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お弁当 前編

「…のり弁、ですかね」

「のり弁、なのね…」


俺、汐田渚は意中の人である甘雨天音に「のり弁」の話をしていた。


「どんなのり弁が好きなの?」

「そりゃもちろん。ホカホカご飯におかかが乗ったご飯にのりを一枚乗せて。おかずには白身魚のフライときんぴらごぼう。磯部上げもあるといいですね~。ま、そんな感じの王道が僕は好きですかね」


ちなみに今は放課後。生徒会の仕事もひと段落付いたところで自販機で買ったジュースを飲みながら雑談を交わしていた。


「それは、ご飯は暖かい方がいいのか?」

「ご飯が冷たいのり弁はのり弁じゃないです。そんなものをのり弁と名乗る店など、たかが知れてます」

「そんなものなのか…」


かなり辛辣だが事実そうなのだ。

テイクアウトならば冷めていても仕方ないが、例えば店先ですぐに受け取って食べられる状態なのに冷めたごはんを提供する店は端から出来立てを食べさせる気がないんだ。そんな店の飯なんて不味くて食えたもんじゃない。

それほど、のり弁の状態は大切なことだ。


「逆に会長はどの弁当が好きなんですか?」

「私か?私は…」


ぱっと思い浮かんだ答えを払うように頭を振った。


「…私は何でも好きだぞ。特にこれと言った指定はない」

「本当ですか?」


訝しげに聞くと、顔を赤らめながら


「本当、ですっ!」


と、頬を膨らませてしまった。

ただ、俺の情報網をなめられては困る。会長の好きな弁当の種類ぐらいは容易に調べられる。

にしても、なぜ会長_天音さんは急にそんな子話をし始めたのだろうか…。


意図は少し読めなかったから、俺はその疑問を捨てることにした。



(びっくりした!びっくりした!!)


急に好きな弁当の種類を聞かれ、思わず本当のことを漏らしてしまうところだった。

この話は単なる雑談じゃない。雑談という名目で胃袋をつかんでしまおうという作戦だった。

題して、「好きなお弁当作ってきて胃袋掴むついでに告白の言質ゲッチュ作戦」だ。


しかし、蓋を開けてみたらどうだ。要求されたのは「ホカホカご飯ののり弁当」だ。そんなものをそうやって学校まで持ってくるというのだ。


「まずは、お弁当入れを捜すところだね」


この作戦に気合を入れ、まずはネットサーフィンから始めることにした。



「渚。わかったぞ。会長の好きな弁当」

「本当か?」

「ああ。俺の情報には嘘もなければ誇張もない」


一日後の昼休み。昨日頼んでの今日なら、さすがに少しぐらい誤差はあるだろうと思ったが、毎度毎度制度の良いネタを仕入れてくれる彼を信じて俺は聞くことにした。


「でも、かなり意外だったって言うか…」

「意外?どんな系統の弁当だったんだ?」


「…キャラ弁、だとよ」


「…キャラ弁、なのか?」

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