第四章①レオン
一気に戦争編へ突入しました。
第四章① レオン
レオン、王都をたってから3日。要塞都市ヘンリー到着。王都からは辺境に位置するが、ここを落とされると戦略上かなり厄介になる。なんとしても守らねば……。
会議室にて。
「戦況はどうなっている!?」
レオンの強い声が響く。
「はっ!現在、魔族側からの攻撃はなく、住民の避難を継続中です。」
「動きが遅いな……。住民の避難が最優先だ。民を守るのは我らの最重要事項だ。」
「はっ!人員を増やします!」
「参謀!魔族の動き、どう見る?」
「様子見……それか戦力の補充、兵站の確保。この辺りが妥当かと。」
「今後も少しは時間稼ぎできそうですが、猶予はあまり……。」
「ない、か。我が軍で動かせる兵は?」
「1万ほどです。負傷兵を含めれば倍にはなりますが、基本後方支援ぐらいしかできません。」
「1万か。魔族の現存兵員は?」
「おそらく1000ほどと見積もっております。ただ、今後増える可能性はあります。」
「しかし、問題は数ではありません。魔族は我々人類より……。」
「強いな。確実に。」
「そして厄介なのは上級魔族も確認されています。」
「そうか……。低級魔族ですらAランク冒険者30人は必要だったな。」
「上級魔族はSランク100人でも厳しいです……。」
「委細承知した。だが……。」
「1000……私が単騎で乗り込めば、いけるな。」
「将軍自ら単騎で!?いくら王国最強のあなたでも無謀です!」
「だが、時間を与えれば、さらに厄介になる。それに私は……部下を失いたくない。」
「我々も将軍を失いたくありません!」
「……。腕に覚えがあるやつだけついてこい!私は魔族を殲滅する。」
誰も異論は唱えなかった。
魔族陣営。
「斥候から報告!敵影らしきものを数十名確認!」
「ふん!人間ごとき十人やそこら、大したことあるまい。」
「迎撃部隊を展開。数は10もいれば十分すぎるな。」
「はっ!」
(こんな真っ昼間から突撃してくるとか、相手は馬鹿なのか。)
(それとも陽動?まさかな……。)
戦場。
「魔族ども!覚悟しろ!」
「ふん!人間ごとき、何がでk……。」
その魔族は言葉を続ける前に、首が飛んでいた。
「おい、こいつ只者じゃ……。」
死体の山は一瞬で築かれた。
魔族十体は瞬殺された。
剣を振ると、鮮血だけが地面に飛んだ。
「まだだ、まだ終わらんぞ!」
「報告!戦場へ送りし我らが軍、全滅!」
「な、なんだと……!何が起きた!全滅!?たった十人程度の人間にか?」
「おい!五十、いや、百を出せ!上級魔族も入れろよ!こんなところで止められてたまるか!」
「はっ!」
レオンと数名の副官を取り囲む魔族。
「お前らの死は近い。」
「ぬかせ!魔族ごとき、我らの敵ではない!」
「こいつはお笑い草だな。人間ごときが、魔族を舐めるとはな!」
魔力の力が収束して、それはボール状となって放たれた。レオンに命中。
だが。
レオンは剣を一閃した。
飛来した魔力弾は真っ二つに裂け、その余波だけが鎧を掠めた。
「おい、こいつ何者だ!?」
「本部へ報告しろ、やべーやつがいると!」
そしてズバズバと切り落とされる魔族陣営。
「おかしいおかしいおかしい。なんで人類ごときがこんな!」
そして次の言葉を発する前に絶命した。
気がつけば、魔族陣営だけの死体があちらこちらに散在していた。
「はぁはぁ……百は殺したか?」
「お、おそらく。」
「こちらの損害は?」
「副官三名が負傷。まだいけます!」
「いや、一時撤退だ!」
「て、撤退ですか?勢いに乗って、敵本陣に突撃すれば勝利は我らのものになるのでは!?」
「戦争はただ殺せばいいだけではない。駆け引きだ。そして、今突撃したら、こちらにも死人が出る。」
「それに……今突撃するよりも、撤退した方が、相手は混乱する。こちらの時間も稼げるのだ。民の避難が最優先、忘れるなよ!」
「は!」
「報告!我らが魔族、再び壊滅!現場より、『やべーやつがいる!』とのこと!」
「な、なんだと!ありえん!ありえん!」
「これは……グレンヴァル様にご報告だ!急げよ!いつ突撃してくるかわからんのだ。」
「は、は!」
魔王城首都・ヴェルン
「はぁ……私はどうすればいいのだ。」
「人族側に神々が肩入れいている以上、開戦する理由は十分なのはわかる。」
「だけど、殺し合い以外に方法ないのかしら……。」
「なぁ、リゼット、私はどうすればいいと思う?」
「レティ、いつも通り考えすぎだよ。とりあえずミントティー、飲も?」
「あ、ああ、そうだな。」
レティシアはミントティーを軽く飲む、カップの音がカチャっと静かに響いた。
「美味しいわね。」
「そりゃあ私、特製だもの。まずいわけないじゃない。」
こんこんと扉をノックする音が聞こえた。
扉越しから嫌な予感と声が響いた。
「人類との戦闘中に例外的案件が発生!現場よりグレンヴァル様の要請が届いております。」
頭を抱えるレティシア。リゼットは少しイライラしているように見えた。
「ちょっと!今、レティは休憩中なの!休ませてあげて!」
「し、しかし……。」
「うるさい!黙りなさい!大体、あんたら強硬派が勝手に進撃を始めたのが原因なんだから、レティを悩ませるんじゃないわよ!」
「い、いえ、しかし。」
「……グレンヴァルはなんと?」
「魔王様のご決定が全て、だそうです。」
「つまり、まだ待機してるのね?」
「はっ!左様でございます。」
「人族にグレンヴァルを相手にできる人材いたのか……。」
「あれじゃないですか、王国最強と呼ばれている……なんでしたっけ?」
「レオン・ヴォイス、ね。確かにあれなら、我々の戦線を崩せるわね。」
「グレンヴァルが呼ばれるのも、妥当と言えば妥当。」
「しかし……。」
「一旦、我々は撤退。人族との和平を試みるわ。」
「な、それは……。」
「オルドが黙っていない、かしら。」
「グレンヴァルの出陣要請が来た時点で、私たちは劣勢なのよ?一旦引いて、できれば和平。最低でも停戦には持って行きたいわ。」
「レティ、それは……オルドが暴走するよ。」
「でしょうね。」
「でも、万が一グレンヴァルが敗れたら、私が出るしかなくなるのよ。」
「私は、人類を滅ぼしたいわけじゃないわ。ただ、神々に我ら魔族の領域を侵犯させられたくないだけよ。」
「……気持ちはわかるけど。神々、そんなに優しいのかな。」
「わからない。でも、まだグレンヴァルを出すのは早計すぎるわ。」
レティシアは屹立した声で。
「先遣隊は一旦全軍撤収。人類との停戦を試みます!」
「はっ!」
レティシアは窓越しに外へ視線をやる。
「人類へ肩入れするなんて、神々は何を考えているの?」
その問いは、リゼットも答えられなかった。
一方、グレンヴァルは私室にて静かに、自らのランスを正視していた。
「人族側に押されている……か。」
「……本当は戦争などしたくないのだが、魔王様のためならあらゆる障害は私が斬る!」
ランスを軽く薙ぎ払う。
窓にヒビが入った。
「我は魔王様の矛。あらゆる障害は私が排除する!」
続く




