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第10話 「偶然」

容姿を表現する時は三人称視点です。

登場人物が思っていることではありません。


 

「本日はここまで。明日から本格的に授業が始まる予定なので、みなそのつもりで。」


 教師が話し終えて教室から出ていく。


 クラス全員の自己紹介がおわり、そのまま教師の

 話に移り変わり、たった今おわったところだ。

 初日は入学式がメインで、それ以外に主だった事はない。

 授業が始まるのは明日からになっている。


 教師が出ていったのを機に各人それぞれが

 思いだったことを始める。

 帰りの支度を始める者。近くの人と話し始める者。

 行動を起こさず座っている者。各人様々だ。


(視線を感じる………)


 あと付け加えるならば、俺を見る者達もいる。

 話しかけてはこないがずっと見てくるのだ。

 途中から乱入したこともあるし、やっぱり目立っているのだろうか。


  「お前初日から遅刻するなんてすげぇな」

  「ん?」


  そんな時、急に隣の席の男子から話しかけられた。

 茶髪に茶目。

 身長も普通といったくらいでここセントラム王国ではありふれた容姿をしている。


  「俺はケイヒルだ。平民だから姓はない。よろしくな!」

  「あ、ああ。俺はルクス。俺も同じく平民だ。よろしく。」


 久々に貴族じゃない奴と喋った気がする。

 ここに来てから貴族との関わりが多かったせいか

 ケイヒルと喋るのが少し感慨深い。


  「ん?どうしたんだ?」

  「いや、なんでもないよ」


 いかん、いかん。

 少し感慨に耽りすぎた。

  話している最中なのに少しボーとしすぎた。

  ケイヒルが不思議そうな目を向けてきている。


「ルクス、お前なんで今日遅刻したんだ?」

「……………寝坊」

「ん?聞こえないって」

「だから寝坊だって!」


 恥ずかしいんだから何回も言わせないでほしい。

 寝坊なんて子供じゃあるまいし。

  顔が赤くなっていくのを感じる。


「ぷっ、あっはっは!!」

「なっ!?そこまで笑わなくてもいいだろ!」

 

  恥ずかしさを堪えて言ったのにこいつ笑いやがった。

 確かにこの歳にもなって 寝坊はおかしいことだがそこまで笑わなくたっていいだろ。


「わりわり。いや、だってお前見た目とギャプありすぎだろ」

「ん?なんのことだよ?」

「お前友達に関わりにくそうって言われないか?」

「いや?言われたことないけど」

 

 というか同年代の奴とこうやって話すのも初めてだ。

 言われたことがあるない以前に関わったことがない。


「俺って関わりにくそうか?」

 

 少し一抹の不安を感じて聞いてみる。

 目立たちたくないといっても、三年間一人は

 さすがに嫌だからな。

 

「ああ、関わりにくそうだな。」

「…………どういうところが?」

「んー、まあ率直に言うと見た目。あと、雰囲気だな」

 

 見た目と雰囲気?

 雰囲気に関しては自分じゃよく分からないけど

 容姿は普通だと思うけど………。


 あっ、でも災厄の女性陣からは容姿を褒められたことがあったような、なかったような。

 よく覚えていないけど、容姿に関しての指摘はあった。

 個人的にはどうでもいいことだから聞き流していたが。


「見た目がクールすぎるというか、整いすぎているというか。そのせいで雰囲気にも影響してる。」

「………よく分からない。」

「まあ、心配すんなよ。見た目よりとっつきやすいって分かったしな。」

「ああ…………」


 ケイヒルの話しはよく分からなかったけど、

 こいつがいい奴だってことは分かった。

 話しやすいし、気遣いもできる。

 相手のことを思いやれる奴だ。


「ぷぷ、思いだしたら、また笑いが……」

「思い出さなくていい。というか笑うな」


 前言撤回。

 こいつは話しやすくはあるが、思いやれない奴だ。


「わりーわりー。」

「ったく。ケイヒル、お前が馬鹿笑いするから目立ってるよ、俺達。」


 さっきまでより視線を集めている気がする。

 周りは貴族の子息、令嬢も数多くいる。

 ケイヒルは自重という言葉を知らないのか。


「いや、目立っている理由は俺じゃないと思うけどな」

「じゃあ、どうして?」

「…………俺はお前が鈍感っていうことがよーく分かったよ」

  「…………?」

 

 この俺が鈍感?

 自慢ではないが気配や殺気、いわゆる察知能力には自信がある。

 災厄時代に築いたものだ。

 そこら辺の奴なんかよりは確実に上のはずなんだが。

 

「それより、ルクスよ。」

「なんだ?」

「俺達はこのクラスで良かったと思わないか?」


 神妙な顔でいきなり何を聞いてくると思ったら……。

 

 正直Sクラスに入りたくはなかったが、ここで正直に言うと理由を聞かれる可能性があるため、やめておこう。

 理由を聞かれた場合、返答に困る。


「まあ、一番上のクラスだしな」

「違う!俺が言いたいことはそうじゃないんだ!!」


(な、なんだ!?)


