23 説明
長崎から帰って、翌日。
リダから言われた、日本に集まる期限。
私は、お兄ちゃんである柊灰が入院している病院に来ていた。
「あー、行きたくないなぁ……」
「ここまで来たんですから、覚悟を決めてください」
愛結ちゃんにそう言われつつ、病院の前でぐるぐると回る。
……かなり不審者だなぁ、私。
元々お兄ちゃんの入院している病院は別のところだったけど、ダンジョン騒動で都内の病院に移動になった。
と言うかさせた。
私と一緒に来たのは愛結ちゃんだけで、蓮弥君鈴ちゃんはいない。
蓮弥君がいると、知っている彼に甘えてしまいそうだから。
白愛結とルイナもいない。
「……でも、私どんな顔で会えばいいのかわからないよ」
「私は魔華さんに何があってああなっていたのかわからないので何とも言えませんが、お兄さんはそこまで恨んでいる様子ではなかったんですよね?」
メッセージでのやり取りでは怒ってなさそうだったけど、私は相当酷い事をした。
恨まれててもおかしくないし、寧ろ嫌われて当然だと思ってる。
……どう思ってるかなんて、精神干渉してみればわかることではあるけど。
私は、もう家族にこの力を使うつもりはない。
線引きはしっかりしないと、そのうち私が消えそうだしね。
「行くしかないかぁー……」
仕方ない。
このままうだうだしてても進まないし。
院内に入り、受付の女性に話しかける。
「あの、すみませ——」
『対象者全員が日本に集まった事を確認したよ!』
え?
突然、リダの声が聞こえた。
視界がブレる。
世界が黒に染まっていく。
「っ、……う」
……。
召喚みたいな感じ、かな。
目を開いて、起き上がる。
周囲を見ると、淡い黄色や薄い赤が混ざり合う前のような色の部屋。
床には鈴ちゃん、愛結ちゃん、ルイナ、お兄ちゃん、知らない人三人が倒れてて、蓮弥君が座り込んでいた。
睡眠耐性だけじゃなくて、気絶耐性も取っておかないとダメだったかな……。
「柊さんおはよう。全員が起きるまで待ってろってさ」
「リダが?」
「うん」
多分、強制的に呼び出されたんだろうけど。
もう少し、なんとかならなかったのかな?
取り敢えず、待つしかないか。
全員が起きるまで進まないなら、鈴ちゃん達だけ先に起こしてもああんまり変わらなさそうだし。
知らない人を起こす気はないし。
……まあ、知らない人って言っても先行攻略者で、しかも数少ないクリア者だからみたことはある。
ある程度の情報も聞いてるし、本当に全く知らないわけではない。
三人のうち一人が女の子で、白髪の幼い少女。
年齢は10歳で、身長はやや年齢の平均よりも小さいくらい。
お金持ちの一人娘で、親からは溺愛されてる。
……この子が暴食と純潔保有者かぁ。
華奢だから、暴食は違うと思ってたな。
二人目が茶髪の男性で、丁度二十歳。お兄ちゃんの一個下。
結構ガタイが良くて、身体能力は高そう。
筋骨隆々ってほどでもないけど、筋肉質でなかなか強そうだね。
……この人が勇者。
最後が、かなり体が細い金髪の少年。
13歳で、本人は流されやすい気質。
両親は一般人で、たまたま純潔持ちの女の子と一緒にダンジョンに落ちた、と。
……いつも、こき使われていたらしい。
この子が希望持ち。
……そろそろ現実逃避を終わらせて、向き合わないとなぁ。
お兄ちゃんを見る。
まだ意識を失ってて倒れてるけど、そのうち起きるだろうね。
倒れているお兄ちゃんを起こさないように、足を下手に動かさないように細心の注意をしつつ、体を仰向けた状態にする。
確かに、会おうとは思ってたけど。
ちょっと、ペースが……。
……いや、これも言い訳だね。
でも、関係ない人の前で関係ない話するのもなぁ……。
悩む。
そのまま時間が流れ、意識がなかった皆が続々と目を覚ます。
ルイナが私の次で、愛結ちゃん、他国籍の三人、直後に鈴ちゃん、最後にお兄ちゃん。
「さて、皆起きたね」
私がお兄ちゃんに話しかける前に、リダが現れる。
自然と視線がそちらに向き、話すタイミングを失ってしまった。
「やぁ、半数はこうして会うのが初めてかな」
どうやら、低いテンションの方のリダらしい。
実際に会う時は、常にこっちだね。
「……まぁ、それはどうでもいいか。君達が聞きたいのは、ここがどこか、何をさせられるのか。その辺りだよね」
「前置きはいい! さっさと話せ」
勇者の男性が、食ってかかった。
イラついているようで、かなり精神状態が荒れてる。
まぁ、この状況じゃ無理もないかな。
「早く聞きたいなら、静かにしてるべきだと思うよ?」
笑顔で、そう返す。
確かに、結果的に話を止めてるだけではあるけど……気持ちはわかる。
あとは、私達とか日本がどうなるのかとかも聞きたいけど。
取り敢えずは、リダの話を聞くしかない。
「まず、ここはダンジョンだよ。と言っても、魔物がいたりボスがいたりするわけではないかな」
少なくとも、これまで攻略してきたダンジョンとは違うらしいね。
「君達にしてもらうことは一つ。自分の罪や過去に打ち勝ってもらう」
そう言い放ったリダの視線は、真っ直ぐ、私を射抜いていた。




