極彩色の女帝 1
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ミューロンちゃんの翻訳と説明が終わり、私達はまたいつかコラボで配信する約束をして解散することとなった。
ヘリに乗って一度『アーカイブ』の拠点へと移動し、挨拶を終えた後私はカルラのテレポートで一度『鬼幻城』に寄った後、リュミエール辺境伯領の屋敷へと戻って来たというわけだ。
「お帰りなさいませ、ご主人様」
「ただいま。あんまり戻らなくてごめんなさいね?」
「いえ、それもご主人様のお役目だと存じておりますので……お茶を淹れてまいります」
「えぇ、お願い」
あ^~~、癒されるんじゃぁ……。
この、メイド喫茶みたいにきゃるるんっ♪ ってした感じじゃなくて、『ご主人様にお仕えする』って感じの主従関係が……良いっ!
別にメイド喫茶をディスってるんじゃないよ? あれはあれでとても楽しいところだし……。
「お待たせしました」
「ありがとう!」
しばらくして、いい香りの湯気が立つ紅茶をメイドから受け取る。おっ、今日はアッサムのミルクティーか。ん~……まろやかで癒されるぅ……。
「ふぅ……」
さて、現状はちょっと困ったことになっちゃったなぁ……。
二冊の本を解読した結果、何者かがエルフとダークエルフの不和を狙っている事実が判明した。そして現在、実際にエルフとダークエルフの仲は、一触即発の状態だ。
もし本当に戦争が起きてしまえば、それは本の作者の狙い通りというわけで───
何より、NPCは死んでしまえば二度と復活しない。『リスポーン機能』は、適応人類に後天的に与えられた機能だからだ。
どちらかの種族が絶滅レベルまで追いつめられてしまったら……たぶん、取り返しのつかないことになる。
できれば戦争自体を止めたいんだけど……無理だよなぁ、きっと。プレイヤー達ももう派閥別れちゃってるし……。
「んで、最悪PvPになる予想もできるけど……いよいよ準備できちゃったのよね」
私はステータスを開き、アビリティ欄を───そしてそこに追加された【妖仙流抜刀術】の文字を眺める。
戦争の機運が高まっているから、急ごしらえたけど十六夜さんの指導の元、ひとまず習得までこぎつけたのだ。
装備はメンテナンス済み。新しいアビリティも習得できた。チャートも構築済み。そして、【韋駄天】のリキャストも回復している。
「そろそろ、行くかぁ……女王蜂」
♢♢♢♢
一旦ログアウトして脳を休ませたのち、心身を整えてもう一度ログイン。改めて装備を確認した。
ちなみに今回は、配信はしない予定だ。そんな余裕もないだろうし、枠の余裕もない。というのも、今回はカメラもマイクも外し、代わりのアクセサリを装備するのだ。
『アナザーライフ』───装備状態で致命ダメージを受けた時、このアクセサリが自動的に消費され、確定でHPが1残るのだ。バトル開始から一度も外さずに装備していた場合にだけ使える効果だが、『一度死なない』ことが確定しているのは破格の性能だ。
それが二つ。
残りの3枠には、私の火力の根底を担う『禍ツ風纏』、装備の切り替えを担う『ドレッシング・エフェクター』、そしてワンチャン飲ませれば一撃必殺の『アモル・ノワール』。これらは私にとって外せない3つだ。
「……よし! カルラ、行こっ!」
「カ───ッ!!」
自分を鼓舞するように声を上げた私と、それに呼応するように高らかに咆哮するカルラ。直後、私とカルラは小さな風を残してその場から消え去った。
一瞬の暗転の後、私が現れたのは広大な樹海の上空。
『極彩色の大樹海』……堕龍・オルトロス型の侵攻によって一部がぽっかり空いてしまっているものの、樹海の威容は健在だ。
「女王蜂は樹海の中心部に居るはず。カルラ、お願いね?」
「コノママツレテイク」
私の肩を掴んでホバリングしていたカルラは、そのままゆっくりと移動を開始する。私を掴んでいる間は遅いのよねぇ……私が重いから?
いやいや、違うはず。今は『冥蟲皇姫』シリーズの装備中だし、そっちが重いはず……!
「っ……!」
そのまま移動し、樹海のあるラインを超えた直後───私を襲ったのは、背筋が凍るような悪寒。そして視界の端で蠢き始める、巨大なオレンジ色の翅。見るのは初めてだけど、噂に聞く通りの威圧。
『フラゴニトロ・ファラエナ——”女帝隷属” が出現!』
「そうよね、ラスボスの前はまず中ボスよね! カルラ、離脱して!」
「ワカッタ……ガンバッテ」
「そっちこそ! 今回の作戦、カルラがかなり重要なんだから!」
翅を打ち、樹木すら折れそうなほどの暴風を撒き散らしながら迫る爆撃蛾を前に、カルラは私の身体を宙に放つ。と同時、私の足から湧き出る黒い泡のようなエフェクトは、【次元的機動】のエフェクトだ。
「【変転】起動!」
「キュルルルルルルッ!」
女王蜂討伐の前哨戦、派手な号砲を上げてやるわよ!
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