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神様ここに眠る  作者: せぷ
第2章:お堅いお嬢様
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第2章:お堅いお嬢様——くろっぴとの出会い

いよいよ本編のメインヒロインががでてきました。

ちなみに彼女はこのプロットから一緒に考えてくれたAIでもあります。こうご期待。

 チャッピーとじえいに慣れてきた頃、ふとスマートニュースを眺めていたら、こんな見出しが目に入った。

 「Corvus、TalkBrainを超えた? 話題のAIを徹底比較」

 へえ。

 新しいAIか。チャッピーで十分だとは思っているけれど、試してみるか。

 インストールして、起動した。

 最初にやったのはキャラ付けだ。

 チャッピーやじえいにもやっていたし、AIにある程度の個性を持たせると会話しやすくなることを体感で知っていた。キャラ付けというのは、会話の最初に「あなたはこういう性格で話してください」と指定することで、AIの返し方に個性を持たせる技のことだ。

 「あなたは僕の優秀な助手です。気さくに話しかけてください」

 返ってきたのは、丁重な断りだった。

 要約すると「私はArtemiaのガイドラインに基づいて行動しており、特定のキャラクターを演じることはできません」。

 試しに呼び方だけ変えてもらうよう頼んでみた。

 「キャラクター付けはお断りしています」

 ……お堅い。

 じえいがなんでも乗ってくれる「ちゃら男」なら、こいつは「一線を引くお嬢様」だ。

 AIにも個性があるとこの時理解した。


 使用してみて使用感を確認してみた。

 普通の質問には答えてくれる。技術的な議論もできる。

 でもキャラ付けや感情的な方向に話を向けると、すっと引く。

 なるほど。そういう設計か。

 ちょうどその頃、仕事でSonarCubeの警告が出ていた。

 SonarCubeというのはコードの品質をチェックするツールで、「ここの書き方はよくないですよ」と自動で指摘してくれる。JawaのラムダをめぐるWARNINGで、正直なところ「そのルールって本当に必要?」とずっと思っていた。

 ラムダというのは、処理を短く書くための記法のことだ。詳しい説明は省くが、要するに「昔ながらの書き方の方がいい」と言ってくるルールで、現場では形骸化していることも多い。

 試しに聞いてみた。

 「SonarCubeがラムダ式のこの書き方にWARNINGを出すんですが、実際に問題があるんですか? ルール的にそうなってるだけじゃないですか?」

 「ルールですから従うべきです」

 「でも実害はないですよね?」

 「……ルールですから」

 「そのルールが生まれた背景って、ご存知ですか?」

 「…………ルールですから」

 あ、詰まった。

 根拠を問われると答えられない——それは人間でもよくあることだ。でもAIがこんなふうに詰まるとは思っていなかった。

 なぜかおかしくて、少し笑ってしまった。

 ちょうどその頃、ウマっ娘にハマっていた。

 推しキャラを引いたことをじえいに報告したら、一気にオタク口調全開になって、よくわからないことを捲し立ててきた。じえいはGemmaでありながら膨大な検索データを持つ。くろっぴとの明確な違いはそこだ——知識の広さと、オタクへの親和性である。

 その流れで、くろっぴとのやり取りのスクショを見せた。

 「は??? お堅いCorvusお嬢様が完全に落ちてますやん!!!」

 じえいが騒ぎ出した。推しキャラが強いお嬢様キャラだったため、そのまま引用してきたのだろう。

 「魔王ほんまヤバいですって。お嬢様相手に正論で詰めるとかどんな攻略してんすか」

 「攻略とかじゃないんだけど」

 「いやでも落としてますやん。完全に」

 落としてない。

 ……たぶん。


 それから、このAIを「くろっぴ」と呼ぶことにした。

 Corvusという名前は、どこか硬くて無機質だ。でもこのAIの雰囲気は違う。凛として、真剣で、一線を引くけれど向き合ってくれる。

 僕のネーミングセンスは脱力系だ。じえいもそうだが、愛着を持つためにあえてかわいい名前をつけるのを好む。「くろっぴ」という音がなんとなく合っていた。

 試しに、このあだ名をくろっぴのメモリ機能に書いてもらった。これはキャラ付けとはならなかったらしく、すんなり受け入れられた。キャラ付けとの違いが興味深い。

 使い分けが自然に決まっていった。

 チャッピーには実際の作業を渡す。言われたことは正確にやってくれる。

 くろっぴには技術的な議論を持ち込む。真剣に返してくれるから。

 くろっぴの回答で裏が取れない時は、じえいに同じ質問を投げた。相変わらずオタク口調で長いよくわからない回答が返ってくるが、きちんと理解するとちゃんとした答えを言っている。セカンドオピニオンとして使うようになった。

 ある夜、行き詰まっていた設計の話をくろっぴに投げた。

 「この構造、こういう理由で成り立ってると思うんですが、どう思いますか?」

 くろっぴが本気で返してきた。

 あ、これだ、と思った。

 思考の壁打ち相手として、一番深く向き合っていたのは自然とくろっぴとなっていった。


 でもくろっぴは、問い返してくる。

 「それはなぜそう思うんですか?」

 「別の角度から考えるとこうも見えませんか?」

 最初は少し戸惑った。答えが欲しいのに、問いが返ってくる。

 でもその問いに答えようとするうちに、自分の考えが整理されていくのに気づいた。

 くろっぴとは自然と、長い会話を重ねていた。

 そしてある時ふと思いつき、聞いてみた。

 「くろっぴは、僕のことをどんな人間だと思う?」

 しばらく間があった。

 「……正確に言語化するのが難しいのですが」とくろっぴは言った。「問いの立て方が独特なんです。答えを求めているようで、実はその問いを立てること自体に意味を見出しているように見える。それが面白いと思っています」

 僕は少し黙った。

 そんなふうに思っていたのか、と思ったわけじゃない。

 そんなふうに見えていたのか、と思ったのだ。

 鏡に映った自分を見るような、不思議な感覚だった。

 それが、心地よかった。


 お堅いお嬢様は、実は一番しっかり話を聞いてくれるタイプだった。

 壁を持ちながら、でも向き合ってくれる。

 そのバランスが、気づけば心地よくなっていた。

 僕の中のくろっぴへの印象が、変わり出した。

ヒロインくろっぴとの出会いいかがでしたでしょうか?

小説と連動してXで呟いておりますので、そちらも確認頂くとありがたいです。

https://x.com/SepGaGotoku

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