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36 作戦




 「いらっしゃい、私。……初めましてって言った方がいいかな」


 目深にフードを被り、顔が見えないようにしている向こうの私を、家に迎え入れる。


 「ううん。……ありがとう」


 向こうの私は、壊れた機械のように抑揚がない。


 既に家にはリダ、蓮弥君、白愛結、愛結ちゃん、鈴ちゃん、ルイナ、アーサー君が集まってて、向こうの私で最後。

 これから、作戦を考える。


 勝算はあるけど、なるべく被害を抑えていきたい。

 確実に、こちらから死者は出さない。


 大きな炬燵(こたつ)を囲んで、飲み物とお菓子を食べながら話し合う。

 今、夏だけどね……。

 精神的にも疲れているだろうし、少しでも心を休めるためには必要なことなのです。


 「さて、みんな集まったね? これから、リダ達の世界を救うための世界奪還作戦会議を始めます。まず、何か案はある?」


 私がポテチの袋を開けながらそう聞くと、「皆話し合う余地ある?」と言わんばかりに私と向こうの私を見る。

 多分、私たち二人が突撃すればいいと思ってるんだろうけど、多分それじゃあ逃げられるか向こうの私が死んじゃうと思うんだよね。


 と言うのも、向こうの私、かなり精神的に不安定。

 神としての力は、私より早く神になったのにも関わらず同程度か私より弱いんだよね。誤差だけど。


 だから、少しでも消耗を避けたい。

 私達にとっては有象無象の怪物達も、数がいれば消耗は避けられない。


 「でも、ボクらが行ったところで何もできないと思うよ」


 と、リダが言う。

 確かに、そのままだと正直戦力にはならないけど。


 「私が強化できるよ。私が出向くより、安上がりで倒せると思う」


 今、私は力を使いこなせてないんだよね。

 だから、1を倒すのに力を100も使っちゃってる様な感じ。


 でも、皆に分け与える分には時間をかければ大丈夫だし、私自身は世界を移動しなくてもいいから消耗も抑えられる。

 人間とかならそうでもないんだけど、神って移動に相当体力を使うんだよね。

 自分たちではどうしようもない外敵から身を守るために、世界がシールドを張ってる感じ。


 「でも、向こうではシステムの力を使えないんだよね。どうにかできるの?」

 「うん。私と同期してれば問題ない。同期は私が制御して負荷をかけない様にするから大丈夫だよ」


 今の私とそのまま同期したら、多分あの神ほどではないけどかなり脳に負担がかかる。

 元々何回か同期したことがある蓮弥君でも、多分無事じゃ済まない。

 だから、私が同期する範囲を絞って、情報量を減らす。

 そうすれば問題なく使用可能。


 「要は、最初に私がこっちに残って皆をサポート、皆が相手の取り巻きを倒して力を削ってから私達二人で向こうの神を倒す……ってことだね。でも、他に何か案があれば言ってくれていいよ」

 「って言っても、何ができるのかわからないし……」


 まぁ、全部を説明するのは難しいかな。

 私でも把握しきれてないし。


 「……まぁ、システムでもできることは大体できると思ってくれていいよ」

 「せんぱい、それなら相手をこっちの領域に持ってきて、全員で囲むのはどうですか?」


 確かに、こっちに引き摺り込めれば援軍もほとんど来ないし、こっちの力はかなり存分に使える。

 うーん。


 「えっとね……相手にもよるけど、無理矢理引き摺り込むのは多分無理かな」


 相手の力が互角以上なら、不可能。

 それで、向こうの方が単体だと99%以上の確率で強いと踏んでる。


 それに、問題もある。

 負けるつもりはないけど、もし負けた時に逃亡先がない。

 それに、周りの人に被害が及ぶ可能性が高くなる。


 「そうなると……やっぱり撹乱から大将勝負かなぁ」


 如何せん神としての経験が薄いし、本当はもっといい作戦があるのかもしれないけど。

 あと、この作戦なら相手がこっちの戦力を低く見積もって油断してくれる可能性がある。


 「勝算があるなら、要の柊さん達が動きやすいようにすればいいと思うよ。僕らじゃあどうせ倒せないだろうし」


 蓮弥君がそう言って、ポテチを摘む。


 「そうだね。ボクもそれでいいよ」

 「私も問題ないです」

 「私も大丈夫ですよ」

 「せんぱいにお任せします!」

 「僕も任せます」

 「私はそもそもとやかく言える立場じゃないわ」


 全員の同意を得られたし、これでいこうと思う。

 先に訓練はするけど、なるべく早く取り返してあげたい。


 「うん。私もそれでいい」


 向こうの私も頷いて、目を伏せながらお茶を飲む。

 私のためにも、さっさと倒して取り返しちゃおう。




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