アルベルトの冒険~⑤
「そろそろ終わりにしようか」
鍔迫り合いで完全にリビングアーマーを抑え込んでいたバイマトが笑顔のまま告げると、上から抑え込んでいた力を緩める。 今迄地面に片膝を付きながらそれに耐えていた動く鎧は突然消えた圧力につんのめる様に体勢を崩してしまう。
「アル!行くぞ」
体勢の崩れたリビングアーマに前蹴りを喰らわせ更に身体を浮かせたバイマトは「ほりゃぁ~!」と緊張感の無い掛け声と共にその身体をアルベルトに向かって投げつける。 A級冒険者として名の通っている彼にしてみるとリリビングアーマー程度は敵では無かった様だ
両手をバタバタとさせながら強制的に空中散歩させられたリビングアーマーはアルベルトに向かって飛んでいくと地に着く前に彼の神速の剣技で三枚に下ろされてしまう
「またつまらぬ物を斬ってしまった・・・」
「アル!?」
何故か女好きの泥棒さんの仲間にいる剣豪の様なセリフを口にするアルベルトにカイヤが思わず声を掛けてしまう。
『フム、斬鉄剣か。見事じゃ!』
「ん・・・主様こっちも」
色々危ない賞賛をするマーリンを無視して同じ様にヴィクトリアも最後に残っていたリザードマンの鳩尾に一撃入れて悶絶させるとアルベルトに向かって声を掛ける。 どうやら取り巻きのリザードマン達の中でもリーダー格だったようで一回りは大きいその身体をヒョイって感じで投げつける
此方はヴィクトリアに殴られ既に気を失っている様で特にバタバタしたりしていないが、アルベルトの元に飛んで行った彼の運命はリビングアーマと同じになってしまう
「もう、二人とも僕だってまだ戦ってるんだからね!?」
「「「ホッ」」」
今度はどこぞの剣豪の様なセリフを言わない、いつものアルベルトが抗議の声を上げる。それを聞いた後衛の三人が安心したような声を貰す。
「アルが止めの方がドロップが良いじゃねぇか」
「ん・・・同意」
どうやら取り巻き達の中でも強者に当たる二体の魔物のドロップアイテムの為にアルベルトに倒させたらしい。
「グ、グギャアア!」
「おっと、ほら怒っちゃたじゃないか」
目の前で無視された格好になったオーガの変異種が怒りの叫びを上げながら鉄の棍棒を振り回してアルベルトに襲い掛かってくる。 若い迷宮、しかも五階層という浅い場所の中ボスでかなり格下に分類される存在であっても、このように軽く扱われる謂れは無いとばかりにプライドを刺激されたオーガは血走った目でアルベルトを睨みつけながら棍棒を振り回す
実はステータス的にSTRの数値は目の前のオーガにも負けないアルベルトではあるが、流石に体重的な関係でオーガの攻撃を受け止めた場合は確実に吹っ飛ばされる
その為、ヒョイヒョイっと躱すしかないのだが、それがおちょくられているように感じるのか更に怒りを募らせるオーガが更に棍棒を振り回す速度を上げる。 流石のアルベルトもその猛攻に反撃の切っ掛けが掴めない様だ
「ちょっと!私のアルに何してるのよ!」
怒り狂うオーガに怒りの声を上げながら、そう言って魔法を叩きつけようと自らの頭上に炎の塊を作り出すエリザベス。
「ひ、姫様!?」
「こらエリザベス!!そんな大きなの危ないでしょ!!」
魔法使いに向かって危ないも糞も無いものだが、カイヤの何処か緊張感の無い注意はこのような部屋の中で使う魔法では無いという事を言いたいらしかった。
「ちょっ!べス、流石にそれは拙いよ!?」
「もう今更遅いわよ!」
魔法神の加護を十全に受けた魔力をこれでもかと込めた火球の魔法。 魔法としては初級に当たる魔法なので一応は自重していたのかもしれないがこれだけ魔力を込めればそんな欠片ほどの自重など意味の無い結果が予想される
「バイマト、ヴィクトリア下がって!」
「って、僕は!?」
カイヤがバイマトとヴィクトリアを魔法障壁の中に保護すべく下がるように指示を出す。しかしアルベルトの名前までは呼ばれない
「ん・・・アルの方が強力」
「そういうこった。自分の身は自分でな」
無慈悲に声を掛けた二人が下がりカイヤの張る魔法障壁の中に逃げ込んだところでエリザベスの魔法が勢い良くオーガに向かって放たれる。 それがオーガに炸裂する寸前、間合いを詰めたアルベルトがオーガの何とか首を刎ね飛ばす事に成功する
「うわっ!」
何とかオーガに止めを刺して急いで魔法障壁を張ったものの炸裂した爆風に巻き込まれてコロコロと地面を転がってしまうアルベルト
「ふみゅ~、べス気を付けてよ~」
「ごめん・・・ついカッとなっちゃって」
片目を瞑って小さく舌を出すテヘペロ状態のエリザベスが可愛くてそれ以上突っ込まないアルベルトが服に付いた埃を払いながら何とか立ち上がる
「ん・・・猪突猛進」
「なんですって!・・・って痛い!」
