12.初ダンジョン
やっと念願の初ダンジョンです。
ヨリとロジ、両方の視点でどうぞ。
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12、初ダンジョン。
「あれがそう?」
塩ダンジョンの入り口が見えてきた。
入り口が、テレビで見た王家の墓の入り口のようだ。
「そうだ」
隣で2本めの焼き芋の、最後のひと口を放り込んでモグモグしながらロジ少年が答える。
ロジ少年とは少し前に出会い、焼き芋を食べながらここまで歩いてきた。
市場での出会いを話すと、苦い顔をして「自分のせいだ」とこぼした。
ポルカにやってくれたことへの礼がしたいと言うので、ダンジョンの案内をしてもらうことにしたので一緒に居る。
護衛は必要無いが、ダンジョンが初めてだということは伝えてある。危なければ即時撤退すると約束もした。
そして塩ダンジョンの事を少しだが教えてもらった。「少し」というのは、知っているうちの「少し」という意味ではなく、上層で塩しか集めない彼では、そもそも少ししか知っていることが無いのだそうな。
ロジ少年に教えてもらったことは。
上層のモンスターは塩と何かを落とすこと。肉屋の連中も来ること。
中層のモンスターは何を落とすか知らないが、ポルカの大人が獲りに行っていること。
下層は上位冒険者くらいしか行かないと教えられたこと。
であった。
彼ら子供が一人で潜る理由は、パーティーの人数を増やすとモンスターが湧くのが多くなり、対処できなくなるからだそうだ。だからソロで潜り、コツコツと狩りをするのだとか。
モンスターは必ず塩を落とすわけではなく、何かよく判らないものも時には落とすらしい。
その何かが欲しいんだって!
ロジ少年が準備をしてくると言ったので、私は入り口周辺を見て回ることにした。
観光地ではないので、店など無い。人気も無い。
ポルカの大人たちは、ここに住んでるわけでは無さそうだ。
「探索」をして、この周辺の人数を探る。
ん? 人が8人くらい集まっている場所がある。建物の中だろうか。
そのうちの一人がまた動き出した。
こちらに向かってくるからロジ少年かな。
そちらを見て待っていたら、茂みを掻き分けてロジ少年が戻ってきた。
小さい袋を背負って、短剣を腰に差していた。
「飯は、あんたでいいんだよな」
それは私が提案したことなので、頷く。
「もう行ける?」
「ああ」
いよいよダンジョンである。
めっちゃ興奮しちゃってるよ私!
初ダンジョンである。
前にはロジ少年が歩いている。
案内人の仕事を頑張ってやろうという気迫が微笑ましい。
ダンジョンに入ってわりとすぐ、1メートルくらいのげっ歯類なモンスターに遭遇した。
その部屋には2匹いたが、近くに1匹、かなり奥に1匹だった。まずは見本ということで、近くの1匹をロジ少年がやって見せてくれることに。
ロジ少年が短剣を構えてげっ歯類に突っ込んでいく。
げっ歯類の目が光った! ロジ少年に跳びかかる! ロジ少年が短剣で叩き落す! げっ歯類、地面に叩きつけられた! ロジ少年振りかぶる! げっ歯類逃げる! ロジ少年追いついて薙ぎ払う! げっ歯類、倒されたーーー!
うむ実況してみた。
倒されたモンスターは砂になって、その砂からロジ少年が壺を拾い上げる。
「こっちが襲うまでは襲ってこねえ。だからソロでもできんだよ」
言いながら壺を背中の袋に入れる。
「それは塩?」
訊いた。どうやって塩だと判断してるんだろう。
「この黒い壺は塩、他のは雑魚だ」
中身見てから決めたんだろうか。まあいい、その雑魚に早く会いたい。
奥に進んで二匹めを、今度は私がやってみる。
黒剣のデビューである。
ローブの下から抜き身の黒剣を出し、左足を前に半身で構える。黒剣を持った右手を曲げて、腰を落として顔の下に来るように水平に構えた。某有名漫画に出てくる、突きの名手の構えである。…剣の構えなぞ漫画でしか見たことがない。
息をゆっくりして、吐いて止めるんだったか。止めた瞬間足に力を入れ、前に跳んだ。
…えっと。一瞬で近づいて刺してました。剣が壁に刺さるくらいズブッと。 あー、びっくりした。
砂から拾ったのはまたしても黒い壺。塩も使うからポシェットにしまう。
ロジ少年の方に振り返ると、目を見張っていた。どうやら身体強化は少しにしておいたほうがいいみたい?
