終 神
……さて。
後は……。
「見つけたぞ」
即座に振り返って、声の主を見る。
そこには、30代後半くらいの男がいた。
黒髪で170cm程、服装は黒いジュストコールを着ていて、その上からやたら豪華な白いマントを羽織っている。
こいつが、元凶。
侵略者の親玉で、神。
……油断した。
でも、相手は二度の世界移動でダメージを負ってる。
逆に、チャンスかもしれない。
(敵がこっちに来た。早めに来てくれると助かる)
(すぐ行く)
向こうの私に共有して、構える。
私みたいな新米神同士の戦いは、基本的に泥沼。
間に合うと思う。
相手は思ってたよりも強いけど、それでも想定の範疇に収まってる。
「お前があいつらのリーダーだろ?」
あいつら、って言うのは多分リダ達のことかな。
「そうだよ、って言ったら?」
時間を稼げるなら、おしゃべりは大歓迎。
しない理由がない。
「やはりそうか! ならば、俺の元に来い。ここの世界から手を引くことと、あの世界の半分をくれてやることを約束しよう」
そう言い放った男は、断られることを全く考えていないようだった。
……こいつも、元人間か。
「お断りします。……あの世界はお前のものじゃない」
元々受けるつもりはなかったけど、少し癪に触ったから勢い余った。
でも、そもそもこの男と私は相性が悪いと思う。
同族嫌悪ってやつかな。
「……そうか、それは残念だ。では死ね」
凄まじい勢いと共に振り抜かれた左拳を身を引いてかわし、魔力の刃を突き刺す。
「きかんな」
刺されたことをものともせず繰り出される裏拳を抑え、顎を蹴り上げる。
男は首を傾けることで回避し、振り上げた私の左足を掴んだ。
——破魂。
相手の力が抜けた一瞬で手をすり抜け、足払いする。
ほんの少し体勢を崩した隙に懐に潜り込んで、腹に拳を叩き込む。
——破魂。
衝撃で出来た防御の隙間に、破魂をねじ込んで攻撃。
「っ!」
「ふん!」
左腕に痛み。
距離をとって確認すると、カウンターで左腕をもがれていた。
流石に、簡単には勝たせてくれないらしい。
畳み掛けるように次々と繰り出してくる攻撃をいなしつつ、隙を伺う。
右、右、裏、フェイント、左、蹴り上げ、後ろ。
私の最大の武器は破魂。
これを、どれだけ叩き込めるかにかかっているわけだけど。
対応出来る範囲の攻撃でも、一撃一撃が結構重い。
一つ一つはなんとかなるけど、積み重なればダメージになる。
地味に、左腕を持ってかれたのが効いてるなぁ……。
治す隙もないし。
「どうした!? その程度か!」
笑顔で追撃を続ける男が喋りかけてくるけど、相手している余裕がない。
心底楽しそうに、私を殺そうと向かってくる。
……裏拳を受けるか。
タイミングを見計らって、裏拳を敢えて食らう。
体と精神が悲鳴を上げてるけど、どうでもいい。
当たるとは思っていなかったのか、相手の動きが一瞬止まる。
——破魂!
腕を引っ張り体勢を崩させ、背中に回り込んで肘打ち。
ゴス、と鈍い音がした瞬間、反撃を避けるために大きく跳び退く。
「〈空白〉」
相手の意識を散らせ、反応を遅らせる。
今なら声に出さなくても使えるけど、宣言した方が神の力を借りられるから効果が高い。
「はは、楽しいなぁ?」
「全然」
ゆっくりと起き上がった男に、そう返す。
「やはりお前は俺の下へ来い。俺の下に来るべきだ! お前も強くなるために神になったのだろう!?」
そう言って、私の目をみる。
狂気に飲まれ、血走った目。
「……私は確かに力を手に入れるために神になったけど」
別に、強くなりたかったわけじゃない。
「私は、力を手に入れるため以前に、みんなを守るために神になったんだ。過程と目的を履き違えないで」
お前と、一緒にするな。
「はっ!」
魔力で自分を操り全身を使って男を押し出し、吹き飛ばす。
建物が壊れないように防御しつつ、叩きつけられた男の精神ごと潰しに掛かる。
「なめるなぁぁあああ!!!!」
魔力の壁を破壊され、地面に立った男は私を睨む。
やっぱり、一人だと厳しいね。
……でも。
「捕まえた」
二人なら、別。
私と一緒なら。
もう、いつでも殺せる。
「…………、っ!? ま、待て!」
男は、やっと気が付いたらしい。
でも、許す気はないんだ。
「ねぇ、私」
「何?」
「私が殺しても、いい?」
向こうの私が、そう聞いて来る。
理由は、トドメを刺した方が多く魂を吸収できて成長できるから。
……まぁ、それが目的じゃないし。
「待て! 待ってくれ!」
「いいよ」
自分の手で、敵を打ちたいんだと思う。
「……ありがとう」
僅かに微笑んで。
一人の神を、滅した。
*
そのあとは、吸血鬼の女王によって操られていた、生き残った人々を解放して。
それぞれの世界に帰した。
ただ、吸血鬼たちが元々いた世界が滅んでて、生きていける環境じゃなかったから回収したけど。
これで、一件落着だよね。
あ、残った怪物達は創造主たるあの神が死んだことで消えた。
悪魔は少し残っていたけど、元の世界に帰してあげたよ。
特に何もやってないか、情状酌量の余地があると私が判断したやつだけだけど。
向こうの復興は私も協力して、最低限頑張れば生活できる程度には回復させた。
割と過労気味。
こっちの世界の東京ドームも修理して、全世界に危機が去ったことを報告したりと忙しかったからね。
「……で、楽しかった?」
神に、そう問う。
……そういえば、名前知らないな。
「ふふ、どうでしょう。でも、まぁ……好みではなかったけれど、なかなかよかったわ」
わざわざ世界を作り出して紅茶を飲んでいる神にジト目を送りつつ、ため息をつく。
この神は私なんか相手にならないほど、強い。
それこそ、やろうと思えば全てなかったことにできるくらいには。
「だからね? 少し、ご褒美をあげようと思うの」
「……?」
神が、指をならす。
「……え?」
そこには、舞が立っていた。
……ううん。舞だけじゃない。
向こうの世界のお兄ちゃんや、鈴ちゃんもいる。
「魂を保護しておいてあげたわ。……そもそもの話、記憶から構成する場合1000回も繰り返していたらどこかでエラーが出るわよ」
呆れたように、そう呟く。
「頑張ったあなたへのご褒美。……そうね、あの轢き逃げ事件をなかったことにしてあげたわ」
そう言って、得意げにウインクする。
……あ。
涙が溢れてくる。
心のどこかで、諦めていたもの。
私が、失ったもの。
「……舞」
「ただいま、お姉ちゃん!」
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皆さんの納得のいく終わりだったかは分かりませんが、このお話はこれでいいんです。ハッピーエンド好きなので!
……にしても、神vs神の戦いが思いっきりただの殴り合いで神っぽくないし華やかさにかける……ラストバトルなのに……。
そのうち読み直して、加筆修正すると思います。
一応完結にはしますが、番外編、と言うか後日譚のようなものも少し書こうと思うので、もう少しお付き合いくださる方はお願いします!
新作も始めたので、よければ見てくださると嬉しいです。追放TS現地主人公ハイファンタジーです。
https://ncode.syosetu.com/n8681hn/
最後に。
完走出来たのは、評価して下さった皆様や、ブクマしてくださった皆様、感想をくださった のぶーさん、毎話いいねしてくださっていた方、そして読んでくださった皆様のおかげです!
ありがとうございました!




