神託の巫女様、シオンとエリスを訪ねる。
ボクはミズマチ・アユミ。二年くらい前にこの世界に召喚された所謂異界人だよ。
色々と紆余曲折を経て神託の巫女なんて呼ばれるようになって、今では大国の重要人物みたいな立場にまで上り詰めました。偉いぞ、ボク。
神様の声が聴けるって話は一応本当。その手段は授かった能力任せのチカラワザだけどね。
そんなボクなんだけど、今、結構厄介な問題を抱えてたりする。その問題はぶっちゃけ神様達の不手際で、その尻拭いみたいな事させられる事になった感じなんだけどね。あいつらマジふざけんな。
問題解決の為に、最近召喚されたボク以外の異界人を集めないといけないんだけど……いやまあ、その異界人達を召喚したのが発端になって問題が起きたんだけど。何なのあの神様達。マジふざけんな。
ともかく、世界じゅうに散っているであろう異界人達の所在を把握して、可能な限り協力を約束したいっていうのが現状。世界じゅうとは言っても、ボクのいる西方大陸内に召喚されたのは確かだと神様達から教えて貰ってはいる。正確な場所までは知らないとかほざきやがったけど。神様達マジふざけんな。
けれどもその異界人の中にボクが勤めている国であるアーヴァタウタ大国と敵対関係にあるヴァスキン帝国で活動してしまっている人もいるっぽくて早速問題発生。しかも敵に回せば一番厄介なタイプの能力を持つ人。どうしてこうなった。神様達マジふざけんな。
それはそれとしてその解決策はまた後で(トモエが)考えるとして、今はすぐにでも接触できるであろう他の異界人に会いに来たところ。リインドの街という冒険者の活躍がなかなか凄い街。この街で冒険者になっている異界人が二人いるらしい。その活躍が大国にまで届いて所在を知る事ができたってわけ。
それを知ったボクは早速転移魔術でリインドの街に到着。どこぞの神様連中と違ってボクは有能だし。判明後即行動。何事も早く動けば成功率は高くなるものだよね。
というわけで、リインドの街の冒険者ギルドに来たわけです。服装は潜入捜査をする時の冒険者スタイルじゃなくて、国での正装、巫女装束。とは言ってもニホンの巫女みたいなのとは違って、どちらかと言えばアラビアンな雰囲気かな? ザ・ミステリアスガール、アユミちゃん。こっちのほうが有名だし、いざって時に権力にモノを言わせるのに都合がいいんだよね。
さて、ギルドに入っての感想だけど……あー、見てるわ見てるわ。全員こっちを注目してるね。まあ、突然国のお偉いさんが来たらそりゃ驚くよね。安心しなさいな皆さん、こっちの用事が滞りなく済んだら何も迷惑はかけないつもりですから。
早速だけど、件の異界人の冒険者二人は今ここにいるのかな? やっぱり受付の人に聞いてみるほうが……と考えていたら、その受付のほうに居た一人の冒険者……いや、衣装を見るに聖術師だね。が、こちらに急ぎ足で歩み寄ってきた。あ、この人前に会った事あるや。確か名前は……。
「巫女様、お久しぶりです」
「フラムさんですか……お久しぶりですね」
彼女は冒険者として活動している聖術師のフラムさんだ。確かランクはBだったかな?
以前ちょっとした事件を解決する為に募った冒険者達の中に参加していた人物だ。『十字槍のフラム』なんてカッコいい呼ばれ方してたから覚えてるんだ。もしそんなに目立つような人じゃなかったら忘れてたかもしれないけど。
「驚きました。貴女のような方がこんな場所に来るなんて……どのような御用件があるのでしょう? 私が力になれる事があれば是非協力させて下さい」
フラムさんはこちらが何も言わずとも協力を申し出て来た。慕われているね、神託の巫女。
「そうですね……ここに来た理由は、神託を授かったからです」
秘技・神託って言っておけば理屈抜きに信頼してくれる作戦!
下調べがあったのは勿論内緒。異界人を探しているのは結果的に神様連中の頼みを聞く事に繋がるので、嘘を言っているわけではない、はず。てゆーかこんな時くらい神様の名を使わせろって話。たまには役立ちやがれ。
「神託……もしかして、エリスさん達の事でしょうか?」
ボクの言葉に反応するフラムさん。おや? 早速有力情報ゲットかな?
