このように愛らしいお洋服、わたくしに似合うかしら」
私的にはちょっと盛りすぎじゃね?という感じの服だけど、蓮ちゃんは気に入ったらしい。そういや、蓮ちゃんはリアルお嬢様服やドレスを着る子だった。
「絶対に似合うわよ!じゃあ、家庭科部に行きましょ!ああん、楽しみだわぁ!」
むっちゃんはクネクネしつつ大喜びだが、本当にいいのだろうか。陽菜ちんが蓮ちゃんに話しかけた。
「本当にいいのか、蓮。私から睦に断ってもいいぞ。睦は心が広いから、断っても関係が悪くなったりしないぞ」
蓮ちゃんは首をかしげた。
「本当に可愛らしいと思ってましてよ。わたくしに可愛らしいものは似合わないと思っていましたから、なるべくシンプルなものを選んでおりましたが…むっちゃんが見立ててくださるならば勇気を出そうと思いますの」
「蓮ちゃん!ああんもう!陽菜とかミチルと違って可愛い!!」
蓮ちゃんにむっちゃんが抱きついた。可愛い可愛いとスリスリしている。むっちゃんめ、さりげなく私と陽菜ちんを落としやがった。まあ、私たちは付き合いが悪い時もあるから仕方ないっちゃ仕方ないけど。蓮ちゃんに抱きつくむっちゃんはセクハラになるのか、友人のじゃれあいになるのか…悩むとこだね。蓮ちゃんは嫌がってないので様子を見ることにした。
そんな中、鈴木が不満げにむっちゃんに反論した。
「むっちゃん、ミチルちゃんは世界一可愛いから訂正して」
そこ!??鈴木、そこはどうでもいいと思う。
「睦、陽菜の方がそいつより可愛い」
穂積、お前もか。真面目な顔してナニ言って…陽菜ちんが喜んでるからいいか。
「訂正してもいいけど…アタシがミチルや陽菜をそういう目で見てるってことにならないかしら?アタシは別にいいケドぉ?」
「「やっぱ訂正しなくていい!!」」
二人は瞬時に発言を撤回した。むっちゃんたら、どういう目で見るおつもりなのだ。やはりむっちゃんの恋愛対象は女性なの?
「撤回することはないだろう。世の女性は全て可愛いものだ」
「「「正解!!」」」
アホ部こと兼田が、まさかの正解をはじきだした。文句のつけどころがない模範解答だった。女子が思わず正解判定を出しちゃうくらいに正しい回答だった。瀬羽巣さんが掃除用具ロッカーをちょっとだけあけてうんうん頷いてる。
「くっ、アタシとしたことが…」
兼田のパーフェクトアンサーにむっちゃんがめっちゃ悔しそうだ。デリカシーで兼田に負けるのは悔しいかも。うちひしがれるむっちゃんの手を、そっと蓮ちゃんが取った。
「むっちゃん、服や可愛い小物を見せてくださる約束でしょう?わたくし、とても楽しみにしていましてよ。皆様、お話に割り込んでごめんあそばせ。参りますわよ、むっちゃん」
「蓮ちゃん、素敵!」
「にゃ、にゃにがですの!?」
蓮ちゃん、可愛い。後でどうだったかよーく聞いとこう。むっちゃんだから恋愛方面に行くかが未知数だけど、少なくとも服なんかの好みは合うみたいだ。
「いい感じだよね」
「うむ。睦があんなに近寄るのは珍しいな」
「…そうなの?」
むっちゃんはわりと誰にでもフレンドリーな感じがするけど…よく考えたら上手く距離を置いてる…かな?ベタベタ抱きついたりはしない。
「おお…」
むっちゃん、もしや…これは後ほど蓮ちゃんによぉく…よぉぉくお話を聞かないといかんね!?た、楽しみ!




