第1話 「入学試験Ⅰ」
回想終了。
まあ、要約するとボスは俺に人として成長するために学園に通えと言ってきた。
ルクスは物理的には強いが、人としてはまだまだ未熟。
いろんな経験して、たくさん学べ。
それがボスが俺に望むことらしい。
正直、個人的には今更学園に通うことには少し抵抗があるが、ボスが言うのなら俺に必要な事なんだろう前向きに考え、気持ちを切り替える。
そう、切り替えなければならない。
何故ならこれから入学試験があるからだ。
ボスが俺に急遽伝えてきたのも入学試験の日程によるところが大きい。
ボスは入学試験がもっと遅くあると思っていたらしいが、気づけば入学試験は一週間後に近づいていた。
ボスに言われた日から準備や移動時間などもあり、ゆっくりしている場合なんかなく、休息日もあったものではなかった。
慌ただしい一週間が過ぎ、今の状態に至るというわけだ。
(学園に通うことはもう決定事項だ。これで試験に落ちて学園に通えませんなんてなったら、ボスに合わせる顔がない)
俺は気持ちを引き締めて、門を通り敷地内に入って行った。
◇
門の前に立っている時から受験生の姿はちらほら見られたが、敷地内に入ると数多くの受験生の姿が見られる。
高価そうな衣服を纏っている貴族も見られ、中には亜人の姿まで見られた。
ここ、セントラム王国は人族の国家ではあるが、他種族の入国を禁止しているわけではない。
まあ、魔族は例外だが。
幼い頃から災厄に所属しており、幼少期はずっと訓練の日々だった。
十二歳超える頃から任務を任せて貰えるようになり、そんな人生を歩んできて現在は十六歳。
同年代との関わりもなく生きてきた。
だから、自分と同年代の人が沢山いる光景に少しばかり目を見開く。
(今更だけど、こうして任務以外で国に来るのも初めてだな。いや、これも任務なのか?まあ、よく分からないけど、同い年の連中と関わるのも初めてだ。少しだけ学園生活が不安になってきた…………)
俺は受付を行うために会場本部へと向かう。
受付で受験番号を発行して貰うからだ。
今更だが、俺は災厄ではあるが、顔バレはしていない。
まあ、新参者というのがバレていない大きな理由だと思っている。
だから、安心して会場本部に向かうが、問題は別のところにあった。
(……見られている?)
そう、周りの人達から異様に見られているのだ。
目を向けなくても、気配で分かる。
いや、流石にこれだけの目を向けられれば、意識しなくても嫌でも分かるか。
正直見られている理由はさっぱり分からないのだが、気にしていても仕方ないので会場本部まで急ぐことにする。
会場本部では学園の制服を着た人達が対応していた。
おそらくは在校生だろう。俺も列に並び、自分の番になるのを待つことにする。
数分で俺の番になる。受験番号を発行して貰おうとするが相手はポカーンと口を開けて固まっている。
どうしたのか?俺はその姿を見て訝しむが、ある一つの可能性に思い至った。
(まさか、俺の正体に気づいているのか!?…………いや、しかし俺の顔は指名手配はされてなくて世間にばれていないはず。で、でもこの様子は明らかにおかしい。)
正直俺は内心パニック状態だった。
どうしようかと頭を必死に回していると――――――
「す、すみません!受験番号の発行ですね?」
と顔を少し赤らめながら、対応し始めた。
(ヒヤヒヤした……)
その後は淡々と対応してくれて、バレていないことを悟る。
なぜか、依然と顔を赤くしたままだが。
そして、受験番号が発行し終わり、列から出ようとした時に「頑張ってください!」と声を掛けられる。
少しびくんとしてしまったが、何事もなかったように振り向き、できるだけ愛想よく「ありがとう」と伝えた。
初めての同年代との会話としてはなかなかいい感じじゃないか?と少しコミュニケーションに自信がなかった俺としては嬉しい。
更に顔を真っ赤にしているが、なんでなんだろうか?
まあ、俺には関係ないか。
そう考えながら校舎内に入ろうと歩き始める。
初めての同年代との会話に成功したこととバレていなかったことで少し気分が上がるのを感じる。
最初の試験は筆記試験。次に実技試験。
俺は指定された試験会場に行こうと自分の受験番号を確認する。
受験番号は444番。受験番号で指定された場所へ行くため、校舎内に入っていった。
◇
(……意外と簡単だったな)
現在はちょうど筆記試験が終了した時刻だ。
二時間にも渡る長い試験が終わり、室内の緊張した空気が霧散していく。
それはルクスも同じではあったが、違うとも言えた。
(正直、名門と呼ばれる学園だからかなり難しい問題がでるのかと想像していたけど、一時間も余ったよ)
そう、ルクスは一時間で問題すべてを解き終えて、残りの一時間はボーっとしていた。
だから、厳密には一時間前にはすでに緊張感が霧散していのだ。
試験が終わった後は全員実技試験会場へと移動開始する。
次は時間を待たずして、すぐに実技試験だ。
俺は今回筆記試験よりも実技試験の方が緊張している。
何故なら、力がばれないように闘わなくてはいけないからだ。
正直セーブして闘うことが慣れていない俺からすれば心配が残るが、誤って全力で魔法を行使してしまえば、会場が消えるどころか、受験生全員殺してしまう。
そうならないように慎重にかからなければいけない。
そんな事を考えながら試験会場までの道をゆっくりと進んで行くのだった。




