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転生犬語 ~杖と剣の物語~  作者: 館主ひろぷぅ
2章 ゼイタ動乱 からラストへ
41/50

03話 特訓

 ミサキを除いたみんなで車座になって少し遅い朝食にする。

 朝食はチャーハンっぽいもの。

 朝から重いな!

 でも半分くらい野菜なので意外とあっさり。

 モーリエママは料理が上手い。


「モーリエ、

 それだけしか食べへんの?

 どっか身体が悪いんか」


 モーリエは自分の皿に少量しかよそわない。

 マリちゃんの皿は山盛りだ。


「いいのいいの、この子の事は放っておいて大丈夫」


 モーリエママがそう言うなら。

 モーリエは静かに愛想笑いを返すだけだった。

 

「でさー。

 『王城国の輸送隊』って何なの?

 誰か教えてー」

「ほ、

 知らないなんて珍しい」


 モーリエパパが反応してくれた。


「イヌだからな」

「イヌじゃねえ、獅子族だ。

 ってかミルミルは黙っててくれ」


「ソリドニア地方の中央って穀倉地帯なの」

「”大陸の食料庫”って言われているぐらいな!」

「人類発祥の地とも言われておるのう」


 モーリエパパとママ、最後におじいちゃんが興味深い豆知識を割り込ましてきた。


「穀倉地帯と言われているって事は。

 他の地域の穀物を賄ってるって事であってる?」

「そうそう。

 賢いワンちゃんねえ。

 内陸になるほど良い畑が作れなくてね」


 ああもう。

 今はワンちゃんでいいよ、モーリエママ。


「王城国はな、

 納入金にあわせて他の城国に穀物を納めんだ。

 赤い登りの馬車隊でな。

 それで…」


 話の途中でパパがチャーハンを木のスプーンで口に運ぶ。

 このチャーハンの何割かが王城国産なんだろうね。


「赤い登りは目立つよね。

 逆に考えればその馬車を襲ったらダメ!

 って決まりとか禁があるってことやね」

「そうだ、それな。

 それで合ってる!

 その禁を破ると山賊でも城国でも他の城国からフルボッコよ。

 ゼイタもそのうち他の国に滅ぼされるぜ」

「でも、今のゼイタはねえ。

 もうすぐ自滅するってウワサだからねぇ」


「自滅する国には

 高い軍資金払って攻め獲る価値はねえよな」


 ミルミルが面白くなさげに言い放つと、チャーハンを口にかきいれる。


「でもな、

 パサの花は高く買ってくれるんだよな」


 と、モーリエパパ。

 もう自滅が秒読みしてますよ、それ。



 夕方近くにミサキが帰ってきた。


 この辺りでは唯一の大木、里の ”ご神木” 。

 ご神木はしめ縄や小さい旗などで飾られて奉られている。


 そのふもとで ”特訓” していた僕らの元へ複雑な表情で歩いてきた。


「ねぇ。

 このトローカで傭兵として雇いたいって言われたらどうする?」

「俺たちはここに定住するつもりは無い。

 そういう話があったのか?」


 剣の素振りしながらミルミルが簡素に答えて質問を返す。


「まあそう言うと思って断ったんだけど」

「僕らは無職無収入やけど、いいのか?」

「提示額も安かったしねぇ。

 昔は周りのコミューンと共同で傭兵を雇ってたみたいだけど。

 ここ以外はみんな逃げ出したから、これ以上は払えないって」


 流通も無さそうだし、竪穴式住居だし。

 裕福とは思えないよな。


「そんな話をこんな時間かけて話していたのかよ!?」


 素振りを止めてミルミルが振り返る。


「私が申し出を断ってからが大変だったの!

 移住するか隣のタトウズ城国に庇護を求めるかで意見が分かれてね」

「こんな治安が悪そうなところで今さらやね。

 呑気な話やなー」

「ずっとみんなでモーリエの捜索を続けていたそうよ」


 すまぬ、トローカの里のみんな。

 僕はこの世界に来てから悪い人間ばかり見過ぎていたせいだ。

 ここは優しさ溢れる里やなー、ええ話やー。


「それで結論は出たのか!?」

「うん、買い出し隊が既にタトウズにある程度話をつけたみたい」

「ああ、なるほどなー」


 一人納得するとミルミルが再び素振りを始める。


「なにが『なるほど』やねん?」

「買い出しなら一日で行って帰ってこれるタトウズに、

 数日かかってた理由がわかった」

「誰かが噂話を集めろ、とか頼んだせいちゃうか」

「んなワケあるか!