「ホントにアンタは!最初に言っておいたでしょうが!」
ヴィクトリアがいつもの様にボソッと呟く。それに反応したエリザベスが食って掛かろうとするが、それより早く繰り出されたカイヤからの拳骨に涙目になり、結局はそのお叱りを受ける事になる。
「殿下・・・その、なんと言うか、御苦労さまです」
「う、うん、サームもありがとね」
相変わらずのエリザベスに振り回されながらも、散々危ない事をするなと怒られたのは何だったのかと流石に不満に思うアルベルトではあったが、サームにまで心配をかける訳にもいかず取敢えず礼を言って誤魔化す
『いやいや、なかなかの魔法であったぞ。これで状況判断が出来れば優秀な魔導士にも成れるな』
「いやその状況判断が怪しいんだけど・・・」
マーリンとアルベルトが小声で話している間にもカイヤのお説教は続いていた・・・
「そ、そうよ。アイテム!オーガもアルが倒したんでしょう?」
「もう!誤魔化さないの」
「まぁまぁ。嬢ちゃんだって悪気は無かったんだし・・・って、本当に無かったんだよな?」
「無いわよ!・・・じゃなかった、無いです。反省してますから!ちょっとカイヤさん待って!」
何とか誤魔化そうとドロップアイテムに話を振ろうとしたのをカイヤに見透かされた上に、フォローに入ってくれたバイマトがフォローになってない事を言い出すものだから、思わず語気を荒げてしまうエリザベス
しかし、カイヤから漏れ出す怒気が膨れ上がる気配を感じたのか急に言い直して謝り倒すエリザベスの姿に何とか追加の拳骨だけは勘弁して貰えたようだ
「殿下!これってレアドロップじゃないですか!?」
「ん・・・宝箱発見」
火球の魔法の熱も収まった所で色々探していたサームとヴィクトリアがアイテムの発見を知らせてくる。どうやらオーガの方にレアドロップが有った様だ
「中ボスのレアドロップか・・・どれどれ?」
「判るの?バイマト」
「ん~・・・判らん!」
「判らないなら始めっから言わないでよ!」
まぁある意味お約束の流れでバイマトのボケに突っ込むカイヤ。 このメンバーだとツッコミ役が足りないのでカイヤに負担が掛かり気味なのが少し残念な状況になっている
仮にも迷宮の探索なのだからもう少し緊張感を持ちたい処だが、ツッコミ役が少ない事で何だかんだと緩い空気が流れてしまうのだ
「ったく!ほらサームも早く成長して私を付けて頂戴」
「えっ!・・・いや、その・・・努力します」
思わぬ所から飛んできたとばっちりに言葉に詰まるサーム。 相変わらずの苦労人体質は王国に移っても変わらない様だ
『フム。【力の腕輪】じゃの。STRに補正が掛かる筈じゃ』
「お~【力の腕輪】か。まぁ俺はもう持ってるからアルが着けりゃ良いんじゃねぇか?」
「僕もあんまり困ってないから要らないよ?」
マーリンの解説に反応したバイマトがアルベルトに促すが、どちらかと言うとまだ自分のステータスに振り回されている感があるアルベルトも受け取る事をやんわりと拒否する
【力の腕輪】事態はありふれたアイテムで装備すると大体10~20位の補正が掛かる。着けてみないと判らないが、強い魔物からのドロップ品の方が効果が高い事が多い。 今回は中ボスのドロップ品という事でソコソコの効果が見込める筈だ
「ん・・・苦労人」
「そうね。此処はサームに渡すのが良さそうね」
「・・・苦労人認定なんですね」
言われなくても自分の体質は判っているが、面と向かって言われてしまうと流石に凹んでしまう。 とは言え、このメンバーでは直接の戦闘力という点では劣っているのは事実な訳だし受け取る事自体は有り難い事でだと思う事にするサーム
「ん・・・凄い魔力」
「そうね、下から凄い魔力が湧いてるわ」
二人の婚約者の様子にアルベルトの表情も引き締まる
『いよいよお出ましの様じゃな』
「ちょっと物足りねぇが、サクッと倒しちまうか」
おそらく次の階に待ち構えるのがこの迷宮の主であろう。そう感じさせるには十分な魔力が漏れ出している。 若い迷宮だけあって浅い層で出会う事になる迷宮のラスボスであるが漏れ出す魔力からは十分な実力が覗えるものであった
「一応休憩しましょう。焦ってもしょうがないわ」
「そうだな。おいカイヤ、飯の準備だ!」
「なんでアンタに偉そうに言われるのよ!」
結局はいつも通りに落ち着くアルベルト一行であった・・・
刀なのに斬鉄剣。素直にアニメを見てた時は気にしませんでしたが、文にすると若干違和感が・・・
じわりじわりとブクマが増えてきてニヨニヨしながら画面を見つめています
こんな拙い話ですが読んで下さる方がいるのを実感できるのは大変うれしいです
少しでも、いや微かにでも面白いと思ったらブックマークして貰えると有り難いです
読んでいただいて有難う御座います