「先日の国境砦奪還戦に参加していた冒険者に、特に素晴らしい活躍をした者が二人いると聞き及びました。我が主、シュヘルムヴィアー様より承った神託によれば、その二人は来たる厄災に対抗できる希望となる者であるとの事……私はその二人に会いに来たのです」
とりあえず考えておいたテキトーな神託をそれっぽく伝える。改めて言うけど、神託ってわけじゃない事以外は嘘ではない。てか、あいつがそんなマトモな仕事をするわけがない。何なのあの神様マジふざけんな。
「やはり……さすがは神託の巫女様です。二人は今はこのギルド内にはいないようですが……待っていて下さい。受付に所在を聞いてきますので」
「私も伺いましょう」
二人で早速受付へと向かう。異界人のうち一人はエリスという名前らしい。思ってたよりもニホンジンっぽくないけど、まあ、キラキラネームとか流行ってたくらいだし外国人風の名前だったりしてもありえなくはないかな。マジで外国人だったらびっくりだけど。
どうでもいいけど、自分の事を「私」って呼ぶの、やっぱり違和感あるんだよなぁ。ボクはボクだし。でも王子様が「イメージは大事です」って言って聞かないし。理屈はわかるんだけどさぁ。やっぱり巫女様なんて窮屈。
フラムさんが受付嬢の可愛い猫耳をした獣人族の娘に二人の所在を聞いたところ、どうやら二人は今冒険に出てしまっているとの事。あちゃー、入れ違いになっちゃったか。
「残念ですが、すぐに二人には会えそうにありませんね……如何なさいますか?」
「構いません。元より詳しい話は王城に招いて行うつもりでしたので。受付嬢様、こちらの封書を御二方にお渡しして頂けますか?」
「はい、もちろんです! み、巫女様からの封書……必ず二人にお渡し致します!」
前もって準備しておいた手紙を入れた封筒を受付嬢に渡す。今のように直接会えなくても目的は達成できるわけ。ふふん、やっぱりボクってば有能だね。神様連中も少しはボクを見習いなさいな。
さて、用は済んだしもう帰ってもいいんだけど、とりあえず得られる情報は集めないとね。
「フラムさん、その二人はどのような方々なのかお伺いしても宜しいですか?」
フラムさんは異界人の二人と面識があるみたいだし、せっかくなので色々聞いてみよう。
「はい、まずはエリスさんですが、天才的な信仰魔術の使い手です。聞き及んでいるかと思いますが、奪還戦では自軍の兵士全員に補助魔術を一人で与えてしまうというとんでもない事をしてみせたくらいですから」
確かにその話なら聞いている。十中八九、ルキュシリア神の権能を持っているのだろう。その人物の名がエリスちゃんというわけだ。
「エリスさんは特別なスキルを持っているのですが……それはあまり本人以外の人が語るべきではありませんので、私からはそれ以上は言えませんが……」
「……貴女はそのエリス様がどのようなスキルを持っているのかご存知で?」
「はい、本人から聞きましたので」
「それは、ルキュシリア神の権能なのでは?」
「っ!? ……さ、さすがは巫女様です。そこまでご存知でしたなんて……」
よし、確定。大当たりだねエリスちゃん。
それにしても、権能スキルの事をあんまり言いふらしてほしくないんだけどなぁ。その辺自覚があるといいんだけど。
「では、もう一人の方は?」
「は、はい。シオンさんは感知能力に長けた冒険者です。私も以前二人と共に冒険に出た事がありましたが、その時彼は遠く離れた位置にいる目的の魔物の居場所を突き止めてみせました。彼も稀に見る才能をお持ちのようで」
へえ、その二人と仕事した経験があったのか。もう一人はシオン、ね。彼、って事は男性か。
そしてこちらも聞いていた通り感知能力が目立つみたい。前情報からすればそのシオン君も異界人だと思うけど……。
「ちなみに、そのシオン様はどのようなスキルを持っているのかはご存知で?」
「いえ、彼からはそのような話は聞いておりません」
む、こっちは中々警戒心が強いみたいだね。いい事だけどさ。
こっちは結局どの神様の権能なのか確定できず、か。まあ、エリスちゃんが確定しただけでも収穫だからいいけどね。
「あの……一つ、お伺いしても宜しいですか?」
二人の情報を聞き終えた後、フラムさんが少し遠慮気味に尋ねてきた。
「何でしょうか?」
「もしかして……巫女様も、エリスさんや、帝国にいたマツリという少女のような、神様の権能のスキルをお持ちなのでしょうか?」
フラムさんからの質問は、なんという事でしょう! まさに図星、質問というよりは確認みたいな雰囲気! これほぼ確信してるでしょ?
エリスちゃんの権能をずばり言い当ててみせたのはやり過ぎだったね。やらかした。
自分の顔が引きつっている事は、ベールのおかげで気付かれてはいないだろうけど、どうしたもんかな〜。正直に答えたら後で面倒な事になるかもしれないし、かと言って誤魔化すのも怪しまれかねないし……。
うん、仕方ないか。
「……あまりその話題を出すのは控えて頂けませんか?」
ほとんど「はい、そうですよ」って言ってるようなものだけど、「誰にも言わないでね?」と暗に頼むように答えておく。脅しじゃありませんよ? ボク、そんな怖い事しないよ?
「も、申し訳ございません」
フラムさんは慌てて謝罪してきた。やだなー、そんなに怖がらなくてもいいのに。でも、もしもここから情報が漏れるような事があったら……ねぇ?
「顔を上げて下さい……では、私はそろそろ引き上げる事にします。フラムさん、協力して頂きありがとうございました」
「いえ、こちらこそ……巫女様の力になれて何よりです」
これ以上ボロが出るのも嫌だし、今日はこれくらいにしておこう。や、ボクって有能なんだしそうそうボロなんて出ないけどね? 引き際を見極められるのも有能な人の条件だよね。
そんなこんなで、フラムさんに見送られながら冒険者ギルドを後にする。
さて……帰る前に。
ちょっと急ぎ足で裏路地へ。誰も見ていない事を確認してから、ベールとローブを脱いで時空間魔術でそれらを転移させる。
よし、今のボクは神託の巫女様じゃなく、流れの冒険者アユミちゃん。街中をうろついてても目立ちはしない。少なくとも神託の巫女だとは思われはしないね。
この街の特産品とかって何かな? 美味しい食べ物とかあったら嬉しいんだけどな〜。
ひと仕事終えた後で商店街へ向かい、この街ならではの品物を見て回って、お忍びで堪能してから王城に帰る事にしたアユミちゃんなのでした。




