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第5.5話 ソラの伝統料理

※ 飯テロ回である。食前食後に注意されたし byたこ爺


 

「アルプ、お前本当にサイコロ振って決めてきたのか?」

「その名前、空の上だけにしてくれよな。俺もシュンのことリッパーって呼ぶぞ」

「おい、それはちがうだろ。私のTACネームはリーパーだ。リッパーじゃない」


 非常に勘違いされやすいTACネームを頂戴した食堂で、当初の予定通り少し早めの昼食をとることにした。

 当然のように並ぶ地球各地のメニューの中から私は初めて来た空軍基地では必ず食べると決めている空の伝統食を早々に注文し、ダイスを振るアルプもといキースを置いて先に食べようとしていた。

 しかし何故か、キースがサイコロの結果として持ってきたのは私と同じ空の伝統料理……こいつ、さてはこれの悪魔的魅力にまけたな?

 悪魔のくせに。


 さて、軍というものには数万に上る兵士を食わせるため、もしくは士気を挙げるため数々の名物が開発されてきた。

 全世界共通の酒、たばこを始めとして、アメリカの激マズレーション、海軍カレーなどは大変有名どころといっていい。

 缶詰なんかの保存食も最初は糧食として開発されたものだ。

 そんな中で空軍、というかかつて日本という地域に存在していた航空自衛隊を発祥とする名料理が存在する。


 それが、『唐揚げ』である。

 空へ上がる。というなんとも当時の日本らしい語呂合わせによって誕生したこの名物であるが、まあもともと『空揚げ』と書いていたため、あながち間違ってもいない。しかし、ただの鳥料理と侮ることなかれ……数々の隊員を文字通り店へと舞い上がらせるだけの威力があるのだ。


 まず、鶏肉を用意する。こいつを二口大にカットし各々の基地固有のたれに浸すわけだが……今回は、自衛隊基地の中でも古参だった味付け。玉ねぎ、にんにく、みかん、ポン酢や酢を合わせた特製ダレに浸す。

 この時、ポン酢や酢にもあらかじめみかんの風味がついているものを使う。

これにより柑橘系のさっぱりさと果肉に含まれるほんのりとした甘さがしみこむわけだ。

 何時間か経過したら、小麦粉をまぶし余分な粉がない状態で170℃の油でじっくりと揚げていく。


 最初はシュワシュワと小さめの音だった油のはじける音が、次第にパチ、カラカラといった音へ変わっていく。この時点で仄かに酸味の香る香ばしい匂いが調理者を満たし、腹の音を鳴らす。


 最後に新玉ねぎをスライスし、油をよく切った空揚げと添えてやれば完成だ。


 私の前にはそれらの工程をきちんと経たみかん空揚げが日本食永遠の戦友。純白の白米が粒を光らせて待機していた。


 猫舌ゆえにしばし濃厚且つ爽やかな香りを堪能していたが……もう、我慢できん!


「いただきます!」


 まず、空揚げ単体でかじりつく。

 即座に猫舌を容赦なく襲う肉汁があふれ出し、同時にみかんやポン酢をベースとしたさっぱり風味が口の中いっぱいに広がる。


 みかんの酸性成分が酒などと同じ働きをしているのか肉は当然のようにほろほろ。ただ、外の皮はサクッという音を鳴らす義務は怠らない。


 うまい、うますぎる。この時点で米が二口消えた。


 次に新玉ねぎを乗せて喰らう。

 生玉ねぎのピリッとした感じは新玉だからか控えめ、むしろほのかな甘辛さがつけたされる。

 これは、そのまま単体で楽しみたい……が、気付けば米が口の中に放り投げられている。

 

 なんて悪魔的なんだ。


 ドレッシングなんていらない。肉の油だけで付け合わせの野菜まで喰えてしまいそうだ。


 しかし、空揚げ。まだ進化は止まらない。


 付け合わせにはまだ、黄色い果実が残っている……レモンだ。

 空揚げにレモン。かける、かけないで古来より宴会では幾度となく戦争が繰り広げられてきた空揚げを添えることで化ける魅惑の果実。


 しかし今回の空揚げはただでさえ柑橘系風味がついているのだ。

 合わないわけがない。


 皮を下にしてU字型になるようにしっかりと搾りながらレモン果汁を全体に回しかける。

 ただでさえさっぱりしていた香りが、さらにすっきりした。


 もはや、これを口に入れることを拒むものはいない。大口を開け、巨大な空揚げを一口で放り込む。

 米が介在する余地は存在しない。

 肉汁、みかん果汁、レモン果汁それらが最高の三重奏を奏で、私を昇華させようとしてくる。


 しかし、私はまだ止まらない。少し噛み進めない容量に余裕ができてきた口内に向かって行儀なんて気にせず追加で米を放り込む。


「ほっ、ほはふ。ふっ、ふうぅ。うまっ」


 なんだここ、天国か?


「な、なんだこりゃ。うまっ、うますぎるふぅっ」


 どうやら、空揚げはむしろ悪魔をも堕としてしまう悪魔の兵器らしい。

閑話なので21時にもう1話投稿します

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