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第11話 開会式

朝の校舎へ続く道を、翔は全力で駆けていた。

 肺が焼けるように痛く、足は重く、視界の端がチカチカする。

 集合時間ギリギリ――いや、もうアウト寸前だ。


 一方、そのすぐ隣。


 同じ速度で走っているはずなのに、天空神は一切息を乱さず、余裕の笑みを浮かべていた。

 前髪すら乱れていない。

 その事実が、翔の焦りをさらに加速させる。


「なんでさっきから余裕なんだよ!?」


 必死に走りながら叫ぶ翔に、天空神はさらっと言った。


「だって私、瞬間移動できるし」


「それを早く言えぇぇぇ!!」


 翔は限界だった。

 膝が笑い、理性も崩壊する。


「お願いします! 僕を連れていってください!!

 土下座しますぅ!!」


 走りながらの土下座宣言という、人生でもそうそうない姿勢。


「えー、じゃあ条件付きね!」


 天空神は楽しそうに言い、背負っていたリュックを差し出す。


「私の荷物重いから、全部もってねー!」


「もうなんでもします!!

 なんでもしますからァァ!!」


 翔は即答だった。

 尊厳よりも集合時間が大事である。


 次の瞬間、天空神のリュックを受け取る。


「……重っ!?

 なんだよこれ!? 石か!?

 てかこのバランスボール何用だよ!!」


 腕が一気に沈む。

 中身の重心が狂っていて、走るたびに体が持っていかれそうになる。


「体育祭だし?

 転がる系競技で活躍するかもしれないじゃん!」


「バランスボールって使い捨て装備じゃねぇんだよ!?

 てか俺、どの競技でも使わないしな!!」


「気にするな!

 細けぇことは気にしないのが神ってもんよ!」


「いやお前ほんとに神なのか!?

 ずっとボケてんじゃねぇか!」


 そんな言い合いをしながらも、二人は必死に走り続け――

 ついに、集合場所である校門をくぐり抜けた。


 


 校庭にはすでにクラスメイトたちが集まっていた。

 応援団のハチマキをきっちり巻き、無駄にテンションの高い男子たち。

 一方で、日陰に集まって雑談している女子たちは、まだのんびりムードだ。


 その中から、翔の友人・中村が手を振ってくる。


「翔〜!

 おせぇよ!

 お前、応援団のくせにギリギリじゃねぇか!」


「いや、それがさ……

 神を連れてきて……」


 言いかけて、翔は我に返った。


「……って、なんで俺こんな説明してんだ!?」


「わかるか!!

 てか誰!?

 かわいいけど誰!?

 その子誰!?」


「え? 宙だけど」


 天空神が当然のように答える。


(まずい……

 認識阻害、薄くなってる……!)


 翔は背中に嫌な汗を感じた。


認識阻害。


それは、神という高貴な存在は普通の人間には見えないがオーラを外すことで神を認識することが出来るようにするものである。

天空神は天界でも普通に可愛いので認識阻害を外してしまったら人間が失神してしまうほどの美貌の持ち主なのだ。だから人間界に来た時から認識阻害をかけている。


朝のドタバタで少々薄れてしまっているのかもしれない。


「はーい!出席点呼しますよー!赤組応援団、整列ー!」


 先生の声が響き、クラスメイトたちが一斉に動き出す。


「うわっ、やばい! 行かなきゃ!」


 翔は慌てて天空神の方を振り返る。


「神様は大人しくしてろよ!?絶対、出場とかしないでくれよな!?」


「えー?でも神的に目立たないと、存在感死ぬよ?」


「黙ってて!!ほんとにお願いだから!!」


「りょーかーい☆……あ、でも徒競走って飛んでもいいの?」


「ダメだよッ!!!!」


 翔の絶叫が校庭に響く。


 そんなやり取りなどお構いなしに、

 整列は進み、音楽が流れ、体育祭の開会式が始まろうとしていた。


 ――この時点で、翔はまだ知らない。


 今日一日が、

 普通の体育祭で終わるはずがないということを。


 こうして、

 神と人間が入り乱れる体育祭が、幕を開けた――。

裏話

天空神は飛べるけど100キロ以上は重量オーバーで飛べなくなるよ!天空神は160cmの48kgらしいです。

ちなみに聖夜神は155cmの43kgです。

翔は178cmの69kgピッタリらしいです。これて成長期なの驚きです。

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