あり得ない予想
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「ラ・ティターニア様。無事『開かずの扉』を開き、中を確認することができました」
「うむ、やはりお主らに任せて正解だったの」
本を回収して戻ってきた私達は、改めてティターニアちゃんの所へと戻ってきて、ライカンさんの口から報告を行った。
片膝をついてそう報告をするライカンさんも、それはそれでなかなか絵になる光景だ。
「して、その部屋には何があったのじゃ?」
「それが……この本が一冊落ちていただけで、他は何もありませんでした」
「ふむ……」
ライカンさんから手渡されたその本を、ティターニアちゃんはペラペラと捲りながら中に目を通す。
その顔は次第に怪訝な表情となり、しばらくページを捲った後、諦めたようにパタンッと音をたてて本を閉じる。
「全く読めぬな。ライカンやカローナでも読めぬか?」
「はい、私の知らない言語で書かれていますね」
「私も読めないわね。せめて見たことがある文字だったらなんとかなったかも知れないけど……」
リアルの方に存在するどの言語にも当てはまらない文字なのだ。このゲームの運営、これのためだけに新しい言語を作り出してない?
「この城の中にあったということは、歴代の王に関係する言語かもしれぬな。ただでさえ長い歴史がある上に、種族もバラバラなのじゃ。我々が知らぬ言葉を使っていてもおかしくはないじゃろう」
「実はそれと似たような本を見つけててね、ほらこれ……浮島にあった遺跡の中で見つけたんだけど」
そう言ってインベントリから取り出した例の本を、ティターニアちゃんに手渡す。
ティターニアちゃんはそれもペラペラと捲り、納得した様子だ。
「確かに、同じ言葉で書かれておるのう……」
「同じ著者が、何らかの目的でこの本を書いて、色んな所に置いたのかもね」
その『何らかの目的』っていうのが全く分からないんだけど……本をわざわざ色々な所に置く理由ってなんだ?
記録として残したかったのか、それとも何らかの主張を広めたかったのか……。どちらにせよ、他にもまだまだ本がありそうな気がするわね。
「解読はできそうかの?」
「私達には無理かも知れないけど、一応宛はあるわよ」
「そうか……うむ。ならばカローナに任せよう。これらの本を解読するのじゃ」
「オッケー、任せて!」
ティターニアちゃんから手渡された2冊の本をインベントリにしまいつつ、サムズアップで答える。
まぁ、頑張るのは私じゃなくてミューロンちゃんなんだけどね。
「ところでティターニアちゃん、『モルドレッド』って名前に心当たり無い?」
「モルドレッド……あぁ、あの扉を守っていた影の騎士の名か。うむ、知らぬ訳ではないのじゃ」
「えっ、マジで?」
これは意外だ。ティターニアちゃんが知ってるってことは、王家に関係する話だと思うし、やっぱり『円卓の騎士』関係のクエストは王家に関係してるってことかな。
……いや、でもちょっと待てよ? 何かおかしくない?
「ティターニアちゃん、モルドレッドについて知ってることを教えて……!」
「う、うむっ」
私の勢いにちょっと引き気味なティターニアちゃんは、天井を見上げるように記憶を辿りつつ、少しずつ言葉を紡ぐ。
「知っていると言っても、あまり詳しくはないのじゃ。出生や生い立ちは一切不明……我が王家に記録が残っているのは、奴がかつての王家に対して謀反を企てた大罪人だったからじゃ」
「謀反を企てた大罪人……?」
「うむ……奴は捕まり、打ち首の刑となった。当然じゃな、王を狙った反乱なぞ極刑以外にありえん」
「まぁ、そうなるわよね……」
「じゃが、興味深い続きがあっての……モルドレッドが極刑となった後、度々『奴の姿を見た』と言う記録が長い間文献に登場するのじゃ」
「それって、どれぐらい前のこと?」
「私が文献を見た限りでは今より遥か昔……それこそ、数百年も前のことじゃ。極刑となったのがそれぐらいで、その後さらに百年ほどは奴の目撃情報が残っておる」
数百年、ね……いよいよあり得ない数字が出てきたわね。
私が見た『影雄の偽典』の姿は、この世界のどの種族にも当てはまらない……要するに、私達と同じ『人間』だった。
『人間』は、この星に存在していなかった。『アネックス計画』によって地球から人間が流入したのだって、ホーエンハイムさんの話を聞く限りここ百年前後のことだ。
『アネックス計画』によってようやく現れたはずの人間が、数百年も前の王家の文献に現れると言うのは、あまりにも矛盾している。
それに───
「───ティターニアちゃん、その時にモルドレッドに狙われた王の名前って、何……?」
『それはあり得ない』と思いながらも、私はティターニアちゃんに聞かざるを得ない。もし本当にそうなら、この話は完全に迷宮入りだ。
そんな私の疑問に、ティターニアちゃんは何でもないかのように口を開く。
「うむ、当時の王の名は───『アーサー・ペンドラゴン』である」
───あぁ、あり得ない予想が当たってしまった。
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