88.生糸《レレモ》狩り2
お久しぶりです。よろしくお願いします。
食後のまったり中、という時だった。
──お、これは。
「ソル」
「ああ」
打てば響くような返事をくれたソルだけでなく、ダンジョン組と肉屋組全員の視線が北を向いている。前回もこんな感じだったのだろう。
「行くぞ」
ソルの静かな号令に、彼らがスッと立ち上がった。それの時の段取りは既に話し合っておいたので、ポルカに動揺する者は皆無だ。いよいよだ、という顔を誰もがしている。
「片付けは任せろ」
「行ってこい」
ホスさんたち料理番に促されて頷いた彼らが、続々と広場を出て行った。今は丸腰だから武器とポシェットを装備してから出発するのだ。40分の猶予があるとは言え、魔力は感知できても距離までは正確に測れないし、どんなアクシデントが発生するかも分からないのだから、初動は早いに越したことはない。
え、それって何だって? ほらアレさ、待ち望んでたやつ。光る渦でー、ダンジョンボス並みの魔力量のー、アレ。そう。生糸だよ! ドンドンパフパフ~~~! うん? いきなりテンション高過ぎだって? いやもうすぐ湧くんだと思ったら、段々興奮してきちゃってさ。今期の残り2回の湧きのうち一回が、こんだけ早く湧いてくれるなんて最高! これで防寒着か服のどっちかは寒期前には揃いそうだわククク。
私も出動する中に入っていたのだが、お客の相手があるから見送るほかない。あ~~~どんなんが湧くか見たかったな──楽しみをとっておくために、ニルヴァス様には訊かなかったのだ──と顔を戻すと、貴族の皆様が周囲を気にしながら答えを待つような視線を寄越して来ていた。あ、気になる? だよね。
約半数が一斉に北を向いて、それに気付いて徐々に静かになる広場。そして少ない言葉のやり取りで頷き合って駆けだす男たちと、それを見送るなり片付け始める他の男たち。その間、無言なのだ。気にならん方がおかしいよ。
説明するのは構わない。漫画や小説的に、こういうのは隠した方が面倒事になる確率が高いのだ。せっかくのタイミング、ありがたく乗せてもらうつもりでいるのだが……ペロリと唇を湿らせる。
首脳陣の護衛なんてエリート中のエリートが、誰1人としてあの大きな魔力に反応しなかった事から、騎兵団員が魔力感知を持っていない可能性が大。そこに生糸が湧くのを魔力感知で気付いたから行きます。なんて言ってみ? 何でポルカが使えるんだって話になるじゃん。でもそれは別にいいんだ。
ポルカが自分たちで使えるようになったわけじゃないから、ダンジョンの収獲量を誤魔化していたんじゃないんだよとアピールするために、私が魔力付与して、魔力感知だけじゃなくて身体強化もぶりばりさ~~(←古い?)ってどや顔する流れに持ってくんだから、むしろチャンスだよ。たださ、聞いただけで理解できるかなあと思って。
──君らもう、ポルカがその気になったら殲滅されちゃうヨって事を、さ。
ある日のポルカの狩りをご覧になったニルヴァス様がおっしゃるには。
ポルカのダンジョン組と肉屋組の能力向上速度から見るに、私が付与した魔力がロンさんが言うように多過ぎたのは、私の魔力の質による所が大きいのだそうで。
ニルヴァス様の神力は、言ってみれば超高濃度の魔力。ソレを、気合いを入れて練り込み創られた私。その私の魔力を小指の爪ほど付与するだけでも、この世界の上級冒険者に育つ素養となるのだそうだ──ヤバイ、サンタ〇ロースが担ぐ袋大をイメージして付与してしまった。しかもスタート時の奴……ハハハ。
うん、やっぱり見せないと理解してもらえなさそう。身体強化が使えるようになったって言っても、自分たちと同じ基準で考えそうな予感しか無いわ。領主とジラルデさんは除いてもいいかもしれんがさ。舐められて粉掛けられて、余計な揉め事が勃発する未来しか見えないね。よし、見せよう!
「御覧に入れたいものがございます」
え? これで何が湧くか見れる! だなんて喜んでないヨ?
