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アネックス・ファンタジア ~V配信者による、神ゲー攻略配信日記~  作者: 風遊ひばり
第八章 ~されど運命は、ただ激流のごとく~
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偽典の守人 2

評価・ブックマークありがとうございます!


『ユニークモンスター: 影雄の偽典モルドレッド・ディビジョン が出現!』



 現れた影の騎士は、顔の高さで構えた剣の切っ先をこちらに向け、隙のない構えで佇んでいる。


 塗り潰されたように真っ黒のために表情は見えないけど、その佇まいから発せられるプレッシャーに、私もライカンさんもファルコンを庇うように背に隠して、咄嗟に武器を構える。



 モルドレッド……モルドレッド?

 あの円卓の騎士の?


 なんだかきな臭くなってきたわねぇ……円卓の騎士といえば、Mr.Q(クウ)が発生しているスペリオルクエストの関係だ。


 そちらには『アーサー』なるNPCがいるから間違いない。



 そんな円卓の騎士の一人……それも『裏切りの騎士』であるモルドレッドが、王城の地下にある部屋をずっと守り続けている……。



「さて、いったい何を守ってるのやら……」


「余裕ですね、カローナ様?」


「ライカンさんとファルコンがいるもの、負ける気はしないわよ。ファルコン、演奏お願い!」


「はいはい……っ!」



 ファルコンが握る弓がヴァイオリンの弦の上を滑り、澄んだ音が響き渡る。


 それを合図に、私とライカンさん、そしてモルドレッドが同時に動き出す───!



 ガキィィィィィィィィンッ!!



 ライカンさんとモルドレッドの剣がぶつかり合い、けたたましい音が響く。力は互角なようで、どちらも一歩も譲らない鍔迫り合いとなる。


 そうしてモルドレッドの動きが止まった瞬間……私は目から漏れる残光で宙に軌跡を描きながら、モルドレッドの背後へと回り込んでいる。



 フーッ! 身体が軽いぜぇ!


 さすがファルコン……『妖精女王星楽団コンサートマスター』の演奏バフ。そんじょそこらのバフアビリティとは比べ物にならないほど物凄い効果量だ。


 楽器の扱いもリアルと同じな上、技量がそのままバフの量に直結する。これだけのバフを操るファルコンは、やっぱり私から見ても化け物だ。


 ところで初めて聞く曲なんだけど……もしかしてファルコン、新曲作った?








 カローナの思った通り……いや、思った以上の曲を、ファルコンは作成していた。


 カローナ専用(・・・・・・)ヴァイオリン協奏曲第()番『天地鳴動』───ファルコンが姉のカローナのためだけに、カローナをイメージして作った曲である。


 対象が限定的なため他のプレイヤーにはほとんど効果はないが、対象のプレイヤーにだけ超高効果のバフを付与するのだ。それこそ、たった一人でカローナの全ステータスを倍にまで引き上げるほどに。



 さらにファルコンは息を深く吸い込むと……自らが奏でる旋律に彩るような歌声を乗せる。


 サブ職業ジョブ魔粛声術師ヴォワ・シャンテ』───ウィザード系職業(ジョブ)の派生で、神に捧げるによって様々な魔法を発動する職業ジョブである。


 楽器の演奏と聖歌、さらにその二つのハーモニーによって相乗的に効果量を増したバフが、カローナ一人の身に集中する───



「っ!!」



 私が横薙ぎに振るった薙刀がモルドレッドの剣とぶつかり、シャンッ───と澄んだ音を立てて彼の頭上へと逸らされる。迷いのない、水の流れのような無駄のない剣技……



「本物か偽物かはともかく、実力は間違いないようね……!」


「ッ!」



 振り切った薙刀の代わりに握り込んだ左拳に、アビリティのエフェクトが輝く。【ドゥルガースマッシュ】の威力は強力だ。否応もなくモルドレッドは私のアビリティに反応を示し───



「良いの? 目を離して」


「隙だらけです……!」



 ズガッ!!



 鈍い金属音が響くとともに、モルドレッドの身体が勢いよく弾き飛ばされる。私の視界の端には、剣を突き出した状態のライカンさんの姿が……


 おそらくライカンさんの刺突がモルドレッドを捉えたようだ。が、ギリギリで剣を滑り込ませたのだろう、剣を盾のように掲げた状態のモルドレッドは、扉の一歩手前で踏みとどまる。



 「まだまだぁっ!」



 【次元的機動ディメンジョン・マニューバ】、【アトモスブレイカー】起動! モルドレッドが体勢を崩したこの瞬間を逃す手はない!


 一気に踏み込む私を迎撃すべく、剣を突き出すモルドレッド。体勢を崩した状態にも拘わらず、鋭く、正確な一撃だ。けど、正面からの攻撃が当たるわけがない!



「【バニシング・ステップ】!」



 モルドレッドが貫いたのは、私のデコイ。左右に散るように広がったデコイに視線を逸らされた瞬間───私の本体はその頭上だ!



「【風烈砕撃ふうれつさいげき】!」


「ッ!!」



 おっと、今の一撃にもガードが間に合うのね?

 こいつ……私のスピードについてこれていない割には、要所要所をしっかり押さえて致命傷はしっかり防いでいる。


 私とライカンさんを同時に相手取って未だにクリーンヒットを許さないあたり、実力はとんでもないのかも。



「おっ……と!?」



 私が上から押し込む薙刀を剣で防いでいたモルドレッドがピクリと動いた瞬間、空気を裂く音と共に蹴り上げが飛んでくる。


 私はそれを、薙刀を支点に逆立ちするように躱し───



「【絶影一閃】……!」



 音もなく、まるで滑るように滑らかに、ライカンさんの握る剣が横薙ぎに振り切られる。


 【メタバーズ・ビジョン】発動中の私にはその動きがゆっくりと見え……その剣を境界線として、上下の空間が僅かにずれているのが目に映る。


 そしてその直後。



「ッ!?」



 ビキィッ! っと空間が軋む音と共に、剣の軌道上の壁、扉……そしてモルドレッドの身体へと一直線に裂傷が刻まれた。


 

お読みくださってありがとうございます。

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