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さあ美味しいモノを食べようか  作者: 青ぶどう
11/91

11.ロジ 

 ロジ14歳です!お願いします!


 元気っ子出ます!


 残酷表現ありです。



 ********************************************

 11.ロジ


 ロジは走っていた。

 街に向かって一生懸命に。


 失敗した。ダンジョンの奥に入りすぎて、戻ってくるのが遅くなってしまった。

 いつもは塩のドロップ数でだいたいの時間を計っていたのだが、今回は街の人間が多くて思うように狩れなかったから感覚がずれてしまったのだ。



 ポルカの子供たちに水と食べ物を届けるのは14歳から18歳の、塩ダンジョンに潜る5人で順番を決めてあった。今回はロジの番で、本来なら昨日持って行ってやらなければいけなかったのだ。

 2日おきに持って行くのだが、その時に塩を売って、それで自分たちとポルカの子供たちのために食べ物を買う。



 塩の買い取り値は、安い。普通の冒険者であれば銅貨5枚で買ってもらえるが、ポルカの人間は、銅貨3枚でしか買ってもらえなかった。だから数を売るしかない。数を売っても、食べるだけで精一杯だった。30個売っても銅貨90枚。


 ポルカでの食事はいつもパンだった。だからパンを買う。

 丸くて平たいパンが一枚で銅貨2枚する。銅貨90枚では45枚買える計算だが、ダンジョンで使う短剣がボロボロになってしまったので、それをまずは買い替えないといけない。

 パン屋の前に古道具屋の露店に行く。そこで誰かのお古を買うのだ。

 短剣は銅貨40枚した。残りは銅貨50枚だ。パンは25枚買える。


 パン屋に行ってパンを買った。ここのおばさんは、いつもこっそり失敗作をおまけしてくれる。自分たちに優しい人たちの一人だ。ぺこっと頭を下げて路地に引っ込んで中を確認する。

 ……良かった……5枚も入れてくれた。

 安心に涙がこみ上げる。しかしそれをぬぐって路地を出て、一目散にポルカへ。



 ポルカに着いたロジは愕然としていた。入り口に近づいたときに首をひねり、着いた時には目を疑ってこすった。

 いつもぬかるんでいる道が乾いていた。


 人の気配のしない家を覗き込んで驚く。

 空気は爽やかで、土は乾いており、ボロでない布が敷かれ、こちらもボロでない布があり、トイレが新しい。


 一軒一軒覗いて、一番大きな家では驚いた。

 子供たちが10人寝かされていたのだ。しかも、少し前から少しずつ弱ってきていた子供たちばかりだ。

 目が覚めている子供たちと目が合ったが、うっすらと笑ってくれた。

 何が起きているのか判らないが、手遅れでは無かったことに、ロジはほっとした。


 家を出てさらに奥に進むと、子供たちが壁に向かって座っているのが見えた。

 何をしているんだろうか?

 何かの前に座っているのか。

 近付いていくと10歳くらいの男の子が自分に気付いて立ち上がった。


「黒い女の人が、助けてくれて、ご飯をくれたんだ」

 その10歳の男の子が小さい声で話すのに、一番年嵩の少年も頷いて言った。

「このテーブル作ったのも、皆の病気を治したのも、地面も、全部その女の人がやってくれたんだ。魔法使いだよたぶん」

 こちらの少年も小さい声で話す。

「うさんくせえなあ」

 自分も小声で話す。


 そういう、決まりなのだ。

 ポルカの後ろの通りに声が漏れれば、「うるさい」だ「生意気」だと怒鳴り込んでくる奴らが居るからだ。当然殴られたり蹴られたりする。だから誰もが小声で話す。


 テーブルに座って自分たちを見ている子供たちの前に、何かが載っている皿がある。白い何かだ。

 どうやら一人に一枚ずつある。ポルカには皿は無い。買う金も載せる物も無いからだ。

 一番近い皿に寄って行って、顔を近づけて匂いを嗅いだ。…変な匂いはしない。

「おいしいよ。ちょっとだけど、たくさん噛むんだ」

 その皿のところに座っている子が言う。

「ロジ、いっこ食べていいよ」


 ここの子供らは食べ物を分け合うことを知っている。皆が協力し合わなければ生きていけないことを知っているからだ。

 自分が子供の時から、それは変わらない。大きな子が下の子供たちの面倒を見て、面倒を見られた子供たちが、下の子の面倒を見ることを覚える。

 そうでもなければ、子供だけで暮らすことなど無理だろう。


 この街にはここ以外にポルカが無い。大人までもがここには住めないのである。

 小さい子供だけであれば、狭い場所で事足りる。ポルカが容認されているのは、そういう事情もあるのである。あとはもちろん望まれない子供の受け入れ先として。


 ロジは一粒つまんで口に入れた。塩味に、わずかに鼻に抜ける青臭さ。口の中で一気に唾液が増え、その粒にまとわりついた。

 うまい。舌にしみるうまさだ。ずっと舐めていたい気持ちを押え、噛む。うまい。ちょうどよい塩加減が、その何かをものすごく美味しくしていた。噛むたびに、ほのかに歯に当たる何かが爽やかさを訴えてくる。これは…クセになりそうだ。