次は少しの強化でやってみたら、ちょうど良かった。いきなり全開だと、自分の意識が付いていかないね。うん、徐々に慣らしていこう。
げっ歯類は一度に2匹しか出てこなかった。
塩は2人で20個は集めたが、いっこうに「何か」が出てこない。
これはあれか、やはり例の「何か」はレアドロップなのか。
昔やっていたインターネットゲームで狩りをしていた時も、レアドロップはなかなか出なかった。
「幸運確率上昇」を黒剣に付与した。「レアドロップ確率上昇10倍」と欲をこいて念じたときは弾かれた感じがしたので、そちらにしたのだ。さすがに全部が楽にはいかないのだろう。そらそうだ。
黒剣に付与できたので、服、靴にもつける。さあこれで、果たして確率が上がるのか…。
見つけたのを瞬殺しながらどんどん奥へ行く。なにせ湧きが少ないので、先に進むのが早い。
「こんなんじゃ、すぐ中層に行っちまうな」
ロジ少年が、先ほど私が仕留めたのから壺を拾いつつ言う。すでに塩は必要ないので、ロジ少年に拾ってもらっているのだ。
「もっと人数がいればモンスターがたくさん狩れるんだけどね」
こう、一気に10とか20に遭遇したいなーと思いながら先に進んだ。
+ + +
俺はロジ。今はこのヨリという女の案内人なんかをしている。
女が「ダンジョンは初めてだ」なんて言うので、どんなに手間を食わされるのかと思っていたが。
抜き身の黒い剣を出した女は、中腰に構えたと思ったら、目の前から消えた。
でかい音にそっちを見たら、壁にめり込んだ剣をこともなげに抜いていた。
その足元には砂の小山が…ネラは即死したようだ。
その後も、ネラを見つけた瞬間飛び出して、気が付いたら片付いてる有様だ。
ある程度集めたら、塩をこちらに寄越すようになった。そんで、どんどん奥に向かって行く。
5階層降りた。もうすでに俺が知っている階層じゃないんだが。
う~ん。俺なんかより断然強い。たぶん中層でも行けるかも。
でも俺はなー。めっちゃ怖いんだけど。
なにせ行ったことがない。どんな所かも知らない。
まあ、この女次第だろうけど。
+ + +
上層の終わりまで来た。相変わらず例の「何か」は出ない。
むーん…やはり人数連れて、湧きを良くするしか方法が無さそうだ。
じゃあ今日のところは諦めて、中層へ行くべし。ついレアドロップに夢中になってしまったが、まず確実にあるものからゲットすべきだと反省した。
とりあえず中層への境目を前に、休憩と御飯を食べよう。
「ロジ、休憩してご飯にしよう」
ロジ少年に声をかけて、小石を拾う。「対物障壁」「壁外雷撃攻撃」をかけて足元に置く。それから「接着」もかけた。これで休憩中は襲われることがない。
付与する時に範囲をイメージしてみたら上手くいった。壁から気付かず出てしまわないように、目に見えるように「水色半透明」を付与してみると、期待した通りに半透明の水色になってくれた。よしよし。
それから地面に毛布を敷いた。どうせ休憩するなら、固くて冷たい地面よりこっちがいい。その上に載って準備をする。
ポシェットから水筒と皿とスプーンと粉ふき芋の瓶とレーズンもどきとさつま芋を出して盛り付けた。ちなみに今回は大人だけなので、量は比べるべくもない。
ロジ少年がじっとそれを見ていた。
+ + +
「ポルカの子たちと同じごはんだよ」
俺を座らせて、カップに水を注いで渡す。何気ない風を装ってカップを受け取ったが、実は早く食べたい。だが見得を張る。がっつくとこなんて女には見せられない。
「あいつらがうまいって言ってたよ」
女が僅かに顔をゆるめた。
「やっぱり声は出せるんだね。良かったよ」
子供らは女の前でしゃべらなかった? まあそうかもしれない。どこから来たのか、何が目的かも判らない女。人はいきなり怒り出すこともある。あいつらは自分を守っただけだ。
だけど、子供らは笑って女のことを話していた。たぶんかなり好きにはなってんだろう。好きでしゃべらないわけじゃない事を教えたくて言った。
「しゃべれるけど、でかい声でしゃべると殴りに来るやつらがいるんだよ。子供は言っといてもすぐに忘れちまうからな。だから身内以外とはしゃべらないようにって言われんだよ」
子供らがしゃべらないワケを聞いた女が、話してる俺の顔をじっと見ていた。そのあと頷いて。
「だからだったんだね」
言って食べ始めた。
「食べる順番があるんだろ?」
確か子供らが言っていた。白いののあとに、あまい芋で、その後にあまい小さいのだと。白いのはポルカで食べたやつで、あまい芋は来るときにもらったやつだ。じゃあこの粒々があまい小さいのか。
子供らのと違って、全部が皿に載っている。
「ああ」と女が微かに笑う。
「あれはね、一度に食べるとお腹が痛くなっちゃうだろうなと思ったから、そう言ったんだ。しばらくそうして、元気になったら好きな物から食べられるよ」
びっくりした。そこまで考えてのことだったのだ。
子供らの笑顔を思い出して、涙がこみ上げてしまう。自分はこんなに涙もろくは無かったはずなのに。
根性で涙をこぼさずに手でこすり、けれど顔は上げられず。
「ありがとな」
子供らには悪いが、俺は飯をお代わりして食べた。美味すぎたからだ。
白いのを「うまいうまい」と言った俺に、それはジャガイモで、塩と葉っぱで味付けしたんだよと女が言ったのには本当に驚いた。ジャガイモなんて、ここじゃ茹でるだけだったから。
全部売ってしまう塩を、初めて惜しいと感じた。
+ + +
ロジ少年が美味しそうに食べているのを、微笑ましく見る。
見ながら決めた。上層のモンスターがあれだけ脆いなら、中層のもいけると思われた。
うん、行けるとこまで行くべしだな。とりあえずレアドロップは考えないで、一気に下まで行ってみよう。いざとなれば隠し祭壇で戻ればいい。
ロジ少年には申し訳ないが、一緒に行ってもらいたい。湧きが1人分でも減るのは痛いのだ。
後は…私がロジ少年を気に入り始めてしまったのもある。食べてる時の顔もイイしね!
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上層は本当に塩のみでした。ヨリはレアドロップが何か、非常に気になりますが次に行きます。
ロジ少年は可哀想なことに、ダンジョンを攻略するまで帰してもらえそうにありません。
修正と加筆を少ししました。
ご助言で、視点が変わる所を判りやすくしてみました。
また何かありましたら教えてください。




