店主、いつもの!
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「ふぅ……んん~~……」
一旦ログアウトした私は、VRチェアから降りて身体を伸ばす。
うん、近衛兵全員と一回ずつ決闘した割りには、思ったより疲れてないわね。思考入力とレスポンスのラグが無いから、その分ストレスもないんだろうね。
水分補給でもしようかとキッチンに向かうと、すでにログアウトしていた隼翔がコーヒーを淹れている姿があった。
「あっ、隼翔、私にもちょうだい!」
「……コーヒーじゃ水分補給にならないよ?」
「いいのいいの! こういうのは雰囲気が大事だからね!」
「まったく……」
隼翔は呆れながらも、私の分のコーヒーも淹れてくれる。隼翔の淹れるコーヒー、結構好きなんだよねぇ。
「お姉ちゃん、VRチェアの使用感はどう?」
「もう快調快調! いやぁ、あの素晴らしさを知っちゃうともう戻れなくなっちゃうわね♪︎」
「やっぱり僕も買おうかなぁ」
「いいじゃん、買っちゃいな?」
「『買っちゃえ』で買える金額じゃないからね?」
「そこはあれよ、配信で儲けて貰って……」
「お父さんに怒られるよ?」
「その時はおじいちゃんに味方についてもらうから大丈夫ですー」
「まったく、この姉は……」
呆れた表情の隼翔が差し出したコーヒーを受け取り、一口飲む。ふわりと包み込むような香りと深いコク……うん、美味しい。
でもちょっと苦いから砂糖入れよ。
「さて隼翔、さっきのティターニアちゃんの話……どう思う?」
「どうって……僕はお姉ちゃんほどストーリーに詳しくないからね? スペリオル何個もクリアしてるお姉ちゃんの方が知ってるでしょ」
「あー、それもそうか……」
うーん、でも知れば知るほど謎が深まるんだよねぇ。
確定事項としては、まず『アーサー・ペンドラゴン』が適応人類だということ。これはミューロンちゃんが『彼にバイオファンタジア計画を行った』と言っていたから確定だ。
次に、それが行われたのが数十年……長くても百年前ぐらいだということ。『バイオファンタジア計画』の実験台としてアーサーを利用し、それでもホーエンハイムさんの妻であるキャロルさんを直すに至らなかったのだ。それからさほど時間は経っていない。
一方で、『アーサー・ペンドラゴン』は数百年前にこの国の王の座についていたこと。これも文献が残っているから確定だ。
『アネックス計画』自体はそれぐらい前から始まっていた可能性もあるから、人間の存在はあったかも知れないけど……『バイオファンタジア計画』の歴史は浅いはず。
せいぜい数十年前にこの星に来た人物が、数百年前の文献に載っている……この矛盾は、どうしても説明がつかない。
何より最大の矛盾は、私は堕龍戦の時にアーサーに会っているのだ。
あの超絶美形騎士……カグラ様と知り合いだったから、彼がスペリオル関係の『アーサー・ペンドラゴン』で間違いない。
数百年前の文献、数十年前のバイオファンタジア計画、そして現在を生きる彼の姿……同じ人物がどの時代にも現れるなんて、そんなこと可能?
その時、カグラ様の『ここに来れたのか』という問いに対してアーサーが答えた、『誰かがそれを願ったから』という言葉。
それが何か関係してるんだろうなぁ。
「うーん、同姓同名ってだけでまったくの別人って可能性もあるけど……」
「でもそれだと、モルドレッドがあそこにいる理由が分からないよね?」
「そうなのよねぇ……」
あの時見たアーサーの鎧と、さっき見たモルドレッドの鎧は作りが似ていた。まったくの無関係というわけにはいかないはず。
「タイムリープ説がワンチャン……?」
「それこそ無理じゃない?」
「自分でも無理なこと言ってるって分かってるわよぉ」
だってタイムリープが可能だったら、そもそも『アネックス計画』で地球を捨てるなんて選択にならならはずし、堕龍だって生まれなかった。
あー、ダメだ……頭こんがらがってきた。
「コーヒー飲んだら、ちょっと金蝦蛄行ってくるわ」
「えっ……まだアネファンに潜る気?」
『こいつ正気か?』と言いたげな隼翔。失礼ね本当……ただ日課を消化するだけだって。
考えが煮詰まっちゃってたから、気分転換にはやっぱり身体を動かすのが一番よね!
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