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対霧独立防衛空戦隊 ARMA  ~宇宙とかくソラの舞~  作者: たこ爺
最後は心に

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第28話 旋回

 機内にけたたましくアラートが鳴り響き、グレムリンが迫ってきていることを知らせる。

 作戦用に先程設定したものではあるが、心臓に悪いことには変わりない。

 

 現在、アルプはリュタンとともに全力旋回中。私も同時に愛機とともにリュタンを射界に収めんと旋回していた。

 そんな中に急襲してくるグレムリン、一見我々に回避の余裕はない。特にアルプは全力旋回中、他の機体から見れば隙だらけだ。

 当然、グレムリンもより隙の多いアルプを狙う。

 まあ、それが我々の狙いなわけだが。


 グレムリンが更に近づき、電子音的警告音の中にベルを連続で叩くようなまた別の合図が脳内に響き渡る。

 今!


『「ブレイク!」』


 この宇宙(ソラ)で、スラスターが無数に取り付けられ一見いつでも縦横無尽に動けるかに見える狗鷲に、隙が生まれるのには理由がある。

 それはスラスター推力の差異だ。これまでの訓練で分かる通り最も効率よく旋回するためにはそれまでの飛行で蓄積された運動エネルギーを最大限利用しながら旋回する。そしてそれに最も貢献しているのが機体後部に装備された2基のエンジン。推力偏向ノズル装備であるUNIHI製87型軸流エンジン、当然と言えば当然なのだがこれらのエンジンが吐き出すエネルギーは他に搭載されたスラスターの比ではない。

 また、他にもスラスターの配置された位置の関係でRCSにもいくつかの種類があるのだ。

 そして機体はそれらが最適に稼働する機体旋回を行うのだ。

 ここで大事になるのはそれらの姿勢制御があくまでパイロットの行きたい方向に向かって最適な行動をしているということ。

 この姿勢制御の度合いを一時的に緩めてやれば機体が飛んでいく方向はそのままに機首だけは敵の方を向けるといった事ができるのである。


 今、私が実演しているように。


 アルプの方へ突撃するグレムリン。

 そのグレムリンは今、予測照準点の中に納まらんとしている。


 機首だけを向けようとしているため、慣性の法則に従いはまっすぐに飛んでいかず野球のスライダーのような軌跡を描くことになるがそれも織り込み済み。

 ただ、射撃チャンスはおそらくこれ一度、弾は惜しまない。


 予測照準点にグレムリンの機体が収まる直前から、私はトリガーを引いた。


 旋回機動を行い、どう見ても対応が間に合わないと思っていた機体からの奇襲。さぞかし驚いたことだろう。


 愛機から放たれた眩しささえ覚える純白の星の群れは、何かに導かれたかの如くグレムリンへと吸い込まれていった。

 トリガーを引く前に撃墜判定をもらい、勢いそのまま宇宙(ソラ)を落ちていく狗鷲のキャノピーからは脂汗を滲ませ苦虫を噛み潰したような顔をしたグレムリンの姿が見える。


 まあ、残る一機は囮役、戦えはするだろうが我々二機相手だと数十秒持てばいい方だろう。


 そして、私の予想は見事的中することになったのだった。


『勝者、リーパー分隊!』


 再び、歓声がTCS内に響き渡る。

 ただ、今回はそれまでと違う空気の声が混ざっていた。


『おい、みんな。ちっと静かにしてくれねぇか』


 グレムリンの声だ。皆も何かあると察し歓声がやむ。


『ありがとな……まさか、あそこで旋回してくるとは思わなかった。流石主席ってところか?まあ、ともかく、なんだ。いい試合だった。それだけだ』


 ……なんだ、ただの飲んだくれじゃなかったのか。


「こちらこそ、楽しい試合だった。またどこかで会ったらよろしく頼むよ」

『かっ、あー、やっぱりこういう空気になっちまったか。こういうの苦手なんだよ。もしその時は大将とでも呼ばせてもらうぜ。それじゃあ』

「ああ、またな」


 再び、歓声が巻き起こる。おそらくこの歓声は我々に向けられたものだけではないだろう。

 

「まあ正直、大将呼びは勘弁願いたいがね」


 恐らく届かない程の声で思わず出た声が、歓声の中に紛れて、消えていった。


 そして、次の試合。当然の如くノーム分隊は準決勝を突破してきた。


 即ち……


『小惑星及び基地にて待機中の全ての隊員に告げます。これより決勝戦、リーパー、アルプ分隊及びノーム、ホビット分隊はIUD上の指定位置へ移動してください。そして、他の隊員も全員視聴体制を整えるようにお願いします』


 これまでとは一変したアナウンス。まあ、数カ月から一年に一度のイベントだ。注目もするか。


『また会えたね、隼。まさかうちらも優勝候補になれるとは思っちゃいなかったがこうして会えたんだお互い全力で頼むよ』

『よく言うぜ、俺らを散々ぼこしといてよ。頼まなくったって心配はいらねぇよ。なあ、シュン』

「当然だ。そっちのトリックも見切った。覚悟しとけ」


 彼女たちの機体がやけに旋回の早かった理由。タネは案外簡単なものだった。

 それは……機体の改造。


 彼女らは『戦時特別部隊付航空技師』の授業も履修しており機体の整備ができるいわばエンジニア。

 機体の改造も難しいだろうが不可能ではなかっただろう。

 大尉殿のいう彼女たちなりの戦い方というのはそれだ。

 ぱっと見だけで分かる改造ポイントはスラスターの換装と増設。彼女らの機体に違和感があったのはそれによって機体に複数あるスラスター用の穴に変化が生じていたからだ。


 もちろん、既に対策も考えた。不確定要素もないことはないが、以前のようにそう易々とは負けない。

 

『へぇ?そうかい。そりゃ楽しみだよ』

『みんな、うるさい。さっさと、はじめよ』

『それもそうだね。ノアの言うとうりだ。男共も構わないよな?』

「もちろんだ」

『シュンに同じく』

『だ、そうだ。トレボー、始めてくれないか?』


 トレボーへの呼びかけに対しその返事は我々の予測と違った。


『お待たせして申し訳ありません。ただいま予定にない臨時便の入港がありまして港が少々立て込んでおりました』


 臨時便とは珍しい。しかも連絡なしか。

 まあ、訓練が続行される程度ならば問題あるまい。


『それでは、始めましょう。決勝戦、飾るはリーパー分隊vsノーム分隊……始め!』

 

 ひとまず合図と同時にスロットルを倒す。

 刹那、我々の眼前で機銃弾ではない巨大な弾丸が炸裂した。

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