 ケイヒルのあまりの勢いにたじろいでしまう。

 今のケイヒルの気迫は凄まじものがある。

 俺は今まで様々な強者達と戦ってきたが、その誰にも引けを取っていない。


 一体なんだというんだ。少し身構えてしまう。


「俺が言いたいのは…………」

 

(ごくりっ……)

 

「女子が可愛いいってことだよぉぉぉ!!!」

「………………はぁ!?」

「だってそうだろ!このSクラスは名家の令嬢がたくさんいるんだせ?可愛い女子の集まりだろ!!」


  (………こいつは一体何を言っているんだ?)


 あまりの検討違いの返答にさっきとは違う意味でたじろいでしまう。


「ルクス、そんな(つら)してるけど、お前も女に興味あるんだろ?」

「………………」

「別にあっても恥ずかしいことじゃねえよ。性欲があるかぎり異性の興味は尽きないものだぜ。」

 

「俺はお前についていけないよ」


 そう俺はケイヒルに呆れたように言う。

 だが、俺はここで一考し直す。

 俺はケイヒルを異常って決めつけているが、

 もしかしたらこれが同年代の一般的な会話なのか?

 

 組織では俺が最年少。

 つまり、俺は歳上としか今まで関わってこなかった。同年代との会話を知らない俺がついていけないだけでこれが当たり前なのか。


 もし、そうなら俺がケイヒルに話を合わせるべきだ。これから三年間学園に通うんだ。

 同年代との会話には慣れておかなくてはいけない。


「…………ああ、可愛いな」

  「なんだよ、ルクスも分かってるじゃねぇか!」

「…………ああ」

「ちなみにどの女子が可愛いい?」


(こ、こいつ。答えにくいこと聞きやがって!)


 しかも、ケイヒルが聞いた瞬間、周りからの圧が増した気がする。

 横目で周りを確認してみると女子同士で話しているものの、ちらりとこちらを伺っている様子をした女子が何人もいる。


 それはそうだろう。

 雑談している途中にこんな話しが聞こえてきたらいい思いはしないだろう。

 まるで女子を格付けしてるみたいだしな。

 それに周りは貴族の令嬢が数多くいるのだ。

 無礼に当たったりしないのか?


 俺はケイヒルに近寄って耳元でこっそりと話す。

 

「おい」

「なんだよ、ルクス。恥ずかしいからって、こんな近寄って答えようとしなくても」

「違うよ!?こんな話して無礼に当たらないのか?」

「無礼?」

「ああ、そうだ。だって周りは貴族が多いだろう」

「ん?ああ、もしかしてルクス、お前読んでないのか?」

「読んでない?何を?」

「学園の入学書だよ。この学園では貴族、平民、種族問わず平等に扱われること。貴族は権力をふりかざすことを固く禁ずるって書いてあるんだよ」

「そ、そうなのか!?」

「ああ」


  なるほど。

 だから、俺達平民がこんな馬鹿騒ぎしていても誰も何も言ってこないのか。

  確かにこの学園は実力主義の一面があると聞いていたがそんな規則があったとは。

 その規則こそが長年優秀な人材を輩出する所以か。


「で?誰なんだよ?」


 ケイヒルの耳元から離れたら話が再開する。

 聞いたのは俺だけど、そんな事関係なく普通に答えたくない。

 初日から可愛いと思っている女子を暴露するとかどんな拷問だ。


 それに俺の場合はそういった事がよく分からない。

 可愛い女子だとか、恋愛だとか。

 分からないというより興味がないと言った方が適切か。


 そういった事とは無縁な世界で生きてきたからな。

 その弊害がここで起きるとは予想外だ。

 

 ずっと黙っている俺を見かねたのかケイヒルが話を切り出してきた。


「ちなみに俺が思う一番可愛い女子はな、やはりあの人しかいないだろう。」

「あの人?」

「ああ!俺調べによる可愛い女子ランキング一位にして、この学園主席のお方!!」

 

  俺調べって………。

 今日が初日だっていうのにいつ調べたんだよ。

  そんなことより、主席ってことは俺より唯一入試での点数が高かった人か。

  ケイヒルとは違う意味で俺も興味がある。


「そう!あの人こそ、四大貴族にして代々続く騎士の家系。麗しき騎士姫、センテカルド家令嬢、アリス・センテカルド様だ!!」

 

(アリス・センテカルド?確かそれって………)


 

 

「私がどうかしましたか?」

 

 その時だった。

 高く、綺麗な澄んだ声が響いたのは。


  腰まで伸びる眩いほどの綺麗な金色の髪。

 海のように深みがある青色の目。

 綺麗に通った鼻筋。

  彼女を形容する言葉があるならば、それは絶世の美女。

 

  俺とケイヒルの目の前に彼女はいた。


 俺は彼女を知っている。というか彼女とは縁がある。

 そのどれもが敵対したもの。


 今回はどうなることやら。


 この展開に俺は一抹の不安を覚えざるおえなかった。




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