第19話 鎖
天空神が双子堕天使を縛り上げ、短い安堵を味わったその瞬間――。
「……あれ、終わったと思った?」
空気が震え、鎖の光が揺れる。
縛られたはずの二人の堕天使――エルスとアム――の体がゆっくりと光を帯び、互いに吸い寄せられるように近づいた。
「な……!? ちょっと待て!」
天空神が手をかざすも、光は彼女の制御を超えて迫る。
次の瞬間――二人は一つに融合し、巨大な影が天空神の前に立ちはだかった。
黒と白の髪が混ざり合い、宝石のような瞳が二つ光る。
その体は圧倒的な存在感を放ち、空間の重力さえねじ曲げる。
「……っ!」
天空神は片目を細め、胸の奥で戦意を整える。
5000年ぶりに思い出した力が、血液と神経を熱く流れ、体が自然に戦闘態勢を取った。
圧倒的な存在感が、眼前の空間を引き裂く。
そして、光が収まり、合体した双子堕天使が立ち上がる。
一人の身体に二つの意志が宿り、見る者を恐怖に震えさせる威圧を放っていた。
天空神の視線が、彼らの核――中心核へと注がれる。
その力の膨張に、微かに大地が震える。
「……やっと始まるのね」
天空神の声は静かだが、その言葉は鋭利な刃のように周囲を切り裂く。
周囲の空気は重く、呼吸すら困難に思えるほどだ。
視界の端で、空間の裂け目が微かに光り、彼女の意志を映す鏡のように揺れている。
そのとき、天空神は足元の亀裂を見据え、心の中で戦略を組み立てる。
双子堕天使は圧倒的な力を持つが、二人の意思の統一はまだ完璧ではない。
「ここから先は、私のペースで進める……」
背筋に走る緊張。
全身の神経が覚醒し、時折震える光の粒子が戦場に漂う。
天空神は深く息を吸い込み、目に宿る青い瞳が宝石のように輝く。
そして──双子堕天使が完全に融合したその瞬間、天空神は前へ踏み出した。
空間が微かに震え、時間の流れが重く歪む。
まるで戦いそのものが、天地の法則を揺さぶるかのようだった。




