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八話 努力でも報われないもの

今までの話も含め、サブタイトルに言葉を付け加えました。

宜しくお願いします。


努力でも報われないものがある。


順調に復帰しているようなぼくだけど、それでも乗り越えられないものがある。


ドイツに来て思ったことは、フットボールをする上で必要なことはずば抜けたテクニックでもなく、岩のように強固なフィジカルでもないと言うこと。

バランスの取れたプレイヤーが求められているような気がする。

だからこそ今の自分に出来きないことでもあった。


クラウスコーチは焦ることはないと言ってくれるんだけどね。


~~~


丁度そのような壁を感じていた時、ベルリン近郊のチームによるフットボール大会があった。


「んじゃ、メンバー発表ね」

カールコーチが言った中にぼくの名前はなかった。


Cユニオーレンだから14歳・15歳の選手がいる。

チームの方針はスピードだ。

クラブで積み上げてきたものがぼくはまだ少ない。

14歳になったばかりだし・・・。


でも、選ばれなかったのは悔しかった。


参加チームは・・・


ヘルタ・ベルリン

1.FCウニオン・ベルリン

テニス・ボルシア

テュルキエムシュポル

SCシャロッテンブルク

ベルリーナSC

ボルシア・バンコヴ

ヘルタ03ツェーレンドルフ


8チーム総当りのリーグ戦を2日間でやる大会だ。

ぼくはスタンドから試合を観戦した。



日本にいたときから思っていたことがある。

アマチュアとプロの違い。

控えとトップチームスタメンとの違い。


技術に差はないように思う。

練習を見る限り本当に中学生でも大人でも差はない。

控えとスタメンとの違いなんてこのレベルになるともっとない。


でも、試合になると”何か持っている”選手がピッチに立っている。


確かに体格さや持久力、筋肉のつき方に差があるのでキック力や走力、運動量には差はあるけれど、技術があればゲームメイクのアイディアなどには差を感じない。

そう信じてぼくはフットボールをやり続けて来ている・・・。


でも、試合ではそれだけでは通用しない。


こういうとき、相談できる人が近くにいてくれたらな・・・と思う。

頭に浮かんだのはZAALザールF.C.のカツコだった。

いやいや、あんないい加減な人がナゼ頭に浮かぶ・・・。

頭をブルブル振ってカツコの顔を消す。


試合は早い攻守の切り替えで面白い。

どちらかと言うと守備が少し雑で、攻撃が多彩なチームが多く、点が良く入る。

最近のドイツのスタイルなのかな?


ヘルタは14歳ながらも10番をつけたクラウス中心にパスサッカーをしている。

他のチームはサイドバックからのクロスを多様しているけれど、ヘルタは少し違った。

でも、どのチームも2列目からの飛び出しが上手い。

前線でのライン裏への飛び出しがすごい。


そこにクラウスのようなパサーがいるとゴールへの確率が上がる。

ラルフやゲラルトのような決定力のある選手がいると得点に繋がる。


ぼくにできることは他のみんなも出来る。

やる必要を感じてないからやらないだけのようだ。


1試合目が終わりカールコーチがベンチ外の選手も集めて話しをした。

「みんな、面白いフットボール出来ていると思うよ。

でも、なんでもっと周りを見ない?攻撃が単調なんだよ。

味方のフォローなんか周りを見ることで変わることあるよ」

勝っているからそれほど危機感がない選手は暑さのためかぼーっと聞いている。


「ミズホを選ばなかったのはなぜだと思う?」

「まだこのレベルに達していないから」

グンターのきついお言葉・・・。

「何のレベルが足りないの?」

「スピード・・・かな?」

フリードリヒもはっきりと言う。

「じゃあ、ミズホが持っていておまえら持っていないものは?」

「全部持っているかな~」

ハイノがバッサリ。


ぼくは話の全てがわかっていないのが救いだったのかもしれない。


「おまえら、Bユニオーレンには上がれないね」

マリウスが少しイライラしながら話しを切った。

「今の俺らの試合にアイデアがあったのか?」

ラルフもなんだかイライラしている。

ぼくの名前が聞こえたけれど、ぼくに原因があるのか!?


「う~ん。この世代の1歳の違いは大きいよ。身体も、運動神経も、それ以上に考えてプレイしているか?」

クラウスコーチが話しを引き継ぐ。

「いま、考えてプレイしないとそれ以上の成長はないよ」

なんだか、年代でパッカリふたつに分かれているような雰囲気のチーム事情が見えてきた。


「俺のイメージに反応できたヤツレオとラルフだけだったけど、先輩方はそれでいいのか?」

マリウスの一言に一触即発!

「おまえのパスの精度が低いんだよ」

「周りを走らせて自分が楽しているって、おまえ王様か!?」


なんだか話の内容が見えてきた・・・。


「パス精度が低いのじゃなくて動きが悪いんだよ。それに何にも考えずにただ動いているヤツに言われたくない」

マリウスは話し合いの輪から離れていった。



カールコーチもクラウスコーチも少し困った顔をしていた。



ミーティングとは言えないミーティングが終わり選手はいくつかのグループに分かれた。

ぼくの元にはクラウスコーチが近づいてきた。


「ミズホ。まだこのレベルでプレイさせられない」

日本語で話しかけてきた。

「あなたの良さつぶれる」

ぼくは黙って聞いていた。

「(ぼくの)良いいところ。アイデアたくさんある。でも、いま使えない」

何処が使えないのか聞きたいけれど聞けなかった・・・。


「言葉を覚えろ。フットボーラーとしてここで通用する身体を作れ。・・・自分が最高のフットボールプレイヤーだと言い切れるようになれ」

クラウスコーチはドイツ語で話しをして離れていった。


コーチたちが言いたいことはなんとなくわかる。

今のぼくに必要なのは、言葉の壁、1対1で負けない強さ、集団から抜け出るためのスピード、なにより自信だと思う。

技術やセンスを磨いてきたけれど、根本的な根っこの部分が足りないのだ・・・。


悔しいな・・・。

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