あ~~~楽しみだな(小声)
まだ鐘が鳴るまで10分──ニルヴァス様との密談で教えてもらった──あって、そこから40分で50分の猶予。これは歩いても充分間に合うなと判断した私は、行きと同じ手段を提案しつつ、枯れ木三人衆の足を地面から1センチ離した。領都からポルカの村まででも彼らには厳しいのだ。それよりも遠い場所なんて、輸送だ輸送。
領都を右に見ながら速足で北上し続けると、前方に夜を照らすピンクの光が薄っすらと見えて来た。その時、領都から鐘の音が響いて来たことで、ご一行は自分たちが何に向かって歩いているのか気付いたようだった。前回とは鐘の鳴り方が少し違うような気がするので、光の渦の見える方向によって鳴らし方を変えているんじゃないだろうか。
困惑や疑問を含んだ視線が集まるのを感じたが、とりあえず無言で足を進めた。私は目的地までの移動は出来得る限り最速でしたい性質なのである。ちなみに近付いて行くに従って、光がただのピンクではなく蛍光ピンクであることが判った。前回の黄緑色に負けず劣らず見逃しようが無さそうな色選択。うん、色決めしたのは誰だ。
──ああアチラの。納得、納得。
それから10分ほどで到着し、ソルたちが群れている所に一番近い小藪に観覧席を魔力で制作した。箱状の背もたれ付き階段席で、座り心地は観光バスの椅子のソレ。それを魔力で丸っと包み、認識不可の付与を。このまま領都まで送ってしまおうという魂胆がダダ漏れな仕様だねって? バレたか。
驚く彼らをそこに押し込んで、私は領主と側近たちが座る中段の横に立つ。さあ準備は整った。生糸が湧くまで後20分──制作はすぐだったが、呆けた彼らを押し込むのに手間が掛かったのだ──お待ちかねのお話タイムだギブミー質問。
「既にお気付きでしょうが、ご覧に入れたいものとは生糸狩りのことでございます」
「鐘が鳴る前に、気付いておったようであったが……」
促すまでもなく領主が口火を切ってくれる。それに全員が、特に騎兵団員たちがそうだそうだと言うように頷いた。よしよし、まずはそれね。一番会っている領主とですら、ほとんど初対面という間柄だ。貴族がどこに興味を持つかを少しでも掴んでおきたいので、こちらも情報の出し惜しみはしないで行こう。
「あの光の渦が、大きな魔力の塊というのはご存知でいらっしゃいますか。私どもはそれを、魔力感知という能力で知る事が可能なのでございます」
騎兵団長を始め、団員たちの誰一人としてあの魔力の発生に反応を見せなかった事から、魔力感知を使える者が居ないというのは予想できていたが、初めて聞いた、と言わんばかりの反応に、魔力感知すら知らないのだということが確定した。それにしても反応が薄い。ハズレだ。
生糸狩りには今でも充分間に合っているんだから、より早く気付かねばならないという事も無く。この反応で騎兵団員の能力開発に使われているということも無く。そしてダンジョンには潜らない、ともなれば。……いらんかったんだねえ魔力感知。この事実はロンさんもビックリに違いない。魔力感知への興味が薄いので、話題を変えることにした。
「夕食のお味はいかがでしたか」
「とても美味であった。今までに食したことの無いものばかりだったが、あれらはどこの料理であるのか」
どうやら別の領地の料理だと思っていたようだ。それにしても領主がこれほど感嘆するとは、やはり王都の料理にも大したものは無いらしい。食材の組み合わせ次第だからな~料理は。
「どこの、と言うより、我が主のための料理でございますね。我が主の許しを得て、ポルカで教えております」
「やはりどなたかにお仕えしていらっしゃるのですね」
「どなたか、お教え願えますか」
側仕え頭が納得だと頷いたすぐ後に、ジラルデ様が知りたい知りたいと全身で訴えながら訊いて来た。この人は存外、押しが強い人なのかもしれない。枯れ木な見かけと栄養失調による気力の無さが、気弱に見せているだけなのかも。肉が付いたら楽しみだ。ところで返事はノーである。
「言わぬ方が互いのためとなりましょう。申し上げてしまえば、バルファンのみへの肩入れが難しくなります」
王都と西側領地では貴族もダンジョンに潜っているそうだから、それをしていない東側領地の、中でもバルファンだけに肩入れしている現状は、知られない方がいいと思うのだ。
「……っ! 余計な詮索を、申し訳ございませんでした!」
解ってくれたようで何よりだが、まさか神様だとは思っていないだろう。誰で想像したんだろうか。知りたかったが、せっかく濁せたのを無駄にはしたくない。謝罪を頷いて受け入れ、話を戻すべく口を開く。
「あの夕食には、銅貨一枚も掛かっておりませんでしたが、お気付きになられましたか」
よしOK、驚愕の表情が人数分。話を戻すことに成功だ。
「ダンジョン食材と、森や山で採れた食材で作りました。申し上げたことの証明になればと思いまして」
「……金を掛けずに食材を増やせると、おっしゃられた……?」
「はい」
「その……今、ダンジョン、とおっしゃられましたが、どの料理に、どのように使われていたのでしょうか。肉しか判らなかったのですが……」
ジラルデ様に言った記憶は無いので、領主に聞いたのだろう。肯定したところに、騎兵団長から質問が来た。判らない自分に恥じ入っている様子で、困り眉が庇護欲をそそる。そんな恥じ入らんでもよろしい!