 俺なら酒場に行って男を引っ掛ければ百の噂もすぐに集められるぜ」

「あはは、

 アンタに引っ掛かる男なんてどんなマニアよ!」

「ははははー、

 もう多分まともな人間ちゃうでー!

 死体かゾンビぐらいやでー」

「お前ら、

 細切れにして黒刀湾に沈めるぞ!」


 はい黙ります。

 なので木刀を構えてじりじりと近づかないでください。


「まぁタトウズの見張りの兵でも来るなら俺たちも発つ頃合いだな。

 苛立たしい事にダルマの教育のおかげで、マリーもかなり強くなったようだしな」


 そう言いながらミルミルは天を振り仰ぐ。


 ってか素直に喜べや、イライラすんな。


「あれ、そういえばマリーちゃんはいないの? ……

 ひぃいいいいいっ!?」


 目の前に落ちた白いモノに驚いて、ミサキは高い悲鳴をあげる。


「おかえりですー」

「もおっ!

 ビックリしたじゃない、どっから現れてるのただいまっ!

 今日もこんなに汚してなにしてたのー?」

「特訓です」


 上を指さし無表情で答えるマリちゃん。


「服はモーリエのお下がりだからいくらでも汚していいって」

「そういう事じゃなくて、ほら、これ!」


 マリちゃんはミサキの腰に手を回してひっつき虫になってしまった。


「私の服が汚れるのよ!」


 ふーんシラネ。


「そんなことより」

「そんなことより!?」

「マリちゃんが抱きつき魔になったから僕を全然抱き上げてくれへん。

 構ってくれへんから寂しいやん? な?」


 ミサキは放っておいてミルミルに同意を求める。


「うるせー、

 お前は休んでばっかりいないで狩りにいってこいやあああ!!」


 蹴とばされた。


「いてええええ!

 お前はマリちゃんに抱きつかれ率が低いからって八つ当たりするなああああっ

 ……あ、もしかしてヤキモチ?」


 着地した僕のところへ真顔のミルミルが迫る。


 もう照れちゃってお茶目さん☆


 僕は全力で逃げる。



 今日は遂にラビタ一匹を仕留めた。

 正面から行くと見せかけてフェイントからのサイドステップ、攻撃でフィニッシュ。

 トドメを刺す時の興奮度はMAXを振り切った。

 僕はこんなにサイコ野郎だっただろうか。


 あ、サイコ野郎だったわ。


 いつものようにモーリエが呼びに来て、みんなで帰る時。

 ミルミルが僕の前で仁王立ちして言った。


「虚と見せて実、実と見せて虚。

 それが天女降臨演舞の剣の極意。

 お前も少しはわかってきたんじゃねえか!」


 そんな恥ずかしいセリフをよくドヤ顔で言えるな!

 こっちが恥ずかしくなるわ。


 いつものようにみんなでご飯を食べて、話したり遊んだりしてから就寝。

 トローカの里での生活にすっかり馴染んでいた。

 この生活も悪くはない。

 きっとマリちゃんにとっても。


 幼い少女にはここでじっくり戦い以外の事を教えてあげる方が良いと思う。


 ミサキが依頼を蹴ってしまったが、たとえ少額でも傭兵となってここを拠点に活動するのもアリだと思う。

 明日の早いうちに相談してみよう。

 もしかしたらなんとか……ぐぅ。



 カーンカーンカーン……

 次の日の朝もまた、板木ばんぎを叩く音で目を覚ました。 


 どうせまたゼイタ城国の兵がバカやってるんでしょー。


 眠気でぼんやりした頭でそう考えて二度寝することに決める。


 外では見張りをしていた里の男が叫んでいる。


「兵が攻めてきた、兵が攻めてきたぞーっ!」


「寝てる場合じゃねええええ!」


 僕が飛び起きると、


「んな事はわかってるよ!」


 ミルミルとミサキに同時にツコまれた。


 見るとみんなは既に戦闘準備中である。


 ミルミルは肩当と腰当の付いた黒革のつなぎを着て脛当てを装着する。

 ミサトもいつも通りのグリーンのワンピースのドレス。

 マリさんはゼイタ周辺の女性が一般的に着ている服を借りていた。

 袖口の広い淡いグリーンが基調でオレンジの縁取りが多いチャイナ服風。

 そこにいつもの干し肉ポーチを装備する。


 ミルミルの魔剣の装着が終わると一斉に外へ出た。

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