第五章④
レティ、多分バレてるよ……。
第五章④
ギルドに戻るシュバル。
「お、お前……生きてただけでもよかったじゃねえか。」
バーレスはあえて右腕は見なかった。
「シュバル……その、右腕……。」
「……言うな。」
「あ、ああ、そうだな……。」
アラミスはおずおずと引き下がる。
(シュバルは生粋の剣士だ。そいつが利き腕を失くしちまうなんて、そんな、そんな。)
(どうしちまうんだよ。なんだよ。この戦争。)
(誰のせいでこうなった。なんでこうなった。なんで、みんな話し合いできないんだよ!)
「あなたの傷の治療が最優先ね。腕は再生できないけど、このままではあなたが死んでしまうわ。」
ザービは治療魔法を唱えている。
「……勝っても負けても、最悪ね。この戦争。」
キャシーはどこか虚ろだった。
魔王城首都・ヴェルン。
「魔王様、人間どもが勝手に内戦を始めました。」
「え、戦争してるのって、私たちと人類よね。」
「は、はぁ……そのはずですが。」
「私たち、いつから人類に寝返ったのかしらね。」
「これは絶好の機会!今こそ人類を攻めれば、我らが勝ちは必然!」
オルドは思わず前のめりになる。
「オルド……私たちは人類を滅ぼしたいわけで戦争しているんじゃないのよ、私たちは、魔族の存亡さえなんとかなれば……均衡を保つべきよ。」
グレンヴァルは静かに鎮座している。オルドはチラリとグレンヴァルへと視線をやる。
「グレンヴァル将軍も、今こそ攻め入るべきだと思いませぬか。」
「我は魔王様の剣。魔王様の命令にのみ従う。それだけだ。」
「私たちは静観を決め込みましょう。」
会議はレティシアのその一言で閉会した。
レティシア、私室。
「ねぇ、レティ。なんであの、えっと……そうアラミスとかいう人間に、自分の素性をバラしたんですか?」
「え、私隠してたわよ?」
かちゃんと、レティシアは飲んでいたミントティーを置く。
「ふぅ、美味しい。」
「レティ、魔王城って言ったよね?」
「言ってないわよ。」
「いや、言った。確実に。」
「そう……それは幻聴ね。」
「そんなピンポイントな幻聴ある?」
「大体それは無かったことにしたはずよ?」
「ならないわよ。あの人間、絶対、レティが魔王って察したわよ。」
「でも指摘されなかったわ。バレてないわよ。」
「それに斬りつけられなかったし……。」
リゼットは飲んでいたミントティーを吹き出しそうになる。
「判断基準、そこなの?」
「私の経験では、魔王というのは、突然斬られるのよ。」
「事実として、かつて何度もあったけど……。」
「今まで剣も魔法どっちも、かすりすらしなかった……。今までの使者は、思ったほどではなかった。」
急にレティシアは目を細めて続ける。
「でもアラミスさん、あの人は違うかも。近づいた時、何か違和感を感じた。」
今度はやれやれと言った態度で言葉を紡ぐ。
「あれ、今までとなんか違う。」
「今までの『神々の使者』、なんか、自意識過剰というか、自分の力に自惚れてる感じだった。」
「確かに……。でもアラミスさんは違う。なんというか、余程のことがないと剣を抜かない、そんな感じね。」
「そこよ。あえてしなかった、そう思うけどね。」
リゼットは、ミントティーをガバッとの飲み干す。ぬるかった。
「リゼちゃん予想だと、あの人間、多分、かなり思慮深い。」
「付け加えると、めんどくさい奴ね。」
「あれは絶対、寝る前に考察始めて、朝まで起きてるタイプよ。」
「それは……ありうる。」
この点だけ、リゼとレティの意見は妙に噛み合った。
(私、絶対バレてないと思うんだけどな……。)
コツコツと廊下を歩くレティシア。会議室へ向かった。
グレンヴァルはまだ会議室にいた。必然的に視線が交わる。
「ねぇ、グレンヴァル。私、魔王とバレてないわよね?」
「……リゼットから聞きました。」
「そして私の予測では……バレてます。確実に。」
「あなたまでリゼット派閥なのね。」
「派閥などあったのですか?」
「ならば私はレティシア様派閥です。」
「私はレティシア様に忠誠を誓っておりますゆえ、虚言は致しませぬ。」
はぁ、と肩を落とすレティシア。
人類が戦争している中、魔族だけが日常だった。
続く