他の誰も判ってないし、そもそも他世界の食材の組み合わせなんて食材を無駄にして実験しないと分らんのが普通だから!
「フレンチトーストからご説明いたしますと。粉ダンジョンの上層の『茶色い小麦粉』と下層の『ドライイースト』と、塩ダンジョンの上層の『塩』と下層の『砂糖』と、肉ダンジョンの上層の『卵』と下層の『牛乳』で」
彼らにとっては呪文だが、大事なのは食材の名前などではない。どこの食材かを拾ってもらえればいいのである。目論見通り、下層という言葉に反応してくれているようだ。さあまだまだ続けるぞ。
「椎茸の肉詰めには、肉ダンジョンの上層の『豚肉』と最下層の『にんにく』と『椎茸』と、塩ダンジョン上層の『塩』と中層の『コショウ』と『ナツメグ』と、森で採れた『白ネギ』ですね」
ふふ、最下層──私とポルカ&肉屋の間ではボス部屋と言っているのだが、そこを疑問に思われると話が進まないので最下層と説明──を拾ってくださったようで何より。開いた口が塞がらないかもしれないが、あとスープが残っているからもうひと踏ん張りしておくれ。
「グリーンスープには肉ダンジョン中層の『ブロッコリー』と『カリフラワー』と下層の『ほうれん草』と『牛乳』と『生クリーム』と、粉ダンジョンの上層の『塩』と中層の『コショウ』と最下層の『コンソメ』と、野に生えています『パセリ』を使いました」
思い出しながら言い終えて領主ご一行を見渡すと、色々な表情ながらも共通してフリーズ中だった。そうそう。背の低い雑木の茂みの中に生えていて見つけ辛いことこの上ないが、パセリは本当に雑草のように生えていた。探す時には探索スキルが必須となるが、おかげであのお宅に突撃しなくて済んでホッとしている。
だって、どう考えても時々雑草をもらいに来るおばさんなんて、家人は当然、村人の記憶にも刻まれ過ぎてしまうよ。しかも雑草であったとしても人ん家の外壁に寄り添うモノを、勝手に引っこ抜いて持って行くなんてことできんて。必要とあればやるけども、やらんでいいならやりたくないよね。
頑張って衝撃を脳内処理しているようなので、そっとしておくことにした。その間にも街人と騎兵団員たちが続々と到着して2周の輪を構成していく。ポルカはそれを刺激しないように、その出来上がりを待っての移動となる。
「そろそろです。生糸狩りが始まりますよ」
一層強く光り始めた蛍光ピンクの渦。さあ来いと全員が構えを取り出したのを見て、ご一行の意識を誘導する。さあ何が出てくるのかな~。
──ぉおうコレか。
砂埃を蹴立てて現れたのは、元居た世界でお馴染みの、飛べないアイツだった。赤いトサカのアイツではない。体毛が黒で足が太くて長い、おまけに身体もでかいアイツとくれば、もう解るだろう? そう、ダチョウだ。いや、もしかしたらエミューかもしれんのでダチョウもどきとしておこう。
まずは一周目の街人たちがダチョウもどきを迎え撃つ。やはり首を落とすのがドロップの条件なのか、2~3人でダチョウもどき1羽を抑え込み、もう1人が鎌を首目掛けて振り下した。イノシシもどきと同じように、絶命すると血飛沫ごと綿ぽい糸の塊となって落ちる。綿ぽいのじゃん! よっしゃラッキー!
