第1章④ 道程
第1章④ 道程
ラフィネ村の件から数日。
アラミスは、「この辺りで一番大きな街」と件の村で教わったオーフェリへと向かっていた。
無論、徒歩で。
だが、気持ちはずっと鬱蒼としていた。
(俺はこれからも人を殺し続けないといけないのか……。)
(あの、剣で刺した後の感覚、体に浴びた返り血、何度も落としたはずなのに。)
……ずっと見にまとってる、そんな感覚だけが気味悪く滞留していた。
(篠田さん。)
(!?……誰だ。)
どこかで聞いたことがあるような声色だった。
ウェンディ、か。
(あなたのことはずっと観察していました。)
(やれやれ、全く、俺はいつから朝顔になったのかね。)
にわかに、フッっと空気音が聞こえてきた。そんな気がした。
(これ、どうやってる?俺の思考とかわかるのか?)
(ええ……まぁ、一応女神ですから、このくらいなら。)
(あまりいい趣味とは思えないね。)
(わ、私はその……一応女神ですし、倫理的な面ではあなたのプライバシーを侵すつもりはありません!)
(そこだけは信じてください!)
(……と言っても、あなたは納得してはくれないかもしれませんが……。)
(俺の思考を読めるなら、この会話?なんていうんだ、テレパシーとかそういうやつか?まぁ、その必要、なくないか?)
(確認するまでもなく、俺の思考は深夜のラジオみたいに流れ続けてるわけだろ?)
(……例えがおっさんです。)
(事実だが?)
こほん、とわざとらしい咳払いが聞こえた気がした。
(あなた、人を殺めたことをモヤってますね?)
(……。)
(あなたのその責任、少なくとも半分ぐらいは私も背負います。)
(ですから……。)
(だから、人を殺してもいいってか?)
珍しく、攻撃的だ。自分で、そう感じた。
(仮定の話だが……あの盗賊連中と、自称普通に生きている人。生育環境が逆転していたら、あの盗賊連中は自称普通の人になり得たし、自称普通の人は盗賊になり得た。)
(善悪の話がしたいんじゃない、構造の問題だ。)
(俺は過酷な環境だったから仕方ないというほど優しくはない。だが、それでも、こんな人殺しの強さなんて要らなかったよ。)
(どうしてこんな力を俺に与えた?)
(それは世界を……いえ、それはこちらの事情ですよね。そうですよね、あなたに背負わせた責任は全て私にあります。あなたはあなたが正しいと思ったことを……あ、そろそろ……。)
(……どうした?)
(いえ、そろそろ時間切れです。申し訳ありません。とにかく、あなたはあなたの生きたいようにいきt……)
(ん?おい、本当にどうした?)
返事はなかった。




