第2話 「入学試験 II」
「受験番号444番」
現在は筆記試験が終わり実技試験が始まったところだ。
受験者一同は全員闘技場に移動していた。
一つの闘技場で受験者全員が試験を行っても今日中に終わらないので、効率性重視のためにいくつかの闘技場に分けられ実技試験は行われる。
俺も例に漏れず、指定された闘技場に行き実技試験が始まるのを待っていた。
待っていたところまでは良かったんだが…………
「受験番号444番いないのか?」
試験官の大きな声が聞こえる。
受験番号444番は当然俺だ。
こんな不吉な番号忘れるわけがない。
俺の受験番号が呼ばれたということは俺の番が来たということだ。
それは当然理解できる。
できるんだが………………
(なんで俺が一番最初なんだ!?)
試験官が受験番号自体呼ぶのが初めて、それは俺が一番最初の受験者ということを示している。
ちなみに実技試験の内容は受験者同士の模擬戦形式で行われる。
魔法制限はなし。
武器は持込禁止だが、使っていけないということでなく、公平性を保つために学園側が貸し出しを行なっている。
模擬戦形式ということで当然勝敗が決まるわけだが、さして勝敗は関係なく、負けたからといって、減点されるわけでもない。
模擬戦を通して実力を発揮すればそれ相応に加点される仕組みだ。
試験内容自体はさして問題ない。
問題があるのは俺が最初の受験者ということだ。
普通受験番号が小さい順から行われるんじゃないのか?さすがにこの試験会場で444番が一番小さいということはないだろうし。
どんな事も一番最初にやるというの緊張するだろう。
だから、普通大体の人は一番目というのは嫌がるはずた。
例に漏れず俺もそうだ。だが、理由は違う。
俺は自分の番がくるまで他の受験者の模擬戦を見て、自分の番に備えようと考えていた。
なぜなら、俺は同年代の奴らの一般的な実力をまったく知らないからだ。
そんな状態で模擬戦をおこない、一般的な実力とかけ離れた実力を発揮してしまえば、注目されてしまう。
それだけは避けたい。
正体がバレるわけにはいかない俺は注目されることだけは避けなければいけないのだ。
模擬戦を見ることで平均的な加点を得られるラインに調整して試験にのぞもうと思っていた俺からすれば最悪だった。
だが、落ち込んでいる暇はない。現在進行形で俺が呼ばれているわけで、ここで名乗り出なかったら失格扱いされてしまう。
「はい、444番は俺です」
と人混みの中から手を挙げ名乗り出る。俺はそのまま試験官がいる闘技場の中央まで歩いていく。
試験官が俺を確認すると、次に俺の対戦相手の受験番号を大きな声で言う。
「受験番号384番」
そうすると、受験者の人混みが割れて一人の女の子が出てきた。
背中まで伸びる綺麗な金色の髪に、大きな眼に綺麗な鼻。
口元は小さく、全体的にとても整った容姿をしている。下世話な話しになるが、顔だけでなく、胸部には大きな膨らみがあり、腰はキュッとしまり、女性としての理想的な肢体をしていた。
ルクスからしてみれば、「目立つ容姿だな~」ぐらいの感想しかでてこないが、それはそういう事に疎いルクスだからであって、受験者のほとんど、特に男のほとんどは彼女に見惚れていた。
しばらくすると、周りにいる受験者がざわざわし始めた。俺はその様子を見て不思議に思ったが、これから対戦する目の前にいる相手に注目することにする。
(ラッキーだな、これだけ目立つ相手と対戦すれば俺にはあまり注目はこないだろうし。)
ここで試験官が試験の重要事項について説明していく。多分一番最初の試験だからだろう。事前に確認済みだし、俺はほとんど聞き流している。
「両者、武器を使用する者は今のうちに貸し出している武器を取りにいくように。」
と試験官が言うと、目の前にいる彼女は近くにある様々な武器が揃っている貸し出し場へ行く。
彼女を見ていると片手剣を借りるようだ。
そうして、彼女が俺の目の前まで帰ってくる。
試験管は武器を借りてきた彼女を確認し、俺の方に振り返る。
「君は借りなくていいのか?」
不思議そうに聞いてきた。俺は即答で「大丈夫です」と答えた。
ちなみに俺は最初から借りる気はない。
借りる、借りないは個人の自由だ。
なら、俺は借りない。
なぜなら、それが俺の戦闘スタイルだから。
「では、これより実技試験を開始します。他の受験者は観覧席に移動するように」
と試験官が言うと、他の受験者は次々に闘技場に設置してある観覧席に移動した。
すぐに闘技場には俺と対戦相手の彼女、試験官数名だけになった。
闘技場が静けさに包まれる。
「両者構え!」
彼女が剣を構える。
基本に則った忠実でしっかりとした構えだ。
一方の俺はというと何も構えず、自然体のままだ。
試験官が両者を一瞥し、試験開始の合図を叫ぶ。
「始め!!」
とうとう俺の実技試験が始まった。