偽典の守人 3
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「【絶影一閃】……!」
音もなく、まるで滑るように滑らかに、ライカンさんの握る剣が横薙ぎに振り切られ───
ビキィッ! っと空間が軋む音と共に、剣の軌道上の壁、扉……そしてモルドレッドの身体へと一直線に裂傷が刻まれた。
【絶影一閃】───剣の一振りによりライカンの視界に映るもの全てを、まるで一枚の写真を切るように斬り裂くアビリティである。
大技故に扱いは難しいが、距離を無視して攻撃を与えることができる、強力な技だった。
私も『ライカンさんのアビリティ!?』とか『何今の!?』とか色々言いたいことはあるけど、とりあえず。
「浮世現世嘆く月下の盃───『酒天童子』起動!」
「ッ!?」
ライカンさんの斬撃を受けてモルドレッドが硬直するその隙に、私は妖気解放を行って『酒天童子』モードへ移行!
モルドレッドも不味いと判断したのだろう、ミシミシと音を立てる鎧から破片を散らしつつ、凄まじい反応速度で剣を振り上げる。
けど残念! 【メタバース・ビジョン】&ファルコンの演奏バフが乗っている今の私には、その切っ先もハッキリ見えている!
「"妖仙流剛術"───」
迫る剣の横に手を添え、押し退けるように外へ。木の葉が舞うように私の身体を避けた剣が地面を叩くのと同時───
「【禍震霆】!」
───極大の雷が、モルドレッドの身体を貫いた。
「カローナ様、奴を扉から離してください!」
「了解! "妖仙流剛術"───【紫電】!」
【禍震霆】を撃った後、まだ空中にいた私は、【次元的機動】の空中機動を使って頭を中心に縦に一回転。
紫色の雷を纏う膝でモルドレッドを弾き飛ばし、扉との距離を開けさせる。
【禍震霆】を受けてもまだ形を保ってるのもすごいけど、ノックバックは普通に受けてくれるから助かるわ。
「ふっ……!」
「ッ!!」
「おっと、あんたはこっちよ!」
モルドレッドが扉から離れた直後、扉の前まで一直線に間を詰めたライカンさん。
するとモルドレッドは、私と対峙してるというのに私を無視してライカンさんの方へと行こうとする。まるで扉に触れられたくないような……
そんな隙だらけのモルドレッドの横っ腹へ【極量閃舞】を叩き込み、その場に釘付けにしておく。
「影雄の儀典の本体は、この扉にはめ込まれている結晶です。カローナ様のご協力のお陰で、私はこの結晶を直接攻撃できる……!」
モルドレッドが必死に止めようとする目の前で、ライカンさんは剣を振り下ろして黒い結晶を打ち砕く。
その瞬間。
「ッ───!!」
「きゃっ……!」
この世の者とは思えない叫び声のようなものを上げ、まるでテクスチャーが崩れるように存在がブレ始めるモルドレッド。
そして数秒、苦しむように藻掻いていたモルドレッドは、空気に溶けて消えていった。
「……終わった?」
「そうみたいね……ライカンさん、お疲れ様」
「はい。カローナ様、ファルコン様、感謝します」
ふー……終わった終わった。
確かに強い相手だったけど、ファルコンの演奏バフ有りの私とライカンさんとの共闘だと結構余裕があったわね。まだ【恋人】も残してたし。
「ようやくこの扉も開きそうです。カローナ様、ファルコン様、行きましょう」
「了解!」
扉に触れながら肩越しにこちらを振り返るライカンさんに、私は元気よく返事をする。そしてライカンさんが扉を押すと、ゴゴゴッと重い音を立てて扉が開かれた───
♢♢♢♢
ようやくの思いで開かれた部屋の中へと足を踏み入れた私達。そこに広がっていた光景は、ある意味衝撃的な物だった。
「えっ……空っぽ?」
「……拍子抜けですね。すでに使われなくなった部屋なのでしょうか」
そう、モルドレッドが必死に守っていたこの部屋は、すでにもぬけの殻だったのだ。ただ一つ、部屋の隅に一冊の本が落ちているだけで……。
「あっ……んん~~?」
「どうしたのお姉ちゃん……あっ」
「どうかしましたか?」
その本を拾い上げパラパラと中を確認する私。横から覗き込むファルコンも、その本を見て気が付いたようだ。
「この本、前に私が浮島の遺跡で見つけた本と同じ系列の本だ」
「こんなところにもあったんだね」
ファルコンあんた……この本を一目見てあれと同じだってことが分かるってことは、私のコラボ配信見てたな?
なんだかんだ言って私の配信をちゃんと見てくれてるって……やっぱお姉ちゃんのことが好きなのかな~?
「カローナ様にはそれが読めるのですか?」
「ううん、全然。でも、解読方法に一応目星は付いてるよ」
まぁ全部ミューロンちゃんに丸投げしてAI解析なんだけどね。こんなどれだけ昔からあるのか分からない本の解読なんて、まともにやってられないわよ。
「それにしても、いよいよ怪しくなってきたわね……」
様々な種族が代々務めてきた王家の王城にエルフとの関係を匂わせる謎の本、それを守る『円卓の騎士モルドレッド』……。
エルフ関係の『胎動する世界樹』も円卓の騎士関係の『秩序の騎士団』も、両方スペリオルクエストなんだよね。
この世界の在り方そのものに関係していることは間違いないし、それがこの王城という国の中心で交わっているとなると……どうしようもなく心が躍る反面、どことなく不気味さを覚えるのは気のせいか?
お読みくださってありがとうございます。