しかも一体につきひと塊では無い。……1234567、いやあっちはもう少しあるな。ドロップ数はダチョウもどき1羽で7~10個のようだった。一体にひと塊だった麻っぽい糸に比べて、ひと塊のサイズは半分程。これは糸の細さの違いによるものだろうと思われる。加えてドロップ数が多いのは、綿ぽい糸が一番使用される量が多いからではないだろうか。ニルヴァス様なら多分そうするんじゃないかな。
それにしても上手く考えたものだと感心する。この2周の配置というのが中々に絶妙なのである。イノシシもどきの時も、このダチョウもどきの時も。トップスピードに乗る前のを街人が狩り、人という障害物にスピードを上げ切れないでいるのを騎兵団が狩る。よく考えられているのだよ本当に。
「っ!」
「な……」
ご一行からこんな声が聞こえ出した。もちろんポルカ&肉屋組たちの働きによるものだ。えへん。2周目を逃げ延びたダチョウもどきは自由に向かってトップスピードに乗ったことだろう。普通人であればそんなモノに接触したら跳ね飛ばされて事故死しかねない。しかし、そこを彼らは美味しく戴くことができるのである。ぬっふ。
毛皮屋たちは少し下がって「ほあ~~~」って夢でも見てるかのような顔をしているが、2度目じゃなかったかな、君たちよ。まあ前回は人数が少なくて隣同士の距離が今の3倍はあったから、取りこぼしを狩るのに忙しかったというのもあって、ゆっくり眺めてもいられなかったのもあるか。今回は総出で来たから取りこぼしは前回より少ない、と言うかまだ無い。ゆっくり待っていることも無いと前線を押し上げて狩りまくるポルカ&肉屋組の雄姿を、ゆっくりと堪能していただけて何よりだ。
うん、そう。今のところ、取りこぼし無しなんですの。狩れるだけ狩るのが目標で、取りこぼしはあってもしょうがないよ~と伝えてあったのに、今のところゼロ。ぐふふとほくそ笑みながら視線を横に流すと、顎が外れそうなご一行が。ついでに目も飛び出そうだ。これに比べると毛皮屋たちの様子には余裕を感じるな。
「消えっ、今消えっ?」
騎兵団員たちが騒がしくなってきた。きえっきえって何の鳴き声だ、なんて性格の悪いことは言わない。時折フッと掻き消えてるのを言ってるんだろう。全速力のダチョウを取りこぼさないようにするには、全力が必要だもの、そりゃ常人には消えて見えることだろうて。
帰りは観覧席のまま運ばせてもらった。騎兵団長は歩きでと言い張ったが、予定に無い生糸狩りを見終わってからなので、随分と遅くなってしまった事を理由に押し通した。本当の理由は枯れ木3人衆のうち2人の腰が抜けたからである。領主は私で耐性が付いていたのか大丈夫だった。
目を白黒させながらのご一行を無事に領主館の書斎まで送り届け、そこからまだ足元の覚束ない2人を魔力で支え、領主の執務室までエスコート。そして今、その執務室で自己紹介をし合っている私と領主の弟と外務長官殿。
とりあえず夕食をご一緒した他の面々と違って、いかにも空腹ですと顔に書いてある2人には皿に盛った後で塩を振ってバターを載せる実演付きでじゃがバターをお見舞いしておいた。誰かだけが食べていない状況ってのが我慢ならんのですよ。自業自得は除くけど。
「……なんと美味な!」
このような美味なジャガイモは食したことが無いと感激を露わにしたのは領主の弟バイネルトで、それに頷きで同意するも陰気な無表情そのままのが外事長官エレミスだそうだ。彼らの枯れ木っぷりも見事であった。
取り皿に取りながら食べてもらったが、4口食べて満腹だと幸せそうに微笑まれた。特に外事長官エレミスの無表情が解けて緩く笑んだ様は、冬場、冷え切った後に飲むコーンスープにほんわかする人を彷彿とさせた。今度カップスープでもお見舞いして、真にそのシーンを拝んでやろうと決める。
