閑話 聖なるかいぶつ
聖炎騎士団――浄化の炎と云うその名を、皮肉に感じるようになったのはいつからだろうか。少なくとも最初は、興奮に頬を紅潮させるその新入りと同じように考えていたはずだ。
「配属早々、聖務に就けるなんて光栄です!」
スピネルという名の新人の態度に、苦笑を漏らすのは自分の他にもう一人。一番付き合いの長いそいつとは『聖務』の皮肉についても語り合っている。
――無抵抗な人間を殺す聖なる任務。もう笑うしかない。
そう。抵抗してくれれば、まだ良かったのだ。なのに、怪物と呼ばれるそいつらは、抗うことなく、粛々と命を擲つ。さながら殉教者の如くに、だ。
あれはたまったものではない。
命を懸ける者、であれば戦いを生業としていれば見慣れていることだろう。愛する誰かのため、家族のため、或いは国家そのものや、誇りのため、兵士や騎士は命を懸ける。
けれどアレは、アイツらは違うのだ。
その身に宿す威が危険だから、世界にとって有害かもしれないから、そんな理由で命を『棄て』られるのだ。
それはもう、ヒトの在り様ではない。
なるほど、無彩色のアイツらは怪物なのだろう。
アレは。聖なる怪物だ。
そんなことを思うようになって以来、魂の色彩が濁り始めた。
もう、自分がいつまで『聖務』に耐えられるかわからない。
この国ではありふれた名となった、スピネルの名を持つ少年が、そのまま狂信者となるのか、自分たちのように魂を濁らせていくのかはわからない。
どちらがより幸せなのかも、わからない。
余裕がなければやらないつもりだった閑話です。連投します。