「うまい」

 唸って言った。

 自分の声が聞こえた子供らが、うんうんと頷いた。

 他の子供が言う。

「ごはんがね、3回あるんだ」

 その隣の子供が言う。

「朝起きて食べて、今食べて、昨日は寝る前も食べたよ」

 そしてコレをくれた子供。

「これを食べたら、あまい芋とあまい小さいのを食べるんだよ」


 なんだそれは。一日に1回以上食べたことはないし、あまい物など知らない。

「そいつ、どこにいんだ?」

 訊いた。顔が見たい。どんな奴なのか。

 年長の少年が答えた。

「ダンジョンに行くから、しばらく来ないって言ってた」

「ダンジョン?」

「西門から出てって右に行ったよ」


 その方向なら塩ダンジョンしか無い。

 今から行って追いつけるだろうか。


「コレ、いつもの飯だ。遅くなって悪かった。明日は次の奴が来る」


 持っていた袋からパンを25枚渡す。

 おまけでもらった5枚は、当番の自分たちが一枚ずつ分けるのだ。それで2日を食い繋ぐ。稼ぐ自分たちの食べられる量のほうが多いが、そこは身体と運動量の違いなのでしょうがない。


 背中からは、袋に入った水を降ろす。実はこれが一番重くてキツイ。村にいる付与術師に「重量軽減」をかけてもらって、それでも持てる限界まで持たないと全員分には足りないのだ。

 前の当番が持ってきた空の袋を受け取る。いつもなら中が濡れているのが、今回は濡れていない。水が無くなってから1日は経っているのだろう。自分が持ってくると信じて待っていたに違いないのに。


「ほんと、悪かった」


 謝らずには、いられなかった。

 子供たちに言って、「じゃあ。またな」と走り出した。

 今から走って追いつけるだろうか。もうダンジョンに入ってしまったかもしれない。

 どんなやつなんだろうか。嫌なやつでないといい。それなら礼が言える。


 走って、走って。

 誰かが前を歩いている。

 黒いローブで全身が隠れていて、女かどうかは判らない。

 とにかく追いつこう。


 走って。


 近くまで行ったとき、その黒いローブが止まって振り向いた。

 顔が見えたが、女だろうか。よく判らない。


 もっと近付いた。

 あ、女だ。

 じゃあこの女なのか。

 でもどうやって言えばいい? 子供らを助けてくれてありがとう? …いきなりか? 人違いかもしれないのだ、まずは確認しないと。


 女の前で止まった。

 女は何かを握り、口をモグモグと動かして無表情にこちらを見ている。

 ぜえはあ息をしながら何と声をかけるべきか考えていると。


「もしかして、ポルカの子?」


 女が言った。

 良かった。向こうから振ってくれた。


「ああ。あいつらに色々してくれたのは、あんたか?」


 ぜえはあしながら言う。


「水飲めば」


 女が水筒を差し出してきたので、ありがたくもらう。一口飲んで返した。


「塩ダンジョンに行くなら、歩きながら話せばいいと思うよ」


 女も水を飲んで、水筒を鞄に入れながら言った。

 水筒を入れた手が、何かを握って出てくる。


「はい。食べながらでもいいよね。きみもどうぞ」


 どうぞ? 何かをこっちに差し出しているということは、自分にくれるということなのだろうか。

 手を出しかねていると。


「美味しいから、食べてみなよ」


 ぐいっと寄越してきた。

 胸のあたりにまで差し出された手に掴まれた何かを受け取る。


「こうやって、食べるんだよ」


 女を見ると、その手に握っている何かを二つに折って、片方にばくっとかぶりついた。

 そしたら踵を返してダンジョンのほうにスタスタと歩きだした。

 慌てて追いかけながら、言われた通りに二つに折って、片方に恐る恐る小さくかぶりつく。


「っっぅっっっま!」


 女が。


「ふふふ」


 と、笑った気がした。





 ************************************************

 ポルカに子供しかいない理由を書きました。

 ヨリはこれからそれを知ります。


 セリフの前後の行が開いたり縮んだりするのは、わざとです。

 縮まってるときは、皆で顔を寄せ合ってヒソヒソ言ったり、即答したりという空気を表現したいな~と。


 いよいよ次はダンジョンに!…行きたいですねw


ロジが獲って来る塩の数を変更しました。それに伴い金額も変えました。

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