残りはご自由にとじゃがバタセットの入った異空間収納袋ごと進呈した。そう、実演したのはこれを見越してのことである。もちろんダンジョン食材の話に持っていく前振りとしても狙っていて、これからそれを始めるところである。いい具合にじゃがバタに興味が集まっているじゃないか。大丈夫、今から食べてもらうから。
「どうぞ皆様もお試しください」
一欠けらずつ小皿に載せて差し出す。さてどう転ぶか。
+ + +
ジャガイモに塩を掛けたものは、我々にとって平パン同様である。つまり、飽きるほどに食しているソレを差し出されたとて、これだけ口の中が潤うことなどないのだ。その理由は確実に、最後に載せられたこの芳しい香りの元にあるのだろう。
先に食したバイネルト様とエレミスの様子を見るに、絶対に未知の味となっている。そして、絶対に美味に違いない。そっと小皿を両手で取り寄せる。
スープとパンとジャガイモ料理の一回目。ポルカの村での2回目。どれもが驚きに満ちた美食であった。多分、これもそうなのだ。震える指を抑え込み、匙でそっと口へ運ぶ。
ふむううう~~~~っっ
な、なんだこれは……鼻に抜けるこの芳しさ、舌に染み入る未知なる美味さは!
ヨリ様の料理を時間を掛けて堪能したくなるのは私も同じだが、道理で先の2人が時間を掛けたはずである。これは飲み込まずにずっと口の中に残しておきたくなる……むふぅ~~~……。
飲み込めずにいると、バイネルト様と目が合った。そうだろう、そうだろうというように頷かれた。エレミスも猫背のままで薄ら笑いを浮かべていた。奴が笑う所は久しぶりに見た気がする。
「実に美味であった……」
レルトルド様の語尾が名残り惜し気だ。よほど苦悩して飲み込んでしまわれたのだろう。私も己に打ち勝たねば───うう、無くなってしまった……。
「黄色掛かったモノは何と言うのですか。王都でも食したことがありませんでした」
私が口に残った後味を堪能し切っている間に、ジラルデが早速、芳しい物についてお尋ねしていた。
「バターでございます。バルファンの肉ダンジョンの下層でのみ獲れる、生クリームから作っております」
レルトルド様が「むう」と唸られた。
ジラルデは「な、なんですと?!」と激しく動揺中だ。心の臓が止まりそうな程驚いている。
側仕え頭リドゥレイが「わ、我が領のダンジョンから獲れるのでございますか?」と珍しく声を上擦らせて叫んだ。全くの同意見だ。
遅れて隣から聞こえた「知りませんでした……」という呟きはバイネルト様で、呆然となされたのを励ましたくて、背にそっと手を添える。私の言いたい事は全て言ってもらえたので、後味を堪能しつつエレミスを見やれば───見開いた目からハラハラと涙を溢していてギョッとしてしまった。
「何を泣く」
レルトルド様が穏やかに問うて下さった。エレミスの泣き方が嬉し涙では無かったからだろう。
「我が領のダンジョンで獲れると知ったとて、下層でございましょう。我が領の誰が獲って来られるとおっしゃるのです?」
言われて腑に落ちた。獲りに行けないのであれば無いも同じである。一気に興奮が冷め、沈鬱な空気が漂い始めた時だった。ヨリ様の凛とした声が、俯き始めた我々の顔を上げさせてくださったのは。
「心配ご無用でしょう。ご参考までに申し上げますが、先程ご覧いただいた全員、ひと月前までは全くの無能力でございました。少々手伝いましたらあの通り。戦闘技能をお持ちの騎兵団の方々でしたら、もっと早いのではないですか」
少し短いですが、切りのいい所で切らせていただきました。
やっとポルカの能力をお披露目できました。そして綿ぽいのを大量ゲットです。
服、服、服~~~! 早く皆でビシッと決めたいです。




